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桜のごとく 第1話

あらすじ

 桜流鏑馬。
 それは十和田市で開催される現代流鏑馬の競技大会。女性しか参加できないその大会にて、”十和田が生んだ天才中学生”と称される花笠梅は優勝候補と目されていた。しかし彼女の目の前に、博多から引っ越してきた同い年の少女・佐藤ひよこが現れる。義足でありながら馬を自由自在に操り的を射止める佐藤ひよこに花笠梅は嫉妬と羨望を覚える。
「来年の桜流鏑馬、そこでまた戦いましょう!」
 そう宣言する佐藤ひよこに、一体、花笠梅は何を思うのか。


 桜の花びらが舞っている。

 美しい光景だけれど今だけは煩わしい。一二〇メートルを一七秒以内に駆け抜けなければならないこの競技において、視界を遮られることは怪我に直結するから。

 左手の甲に落ちた花弁を振り払う。
 会場中に設置されたスピーカーが震えた。

『さあ、今年の桜流鏑馬、初級の部! 決勝まで勝ち残った五名の麗しき乙女たち! 優勝の栄冠を手にするのは一体誰か! 京都代表の二連覇王者が怒涛の三連勝を決めるか! それとも十和田が生んだ天才中学生が優勝旗を地元に取り戻すか!』

 聞き取りやすい男性の声に促されるようにして、十和田市中央公園に集った数えきれないほどの観客たちが桜の木の下で歓声をあげる。

 桜流鏑馬。

 日本古来の和式馬術を源流とし、一〇〇〇年以上もの間、全国各地で神事として男性のみによって行われてきた流鏑馬。それを女性も参加できるスポーツとして十和田市の流鏑馬競技協会が主体となって整備したのが現代流鏑馬だ。桜流鏑馬はその春大会であり、幾人もの乙女たちが凌ぎを削る夢の舞台である。

 私が生まれる以前は申し込みさえすれば簡単に参加できる町おこしの一環だったそうだが、美しい衣装を着飾って馬を駆る姿に魅了され競技人口は増えつづけ、今では日本全国で予選大会が行われるほどになっている。全国予選を勝ち抜いた三〇名しか桜流鏑馬に出場できず、しかも決勝戦まで進めるのは午前中の競技で総合得点上位五名に入った者のみという狭き門だ。

「ハーイ、花笠! 相変わらず怖い顔してますねー! せっかくプリティなんですから笑顔じゃないと損ですよ」
「余計なお世話です、キャロライナさん」

 会場の裏側に設置された仮設テントで待機していると背丈の高い女性に話しかけられた。

 キャロライナ・オールドリッチ。

 ウェーブがかった金髪が美しい二〇代後半の女性で、鯉を模した着物風の流鏑馬衣装で全身を彩っている。

『午前中に獲得した点数は京都王者キャロライナさん、十和田の天才少女花笠さんが同率六〇点で有利な状況! その後ろに五〇点確保の三名が続く! さあこの決勝戦、一体誰が勝ち残るのか!』

 アナウンスを聞き遂げたキャロライナが快活な笑みを浮かべた。

「そろそろ私の出番です。では、勝負を楽しみましょう! イッツ、侍ショー!」

 観客たちの歓声を浴びながら彼女は仮設テントの外に出て一直線に歩いていく。その先にいたのは黒い小柄な馬だった。競馬場や映画に登場するサラブレットに比べると小柄で足が太いことが特徴的な和種系馬。慣れた手つきで彼女は馬にまたがると手綱を上下させて合図を送り、全長二〇〇メートルの競技コースの入り口へと向かって馬を推進させる。

『桜流鏑馬初級の部、決勝戦。最初の走者はイギリス出身、京都在住のキャロライナ・オールドリッチさんです。二年連続優勝している絶対王者です! さあ今年も王者の走りを見せつけるか!』

