チェンブロ(パズル)をつくろう
※この記事は「ペンシルパズルI Advent Calendar 2021」6日目の記事です。
ふーなんとかさんです。主にニコリ向けにパズルを投稿したり、「7638」という語呂合わせを用いて成宮由愛というキャラクターの魅力を発信したり、パズルイベントの際に怪文書ストーリーを書いたりしています。
この記事では、株式会社ニコリが発行するパズル誌『パズル通信ニコリ』上のコーナー「オモロパズルのできるまで」に登場し、176号にて2軍昇格(準レギュラー化)を果たしたパズル・チェンブロの作り方を語っていきます。
新しめのパズルゆえ「そもそもチェンブロってなんやねん」という方もいるかと思いますので、そのあたりも軽く触れていきます。
1. チェンブロって何
チェンブロとは、歯車と滑車を使って重量物を持ち上げる器具「チェーンブロック」の略称です。
あ、パズルの話でした。改めて、
チェンブロとは、ステーキハウス「いきなり!ステーキ」において付け合わせのコーンをブロッコリーに変更する呪文「チェンジ・ブロッコリー」の略称です。
お腹が空いてきました。改めて、
チェンブロとは、英語名を「Chained Block」という、盤面のマスを黒く塗って「黒マスのカタマリの鎖」を作るパズルです。(←これが本題)
ちなみにTwitterで「チェンブロ」と検索すると、ここまでのくだりが全部出てきます。チェンブロ界隈は広い
①チェンブロのルール、例題
「黒マスのカタマリを角でつなげる」
「同じ形のカタマリをつなげてはいけない」
というチェーンルールが大きな特徴のパズルです。実際に解くとわかりますが、ニコリの定食パズルであるぬりかべと似た部分が結構あります。あちらが好きな方は、ぜひチェンブロにも触れてみましょう!
②チェンブロを解くことができる媒体
インターネット上にもいくつか問題が公開されていますが、1番のおすすめはニコリのパズル誌『ザ・ペンシルパズル2022』です。やさしい問題から激ムズな問題まで、上質なチェンブロが21問も収録されています!(筆者の作品も何問か掲載されています)
また一般に「本誌」と呼ばれ、現在は3・6・9・12月に発行される『パズル通信ニコリ』でもチェンブロを解くことができます。173号以降に掲載されているので、こちらもチェック!
ちなみに記事公開日の4日後が新刊の発売日です。買ってね。
2. とりあえずチェンブロを作る
さて、ニコリといえば「パズルを読者が投稿する」ことが特色の1つ。せっかくなのでチェンブロも解くだけではなく、作ってみるのはいかがでしょうか?
作ったパズルが冊子に載ると
・郵便受けの前でガッツポーズをしたところを目撃されて、変な目で見られた(32歳 男性)
・どの問題が載ったのかを家族に問われ、うっかりペンネームがバレそうになった(32歳 男性)
・書店に行くたび掲載誌に自分の名前が載っていることを確認し、ニヤニヤするという変な趣味ができた(32歳 男性)
などなど、嬉しいことがたくさんあります。嬉しくないか。(嬉しいことが起こるのは本当です)
気になった方は半袖氏のこちらの記事や、
にょろっぴぃ氏のこちらの記事を読んでみると良いでしょう。
①ツールを用意する
前置きが長くなりましたが、早速チェンブロを作ってみましょう! 手筋とか難易度とか、難しそうなことはいったん保留。まずはどんな流れで作問するのかを説明していきます。
紙と鉛筆で問題を作ることもできますが、ここは超万能ペンシルパズル作問ツール「Penpa-editor」さんに登場してもらいます。これ1つで線を引く・塗る・分割する・物体を置くなど、さまざまなパズルの作問を行うことができる便利なツールです。
使い方は以下の記事で紹介されています。
初めてのチェンブロ作問ということで、今回は6マス四方の問題を作ることにします。Penpa-editorを開いて、6マス四方のまっさらな盤面を用意しましょう。
②配置する
チェンブロの作り方は、他のほとんどのペンシルパズルと同じです。すなわち「解くように作る」のです。
「ここにこの数字を置くと、こんな感じで黒マス(白マス)が確定するな。」
「この状態で、次はここに数字を置いてみよう。するとまた黒マス(白マス)が確定するぞ。」
という手順を繰り返すことで、チェンブロを作ることができるわけです。
ということで、早速数字をえいっと配置してみましょう!
