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石けんと私

石けんが好きだ。ころんとした形も愛らしいし、使うたびにどんどんと小さくなる。石けんを濡れた手で転がすとふわふわ泡を出してくる。石けんが私にそっと話しかけてくる。私もそれに応える。ころころ転がしながら。新品の大きな石けんも好きだ。つやつやしていて、手の上で転がされるのを待っているようにみえる。小石みたいに小さくなった石けんもまだ使える。石けんは初めから最後まで石けんという役割を全うしているし、最後のひと泡まで私を包み込んでくれる。台所でもお風呂場でもころころした石けんが置いてあると安心する。いつでも待っていてくれる感じがする。落ち込んだときも悲しいときも嬉しいときもいつでも同じ場所に石けんがある。石けんはときどきつるんと滑って転がるときもある。石けんも人間と同じなのかもしれない。ふとしたときに転がる。周りからの圧力で転がることもあれば、どんどん小さくなっていく自分を支えきれずに転がることもある。でも転んだらきっと誰かが気づいてくれる。その誰かは石けんと私みたいにいつもお互いを見守っている。石けんみたいに簡単に転んでしまう私には、どんなときでも見ていてくれる、滑って立ち上がれないときは手を貸してくれるひとが隣にいる。だから今日も生きていける。

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