 司会者による紹介が終わり、場に緊張という名の静寂が満ちる。ややあってキャロライナが馬へと合図を送り、桜流鏑馬の舞台を駆けはじめる。

 今回のコースは二〇〇メートル。
 その途中、五〇メートルほどの間隔で三つの的が設置されている。馬に跨ったまま弓を引き、矢を放ち、一つの的を射抜くごとに一〇点加算されるルールだ。午前中に二走、午後に一走し、その合計得点で勝敗が決まる。

 桜の木が並ぶコースを京都王者が雄大な走りで颯爽と駆ける。その姿を目に焼きつける。

「去年よりも速い。あくまで優勝に拘るつもりね」

 騎射において左手は常に弓を、右手は矢を用意しなければならない。それは手放しで馬に跨るのと同義であり、多くの者はバランスの乱れや恐怖心から速度を出すことができない。
 しかしそれでは勝てない。桜流鏑馬においては二走した合計得点が同じ場合、一ノ的から三ノ的までの走破タイムが早いほうを上位とする、というルールがあるからだ。

 勝つためには馬を信じて、速度を出しながらも確実な騎射をしなければならない。

 パァン、と弾けるような音が聞こえた。一ノ的の傍に待機していた係員が中り――的中を知らせる赤い唐傘をぱっと広げる。『一ノ的、中り!』とアナウンスが響く。鯉柄の衣装の袖元を風にはためかせながら、キャロライナは腰へと右腕を回し矢を取りだす。弓へと矢をかけて狙いを研ぎ澄ませ、手を放す。『二ノ的、中り!』

 逆風のなかを駆ける龍を思わせる、豪快な走り。
 それでありながら的確に仕留める大人らしい騎射。

 王者にふさわしい堂々とした流鏑馬に思わずため息が漏れる。私とは全然違う走りだ。

『ああーっと惜しい! 三ノ的は中りならず!』

 残念ながら、三ノ矢は木製の的の端をかすめて的中扱いにはならなかったらしい。走行する馬の背に跨りながら矢を的中させるのは至難の業で、一つも的に当てられないこともざらにある。今日のように多くの観衆に見守られながらも安定して二つの的を射抜くのは実力上位の者にしか実現できない。

 すーっと息を吸いこむと、肺が春に満たされる気がした。
 仮設テントの端に設置された姿見へと近づき、そこに映る自身の姿を見つめる。

 春の夜を背景にウグイスと蝶たちが舞っている――そんな文様の薄墨色の生地をベースとした衣装を着飾った中学生。特徴的な吊り目には紅色の化粧が施されていて、黒曜石のように艶やかな髪はサイドテールにまとめられている。

 精巧に作られた日本人形みたいで苛立つ。
 でもその気持ちに蓋をして、ささっと衣装に綻びがないか確認する。それが終わり次第、仮設テントの外にいる友達へと近づいていく。

「紺珠、お待たせ。一緒に頑張ろうね」

 その背に触れると、私の想いに呼応するように白いしっぽが揺れた。

 紺珠。

 葦毛と呼ばれる白い毛色をした牡馬で、私が流鏑馬をはじめてからずっと一緒に頑張ってきた相棒だ。他の馬に比べて紺綬は賢く利口だ。これから行う競技についても察知しているのだろう、耳をわずかに立たせて闘争心を漲らせている。

 そのたくましい背中に跨り、彼の左右の腹に設置された鐙と呼ばれる足置き用の馬具へと両足をのせる。前足とかかとでしっかりと鐙を踏みつけて感触を確かめる。流鏑馬においては両手を自由にする必要があるため、馬上でバランスをとるには鐙が重要となる。

「練習の成果、魅せようね」

 紺珠の首元を撫でたのちに手綱を握って合図を送る。スタート地点へと向かって彼が歩くたびに軽やかな音が鳴り、突き上げるような振動が私の腰から背へと抜ける。戦地に赴く巨人になった気がして心地いい。