さて鋭い方はここで疑問に思うことでしょう。
「あれ? 数字は黒マスに白文字で書くんじゃないの?」
その通り! ですが、とても面倒くさいです。作問途中でうっかりミスが判明して、置いた数字を消してまた配置し直す……ということが起こるとどうなるでしょう? 想像したくないですね。短気な私なら作問を放り投げて猫を抱きしめに行ってしまいます。
ということで作問中はあくまで下書きとして、普通の数字を配置することをおすすめします! 一通り配置が終わってから、本来のデザインに寄せればOKです。
さて先ほどえいっと数字を配置しましたが、ここから黒マス(白マス)はどのように確定するでしょうか?
左上の3が壁沿いにススーっと伸びていき、こんな感じに確定します。
同型禁ルールにより右下の3は「I」の形になるしかありませんが、右と下のどちらに伸びるかはわかりません。
ということで、それを邪魔するように数字をドンと置いてみましょう。
「?」は「何マスのカタマリになるかわからない」の印ですが、作問中は「とりあえずここに何かしらの数字を置く」という意味でも使えます。したがって、後から「?」を別の具体的な数字に置き換えるのもOKです。
さてこの場所に「?」が置かれたことによって、先ほどどちらに伸びるかわからなかった3が下図のように確定します。
このままではこれ以上先に進まないので、また数字を配置してみます。試しに「?」の左上に3を置いてみると……
後述しますが、3のブロックの形は2種類しかありません。なので下図の赤色の部分を塗ると、どうやっても 1つのチェーンに同じ形が含まれてしまいます。
よって、今置いた3はこのように伸びていきます。
右下が全然決まっていないので、試しにこんな感じでババーンと数字を置いてみます。
もともとあった「?」が1マスのブロックになることが確定するので、今置いた「?」は2マス以上になるはず。連れて4も下図のように伸び……
4の最後の1マスは上か、下か?
答えは下。上に伸びると同じ形の3がくっついてしまうからです。
すべてのマスが埋まり、これ以上数字を置くことはできません。したがって、これにて配置は完了となります!
念のためルールに反している場所がないか、軽くチェックしておきましょう。
③デザインを整える
配置の冒頭で述べた通り、チェンブロの数字は本来は「黒マスに白文字」で表します。そのため、先ほど作った盤面のデザインを修正する必要があります。
解答がすべて埋まった状態から、次の手順で修正していきます。
(1)数字と「?」のマスにある黒マスを消す
(2)問題入力モードに切り替えて、今消した箇所に改めて黒マスを置く
(3)黒文字で書かれている数字と「?」を、白文字に直す
これで無事、ニコリのパズル誌に載っているチェンブロと同じ見た目になりました!
④出力・チェックする
盤面が出来上がったら、問題のデータを保管するためにURLの出力を行いましょう。「アドレス」→「拡張出力」→「解答判定付き出題用アドレスを出力」と選択。
今回作った問題はこのようになります。
さて大変ありがたいことに、チェンブロはソルバーを使って唯一解かどうかのチェックをすることができます。
そう! みゃーみゃ氏によるツール「ペンシルパズルソルバー」です! Penpa-editorと連動してオモパ(ニコリで新たに考案されるパズル)の唯一解チェックを行う機能が搭載され、実用性にさらに磨きがかかっています。すごいなあ。
ということで、先ほど出力したURLをソルバーに投入してみます。
はい、無事唯一解でした! この世界にまたひとつチェンブロが生まれた瞬間です。
3. もう少し凝ったチェンブロを作る
ここまで読んだあなたはもう、いつでもどこでもチェンブロを作ることができます。すごい!
