“部室”の日常 - (2)憧れの少女
いつものようにお通しの小鉢をつつきながら、一杯目をちびちび…いや、ゴクゴク楽しんでいたら、店員のえむちゃんがやってきて、
「今日さ、えいちゃんの誕生日なんだよね」
と言った。
はっ、忘れてた!
えいちゃんは私より年上だけど、どの年齢の人からも「ちゃん」づけされる、可愛いお姉さん。
かつては一人で飲み屋を切り盛りしていた。だから、地元の多くののんべーが知っている。
しばらくしたら、なにやら私の後ろがザワザワ。気づけばえいちゃんが店にいて、えむちゃんから誕生日プレゼントとして可愛いパーカーをもらっていた。
最近はあまりお店に顔を出さなくなっていたけれど、たぶんえむちゃんが呼んだんだろう。
私に気づいたえいちゃんは、ちょっと、ちょっと、と手招きした。
「いくつになった?」と聞くと、「6」と答えた。66歳。乾杯もそこそこにマシンガントークを聞く。
コロナにかかっちゃってたの〜、膝が痛くて寸胴が持ち上がらないの〜、息子がさ〜、などなどほんとに話が尽きない。ほんの5分で、関連性がバラバラな話題が次々と(笑)
彼女のそういう、いい意味で空気を読まない、少女のような感じがとても好き。あちこちの飲食店を渡り歩いてひたすら働くバイタリティもすごい。仕事への取り組み方も本当に真面目なことが、話しぶりからよくわかる。
飲み屋でみんなとワイワイやる日々をこの歳になっても続けるには、健康じゃなきゃいけないし、お金がないといけない。
年上の女性のそんな生き方にすごく憧れる。自分の未来もそんなふうになったらいいなと思う。
一通り話が終わったあと、犬のイラストの入った(誕生日プレゼントの)パーカーを着て喜んで見せに来る彼女と、あらためてお祝いの乾杯をした。
これからもどうかそのままずっと、憧れの少女のままでいてね。
次回は、「いつもの」のお話。
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