 スタート地点に辿りついた私は左手で競技和弓を握りなおす。日本の弓は世界でも類を見ないほど長大で、その全長は二メートル以上に及ぶ。矢の長さも一メートルを超える。中学生の私にとってはこの道具たちの扱いが勝敗に直結すると言ってもいい。

『さあ次の騎手は十和田出身在住の花笠梅さんです。桜流鏑馬に初出場したのは小学五年生のとき。いきなり準優勝に輝いた天才少女です! 現在中学生二年生。今年こそ優勝を飾れるか!』

 黙れ、うるさい。
 燃え上がりそうになった炎をかき消すため、すーっと深呼吸する。

 馬上の視点は高く、会場を広く見渡すことができた。普段は十和田市中央公園の遊歩道になっている平地にはさらっとした細かな砂が敷かれコースとして整備されている。左側にはゆるやかな芝生の丘があり、木箱で作られた的が並んでいる。右手にはオレンジ色の柵がずらっと続いていて、柵の向こう側には一眼カメラを構えた多くの観客たちの姿がある。

 注目されている。やっぱり少し緊張してしまう。でも大丈夫、やることは変わらない。

 私は紺珠と一緒に、これまで通りの完璧な走りをするだけ。

 左手で弓と矢を構える。右手で手綱を握り合図を送ると紺珠が一歩踏み出した。そして慣れた動きで徐々に加速していく。私は手綱を離し、左手で弓を、右手で矢を構える。

 助走区間である二五メートルを通過し、一ノ的が近づいてくる。ト、ト、ト……と無言でリズムを刻み、ここだ! と思ったタイミングで矢を放つ。四角い太鼓のように木枠に貼られた紙が矢によって裂かれる。的の近くに立っていた係員が赤い唐傘をばっと広げる。

『一ノ的、中り!』

 やった! と思う暇さえなく、次の準備をする。二ノ的までわずか五〇メートル。その間に腰から矢を抜き構えなければならない。焦るな、私。ト、ト、ト。一定のペース、揺らぐことのない走り、安定した射形を常に意識しつづけろ。

 わずか数秒で二ノ的が目の前に迫る。弓を引き、矢を放つ。
『二ノ的、中り!』

 練習通りにできてる。次の的で最後だ。

 ト、ト、ト。一定のペースで走りながら矢を用意する。しかし、ふと違和感を覚えた。風だ。右手から吹く風が強くなっている。

「…………」

 気にしない、私は完ぺきな騎射を再現するだけだ。

 近づいてきた三ノ的へと向かって矢を放つ。その矢はすこんっという間抜けな音を立てて木枠にぶつかり地面に落ちた。紅い唐傘は開かない。

『ああーっと惜しい! 花笠騎手も射止めた的は二つ! 合計二〇点です!』

 大丈夫。
 三つの的を射止められたなら万々歳だったが、こうなる可能性も予期していた。総合得点が同率の場合はレコードの早いほうが勝利となる。

 私のタイムは一一.六秒で間違いない。
 練習通りの完璧で正確なペースで走れたから。

 各選手のタイムが公表されるのは一番最後の表彰式の場になる。キャロライナの正確なタイムは分からないけど、一二から一三秒台で間違いないだろう。

 乗り止め、と呼ばれる終点へと向かって徐々に減速し馬を停止させる。興奮したのか頭を上下させている紺珠の首元を撫でながら「お疲れさま」と労う。走行が終わった、という実感が沸いてきて今度は私の身体を興奮が満たす。勝った。きっと勝った! 