しかしあなたはきっとこう思うはず。
「ニコリに載るようなかっこいいチェンブロを作って、掲載料で焼肉を食べたい。」
「作ったチェンブロをネットに放流して、みんなからすごいって言われたい。」
「初心者向けから上級者向けまで、いろんな難易度を自由自在に作ってチェンブロの普及に一役買いたい。」
雑念がいろいろ混じっていますが、要するにもうちょっと凝ったチェンブロを作りたいなー、ってことです。
ペンシルパズルは「手筋」の組み合わせによって面白さや奥深さが炸裂します(諸説あります)。カレーみたいですね。お腹すいたなあ
そしてそれはチェンブロも例外ではありません。1つの手筋を貫き通すか、さまざまな手筋を取り入れて色鮮やかな問題にするか、はたまた……
ということで、ここはひとつチェンブロの手筋を眺めてみることにしましょう。ここで説明しすぎてしまうと「手筋を見つける楽しみ」が削がれてしまうと思うので、概ねおてごろレベルの手筋まで紹介します。(そもそもすべてを説明するにはスペースも時間もゴニョゴニョ)
①チェンブロの手筋(らくらく編)
(1)数字のナナメ隣接/タテヨコ1つ飛び
ぬりかべと同様で、もっとも簡単な入り口となる手筋です。
1つのブロックに数字や「?」は1つしか含めることができないので、お互いの間には必ず白マスが挟まります。
壁際で用いたときが強力で、一度にたくさんの黒マス・白マスが確定します。
(2)1と2のブロックは1種類
チェンブロにおいて、1と2は強力な制限をもたらします。なぜならば、1マスのブロックと2マスのブロックは形が1種類しか存在しないからです。
これを言い換えると「1つのチェーンに、1マスのブロック・2マスのブロックをそれぞれ2つ以上含めてはいけない」となります。
色々な使い方ができますが、例えばこんなことができます。
13のブロックはすでに1のブロックとつながっているため、これ以上1のブロックとつながることができません。したがって、13は他の1を避けるようにうにょうにょと伸びていきます。
同型禁こそチェンブロの華、積極的に使いたい手筋です(あまり多用すると誤魔化しっぽくなるかも)。
(3)最後の1マス
「あと1マス塗ればブロックが出来上がる! でもどこを塗ればいいかわからない!」という場面で、同型禁が活躍することがあります。
大きく2通りの活用方法があり、1つは「自分のチェーンの中に同じ形のブロックができてしまうから、こうなる」というケース。
下図では、下にある3が上に伸びるか右に伸びるかの2択になっています。しかし、右に伸びると同じ形の3のブロックができてしまいます。
もう1つは「他のチェーンにつながったときに同じ形のブロックを含んでしまうので、こうなる」というケースです。
下図では、2が下に伸びるか右に伸びるかの2択になっています。しかし下に伸びると、同じ形の3のブロックがつながってしまうため、2は右に伸びるとわかります。
最後の1マスがどうなるかなという程度であれば、ニコリ的にはらくらく判定になる模様です。
(4)発生&接続
すべてのブロックはチェーンを作るというルールから、突然黒マスが発生することがあります。
もっともわかりやすいのは「角の1」です。1のブロックとつながることができる場所は1つしかないため、この場所が必ず黒マスになります。
発生した黒マスが他の数字とつながって、ブロックが完成する場面も作れます。
ぬりかべの白マス発生と同様に2択・3択を作ることもできますが、ここまでいくとおてごろ扱いになるかもしれません。
(5)最密充填
一見激ムズな手筋に見えますが、要するに「この数字ぶんマスを塗る方法はこれしかない」という進め方です。
ただしわかりにくい形だったり、大きい数字だったりするとさすがにらくらくの範疇を超えると思われます。らくらくのチェンブロを作るときは多用しないほうが良いかも?
