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「ソフトウェアレビュー勉強会 レビューワーク06~認知バイアスに着目した欠陥予測」に参加してきました

前回からたまっているイベント参加レポートを消化しています。

今回は2023年1月24日(火)19:00 ~ 21:00に開催された「レビューワーク06~認知バイアスに着目した欠陥予測」の内容を共有します。

おことわり

  • 今回のレポートは非公式的なものであり、自分なりに整理したものです。

  • 「こんなこと言っているんだな~」と思ってみていただければと<(_ _)>

まとめ

  • 成果物を作成する際に、認知バイアス要因でヒューマンエラーが発生し、欠陥を混入することがある

  • D2BOCs法は作成者の背景情報(成果物を作る過程等)や成果物の情報をベースに、作成者が掛かっている認知バイアスを推測し、そこから欠陥が混入していそうなところをレビューする方法

  • どんな認知バイアスがあるのかを把握するだけでも、普段の業務に活かせそう

テーマ:認知バイアスに着目した欠陥予測

なんかかっこいい。。

イベント概要

ソフトウェアレビュー勉強会その6 テーマ:認知バイアスに着目した欠陥予測

認知バイアスとは、「人間が物事を評価する際,考えが歪められたり、人の思考を無意識のうちに誘導するもの」です。
代表的なものとしては、「アンカリング」、「専門偏向」、「共有情報バイアス」などが挙げられます。その種類は193個あると言われていますが、レビューに活用できそうなものがいくつかあります。
今回は「作成者が掛かっている認知バイアスを推測して、混入した欠陥の傾向を特定するレビュー手法」を皆さんと一緒に体験してみたいと思います。 特別なご用意は必要ありません。
レビューをもっと良くしたい、という思いだけあれば十分です。

レビューワーク06~認知バイアスに着目した欠陥予測 - イベントの説明より

認知バイアスというものは聞いたことがありますが、
「認知バイアス≒認識齟齬」ぐらいしか考えていませんでした。
認知バイアスに関する書籍があったため、時間があれば見たいと思います。

どんな内容だったか

  • 認知バイアスについての説明

  • 認知バイアスに着目したレビュー方法の説明

  • 【グループワーク】業務で遭遇した事象を認知バイアスに当てはめてみよう

認知バイアスについての説明

認知バイアスとは、認知心理学や社会心理学の理論であり、人間が物事を評価する際、自分の利害や希望に沿った方向に考えが歪められたり、これまでの経験や先入観、他人の意見などにとらわれたものである

作成者の認知バイアスに着目したレビュー手法の提案」より

この認知バイアスによって、ヒューマンエラーが生まれ、不具合につながるとのことでした。

作成者が成果物を作成する際の思考プロセスは認知・判断・行動の順で実施されるが、この三つすべてにおいて、認知バイアスに明かる可能性がある。そして、無意識のうちにヒューマンエラーを引き起こしてしまい、成果物に欠陥を混入するのである。

作成者の認知バイアスに着目したレビュー手法の提案」より

例としては以下があります。

  • 納期が迫り、急いで作成すると本来検討すべき例外処理が漏れる

本勉強会で紹介された認知バイアス

  • 確証バイアス

    • 先入観で判断すること、人は自分の意見を変えることが難しい

  • 利用可能なヒューリスティック

    • 認識、理解、決定の際に、思い出しやすい情報だけに基づいて判断する傾向

  • ハロー効果

    • 目立つ部分だけで判断すること

  • サンクコストの呪縛

    • 損失が怖くて合理的な判断が出来ないこと

  • 成功者バイアス

    • 成功話を過大評価すること

紹介していただいたものでも共感できる部分が多いなと思いました。

認知バイアスに着目したレビュー方法の説明

この認知バイアスを使ってレビュー観点を導出しようというのが、D2BOCs法(Defect Detection from Background of Congnitive bias)というものです。
本勉強会では、直接説明していませんでしたが、おそらくこれがベースとなっていると思います。

レビューアが、作成者の背景情報と作成された成果物の特徴から、どの認知バイアスに掛かっているかを推測し、混入した欠陥の傾向を特定することで、重大欠陥または検出難易度の高い欠陥を効率的に検出する手法

作成者の認知バイアスに着目したレビュー手法の提案」より

認知バイアスは全部で193個あるそうです。(認知バイアス一覧で社会心理学入門~社会学の知の蓄積を活用した社会教育の実現に向けて~

論文ではレビューの欠陥に影響が出そうなバイアスを選出(※)し、縦に背景情報/成果物情報、横に認知バイアスを並べた欠陥関係表を活用するとのことです。(実際の表は論文の付録についてます)

「作成者の認知バイアスに着目したレビュー手法の提案」を基に筆者が作成

実際の作成者の背景情報や成果物の特徴を欠陥関係表にプロップし、認知バイアスを推測します。
そして、縦に欠陥の傾向、横に認知バイアスを並べた表から、欠陥の傾向を推測します。

「作成者の認知バイアスに着目したレビュー手法の提案」を基に筆者が作成

(※)193種類の認知バイアスから、レビュー対象の作成工程で作成者にかかる認知バイアスを抽出し、そこから発生頻度と重大欠陥誘発度の2つの視点で採点し、基準点を超えた認知バイアス(13個)を対象としています。
・発生頻度:認知バイアスにかかる頻度
・重大欠陥誘発度:重大欠陥の引き起こしやすさ

所感

認知バイアスを推測するという作業がとても難しそうだなという印象を持っていましたが、欠陥関係表があるとある程度推測出来るのかなとも感じました。(欠陥関係表で出た結果をすべて信じるとまたそれも認知バイアスに掛かっていそうな。。)
欠陥関係表はソフトウェアテストでいう「意地悪漢字」みたいに手元に持っておくと、効率よく欠陥を推測できそうだなと思いました。

また、作成者の背景情報を見るということで普段から観察しておく必要があるため、日々の進捗具合が分かるよう仕組み化しておいた方が良いなと思いました。

【グループワーク】業務で遭遇した事象を認知バイアスに当てはめてみよう

今回は普段の業務で遭遇した事象を認知バイアスに当てはめてみるワークでした。
実際に共有された事象と当てはめた認知バイアスは以下です。

  • 【認知バイアス】:サンクコストの呪縛

    • 【事象】:ツールを購入したら、そのツールを使う前提で作業を考えている

  • 【認知バイアス】:機能的固定

    • 【事象】:便利機能はすべて実装した方が、あらゆることができると思っていたが、機能が多すぎて、UIが分かりにくかった

  • 【認知バイアス】:確証バイアス

    • 【事象】:OSの時刻設定(表示)がJSTだったため、すべてJSTだと思ったが、印刷はGMTだった

  • 【認知バイアス】:ユニットバイアス

    • 【事象】:不具合チケットを素早く対処しようと急いで修正した結果、根本原因まで直せず、市場に不具合が流出した

所感

上げていただいた事象は結構遭遇することがあるなと思いました。
また、日ごろに業務上のどこかには認知バイアス要因の事象が発生しているんだなと感じました。

勉強会を通じて感じたこと

今後の業務では常に認知バイアスが発生しているんだということを念頭に置いて作業をすると、普段の状況から起こり得そうな不具合を事前に予測し、予防できそうだなと感じました。
ただ、そのためにはどんな認知バイアスがあるかを知っておく必要があるため、再度論文や書籍を読んでみたいなと思います。

最後に

次回は、「レビューワーク07~製品・サービスリスクに着目したレビュー観点導出をやってみよう!」の参加レポートを書く予定です。

補足

ソフトウェアレビュー勉強会グループについて

https://softwarereview-studygroup.connpass.com/

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