桜流鏑馬が終わり、月曜日がやってきた。 十和田の春はまだ寒い。学校指定の制服だけでは防寒がやや心もとない。けれどマフラーを着けるほどでもない。そんなどうでもいいことを考えながら十和田市の中心街を歩き、去年から通っている中学校の校門をくぐる。 新しい年度がはじまって二週間しか経っていない校内はどこかよそよそしい。廊下や各クラス内で生徒たちが楽し気に歓談しているものの、その裏で相手を探っている様子が伝わってくる。まだクラス替えをした影響が抜けきっていない、朝のざわめき。
あらすじ 桜流鏑馬。 それは十和田市で開催される現代流鏑馬の競技大会。女性しか参加できないその大会にて、”十和田が生んだ天才中学生”と称される花笠梅は優勝候補と目されていた。しかし彼女の目の前に、博多から引っ越してきた同い年の少女・佐藤ひよこが現れる。義足でありながら馬を自由自在に操り的を射止める佐藤ひよこに花笠梅は嫉妬と羨望を覚える。 「来年の桜流鏑馬、そこでまた戦いましょう!」 そう宣言する佐藤ひよこに、一体、花笠梅は何を思うのか。 桜の花びらが舞っている。