②チェンブロの手筋(おてごろ編)
(1)3のブロックは2種類、4のブロックは5種類
「1と2のブロックは1種類」の応用で、3と4(一応5以上も)のブロックにも同じことが言えます。
3のブロックは、I字とL字の2種類だけ。よって、1つのチェーンに3は3つ以上入りません。
また4のブロックは「LITSO」の5種類。1つのチェーンに4が6つ以上入ることはありません。
(2)白マスに囲まれて白マス→発生
白マスに囲まれ、内部に数字や「?」がない場合、囲まれている部分はすべて白マスになります。
これだけだと(盤面を埋める以外に)使い道がありませんが、ここから発生につなげるコンボが起こります。らくらく手筋の「発生&接続」を見づらくした形と言えます。
作問上、ストーリーのつなぎ目として使いやすい手筋だと思われます。
(3)伸びる「?」、伸びない「?」
「?」を含むチェーンの中身によって、「?」が何マスのカタマリになるかが決まる手筋です。
例えば下図の場合。「?」には1・2・I字の3がすでにつながっています。
「?」は1マスではダメ、2マスでもダメ、3マスだとしてもI字のため同じ形になってしまいます。よって「?」は4マス塗るしかないのです。
一方で次のようなケースもあります。下図で「?」につながっているのは2・I字の3・L字の3です。
「?」は最大で3マスのカタマリになることができますが、2マス・3マスの場合は同じ形ができてしまいます。そのため、先ほどとは逆に「?」は伸びることなく1マスのブロックになるしかありません。
「?」は油断すると「盤面を成立させるためだけのダミー(周囲の決定によって「?」の形が確定してしまう)」になりがちです。ニコリでは割と珍しめのマス数不明ルールなので、ここはぜひ積極的に「?」に頑張ってもらいましょう!
(4)少なくともここまで伸びる
これはぬりかべと同じ手筋です。大きいブロックの正確な形はわからなくても「少なくともここは通らないといけないから……」という考えで黒マスを確定させることができます。
(5)チェーンを作れない塗りかた
下図で、2の作り方は2通りあります(上に伸ばすか左に伸ばすか)。ところが左に伸ばすと、2のブロックの周囲がすべて白マスで覆われてしまい、チェーンを作ることができなくなってしまいます。
そのため、チェーンを作るために2は上に伸び、発生も同時に起こります。
個人的にはたいへんに片足突っ込んでいる気もします。おてごろで使うとしたら、見やすくするなどの工夫が必要そう。
③チェンブロ独自のスパイス「ワープ」
一般的なペンシルパズルでは、
・ある地点からじわーっと解き進める
・別の地点からじわーっと解き進める
・解き進めた場所がぶつかって、そこを起点にまたじわーっと……
といった解き方になることが多いです。
しかしチェンブロはチェーンルールの存在により、
・ある地点から解き進める
・おおっと最初の地点がこうなっちゃうぞ!?(ワープ)
・うおお今度はさっきの終点の形がこうなるしかないのかあああ!!(ワープ)
・別の地点から解き進める
・あーーーっと最初においたブロックのせいでここには置けないぞ!?(ワープ)
といった感じに、盤面を縦横無尽に飛び回りながら解かせるスタイルを実現できるのです!
ある場所を解き進めるために、遠く離れた場所を見にいく……このような「視点のワープ」を手軽に引き起こすことができるのも、チェンブロの魅力の1つと言えるでしょう。
将来チェンブロ・ザ・スーパージャイアントが出題されたら、右下隅を進めるために30cm以上も離れた左上隅をチェックする……という光景も起こるかもしれません。ロマンがありますねー。
また「ワープ」は、難易度上のスパイスにもなります。同じ手筋を使うとしても、近い場所だけを見るだけで済めば難易度はさほど上がりませんが、広い視野を必要とする場合はその見つけづらさから難易度がグッと上昇します。
「らくらくのチェンブロを作りたいなー」と思ったときはなるべく近い位置で完結するように、
「たいへんのチェンブロを作るぞー」という場合は広い視野を必要とする問題に仕上げると、いい感じに難易度のコントロールができるのではないでしょうか。
④設計図を描いて問題を作ろう
本当は手順を追って改めて作問方法を紹介するつもりでしたが、時間が足りませんでした。すみません。
ここまでの内容を踏まえて、ぜひあなた独自のブレンドで美味しいチェンブロを作っていきましょう!
・難易度はこうしよう
・この手筋を使わせよう
・ワープ具合はこれくらいにしよう
という手順で設計図を思い浮かべて、それを実現するように問題を作れば、きっと面白いチェンブロが完成するはずです。ああもっとちゃんと語りたかった。
終わりに
すっかり言うのを忘れていましたが、実はチェンブロの考案者なのでした。よろしくお願いします!
意外な展開・驚きの連鎖を組み込みやすいパズルだと思いますので、作問経験があまりないという方も、レッツトライ!
ちなみにこの記事の文字数は7638文字です。成宮由愛はいいぞ
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