 馬上でガッツポーズしたい気分だったが、はしたないことはできない。ぐっとこらえて澄ました顔で会場を振り返る。桜並木の下にいる多くの観光客。こんなにも多くの人々の前を駆け抜けたのか、と言い知れぬ興奮が沈丁花の甘い香りのように酔いを与える。

 馬だまり、と呼ばれる試合を終えた騎手と馬たちが待機する区画へと向かうと、黒色の愛馬に乗ったキャロライナが近づいてきた。

「やりますネー! 流石、花笠です!」
「いえ、たまたまです。それに最後の的、外しちゃいましたから」
「おー、大和撫子。奥ゆかしいって文化ですネ。でも競技後はもっと喜ぶべきですよ!」

 右手のひらを向けられる。渋々私は手を差し向けてハイタッチを交わした。

 その後、二名の騎手が走行したものの、ともに一つ的を射抜くにとどまった。このままいけば私の勝利となる。はやる気持ちを抑えて、最後の競技者がスタート地点へと向かう姿を見つめる。

『さあ初級の部、最後の騎手は佐藤ひよこさん! 九州は博多からの参戦になります! 現在、中学二年生。初めての桜流鏑馬参加でありながら決勝まで残った超期待のルーキーです!』

 私と同い年。
 可愛らしい顔つきをした童顔の少女が満面の笑みを浮かべている。期待と楽しさがこちらまで伝わってくるようだ。でも、と私の心は冷徹に分析する。

 佐藤ひなこという少女は、自身が跨っている栗毛をホースクラブのスタッフに紐で引っ張ってもらっていた。いわゆる口取りと呼ばれる行為で、馬の操縦に自信がない騎手の代わりに地面を歩く人が馬を誘導する。馬に乗りはじめたばかりの初心者であれば誰しもが行ってもらう介助であるが、桜流鏑馬の本大会で見かけることは珍しい。

 経験の浅い初心者がたまたま決勝まで残ってしまったのだろう。

「観賞する価値すらないかもしれないわね」

 ぷいっと目を背けようとしたとき、馬に跨る彼女の足元に違和感を覚えた。なんだろう、と目を凝らす。彼女の右足首があるはずの部分から細くて湾曲した黒い部品が出ている。桜流鏑馬では通常、人は和装、馬は伝統的な和式馬具を装着する。本来そこには足袋を履いた右足があるはずだがそれが見当たらない。

「…………」

 その正体に気づき、思わず口元をとじる。

 実物なんて見たことない。
 だからわからないけれど、たぶん、あれは義足だろう。

 ごくりと喉を動かして、彼女の一挙一動を凝視する。スタート地点に辿りついた彼女は弓と矢を準備すると、口取りしてくれたスタッフに小さく頭を下げて、これから彼女が走る二〇〇メートルのコースへと視線を向けた。手綱を動かす。馬が走りはじめる。

 ふらふらとした走りだった。

 弾丸のように駆ける私やキャロライナと違い、佐藤ひよこの騎乗は風に流される葉っぱのよう。馬は左右によれながら走っていて、完璧に制御できているとはとても言えない。

 安定していないゆえか、コースを駆ける速度は異様にはやい。

「ただでさえ不規則な走りなのに、あんなにも速度をだして。あれじゃ的に中るわけがない」

 高得点をとることは難しいだろう。先ほどまでは私の点数を上回らないでほしい、と思っていた。今は、どうか彼女が無事に走り切ってくれればいい、と願っている。

 やがて佐藤ひよこの前に一ノ的が近づいてきた。彼女は相変わらず不安定な走りをしながら矢を構えて放つ。『一ノ的、中り!』予想とは異なりいとも簡単に的を射止める。騎乗は初心者であっても、ここまで勝ち残った実力はあるということだろうか。

 驚く暇もなく、彼女の前に次の的が迫る。しかしこれもあっけなく的中させた。『二ノ的、中り!』桜の下に並ぶ観客たちが歓声をあげる。

 そのとき、風が吹いた。木の枝が揺れて、鮮やかな桜の花びらが一斉に舞う。端から見ている分には美しいけれど、競技者にとっては視界を花びらで覆われ、矢の軌道を風に左右されることになる。

 紅、が見えた。
 淡い桜の色ではない。もう一段階濃い赤色。

 花びらが舞う小さな世界のなかで、馬にのった佐藤ひよこが口紅で彩られた唇をあけて楽しそうな笑顔を浮かべていた。

 その姿に目を奪われる。

「なに、それ。どうしてそんなに楽しそうなの。そんなの、ずるい」

 はっと口元を抑える。
 だけど幸いなことにその言葉は誰の耳にも届かなかった。もっと大きな声が会場中を覆いつくしたから。

『三ノ的、中り! 佐藤ひよこ騎手、全ての的を射止めました! これでキャロライナ騎手、花笠騎手の総合得点に並びました! 果たして優勝は誰になるのか!』

 わああ、と歓声があがる会場を私はただ茫然と眺めていた。

 その後、三〇分ほど時間をおいて十和田市中央公園の広場に集合した。

『桜流鏑馬初級の部、第三位、キャロライナ・オールドリッチ』
「ハーイ!」

 名前を呼ばれたキャロライナが多くの観衆や運営者に囲まれた舞台の中央に歩みでる。五〇代ぐらいの優しそうな顔つきをした男性市長が「おめでとう」とマイクに語りかけながら、賞状と銅盾をキャロライナに手渡す。頭を下げて盾を受け取ると、彼女は観衆へと銅盾を掲げてアピールした。わああ、と喜びの声があがる。

『第二位、花笠梅』
「はい」

 短く返事をして、私も前へと歩みでる。「おめでとう」と笑顔で告げてくる市長に曖昧な笑みを返す。それでも姿勢だけは礼儀正しく折り曲げて「ありがとうございます」とはきはきとした声で告げる。

 賞状と銀盾を受け取った私が下がると、『最後に――』とアナウンスが続いた。

『桜流鏑馬初級の部、優勝、佐藤ひよこ』
「は、はい!」

 上ずった声をあげて、茶色い癖っ毛が可愛らしい少女が前へと歩みでる。左足を軸に歩く足取りをみんなで見守る。言い知れぬ緊張感が場に満ちる。

 けれど彼女はそんなこと気にした風もなく、市長の前に躍り出ると表彰状と優勝トロフィーを受け取った。そして司会者から促されてマイクの前に立つと、「あ、あー」と不慣れな様子で口を開いた。

「えっと、佐藤ひよこと言います。ずっと憧れていた桜流鏑馬に出場できて、しかも優勝できて、今、ばり嬉しかとです! ……あ、いや、えっと、とっても嬉しいです!」

 興奮した彼女の様子に触発されて、観衆たちの間から温かな笑い声がわきあがる。けれど私は笑う気にならなかった。むしろ心がどんどん冷えていく。舐め切った素人だ。そんな初心者に負けてしまった。

 紺珠に申し訳ない。
 おばあ様にも、どんな表情をして報告すればいいのか。

 佐藤ひよこの言葉はつづき、やがて「流鏑馬を行うのにいくつかハードルはあったけど頑張って続けて良かったです!」との言葉で、ひときわ大きな歓声があがった。

 ややあって拍手がおさまる。ようやく終わったか、と安堵するが、しかし佐藤ひよこはマイクの前から離れない。なんだ? と思っていると彼女と目が合った。

 大きくて丸まるとした瞳が私を捉える。

「私が流鏑馬をはじめたのは花笠梅ちゃんに憧れたからです! 梅ちゃんと一緒に流鏑馬をやりたくて、この春から十和田に引っ越してきました! 仲良くしてください!」

 彼女が私をびしっと指さした。

「梅ちゃん。来年の桜流鏑馬、そこでまた戦いましょう!」

 まるでプロレスラーのマイクパフォーマンスだ。仲良くしたいのか戦いたいのかよくわからない宣戦布告に会場がわっと沸く。拍手が鳴り響き、桜の花が舞う。

 私だけが一人、状況についていけず立ち尽くしていた。

 いや、いやいやいや。

「知らない人に喧嘩を売られても怖いだけなんだけど」

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