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【連載第6回】オンライン学習のメリット&デメリットとその対策

山口たく(やまぐち・たく)1972年生まれ。都内大手名門進学塾やプロの家庭教師として、15年以上に渡り御三家中や最難関国公私立高校受験を指導。
その後、理想の教育を求めてニュージーランドに教育移住し、Ties. JNZ(Terra International Education Services. JNZ)を設立。これまでに国内外で教えた生徒は数千人にのぼる。
現在は『望む場所で、望む仕事をしながら、世界に貢献できる喜びを実感できる未来を与えられる教育』をモットーに、日本人留学生や現地在住日本人子女に指導を行っている。また、10年近い海外子育て・教育の経験を活かし、『ニュージーランド教育&国際バカロレア受験コンサルタント』としてさまざまなメディアに出、教育相談はもちろんのこと、留学や国際バカロレア教育に関するコンサルティングを行っている。2児の父。

オンライン学習のメリット&デメリットとその対策

ではまず、オンライン学習のメリットとデメリットについて、一緒に詳しく見ていくことから始めていきたいと思います。どんな学習法にも、いい点と悪い点は必ず存在します。それをしっかり理解して利用するのと、知らずに利用するのでは、効果に大きな差が出ることは、容易に想像がつくと思います。  

まずはメリットから
さてまずはオンライン学習のメリットから見ていきましょう。オンライン学習が対面の授業と比べて優れている点は、大きく分けて以下の5点が挙げられます。

1) ネットの活用でより深い学習が可能
2) 時間の節約になる
3) 場所を選ばずに学習できる
4) 未来型学習スキルが身につく
5) 保護者が学習内容を把握できる

では順に、お話していきましょう。

1) ネットの活用でより深い学習が可能  
オンライン学習で一番私がアドバンテージだなと感じているのは、ネットや動画といったテクノリジーを活用することにより、従来のテキスト中心の学習よりも深く楽しく学ぶことができる点です。  

私もオンラインレッスンをする際には、オンライン上の視覚情報(グラフや写真など)をできる限り授業内で使用するよう心がけていますし、動画コンテンツの活用にも力を入れています。今の子供たちは生まれた時から携帯やパソコンといったデジタル環境にかこまれて育っている「デジタルネイティブ」なので、視覚情報の吸収力は今の大人とは比べものになりません。その能力を最大限に活用できるのが、画像や動画を活用したオンライン学習なのです。  

例えば理科の実験を考えてみて下さい。小学生の頃、教科書や資料集で理科の実験について学んだと思います。こうした教材では、具体的な実験の準備の仕方や実験手順、その結果などが写真付きで説明されていますが、実際に実験で見られるような様々な変化はなかなか実感できませんでした。また、実験をしてもうまくいかないこともあることを考えると、従来の学習では理解に限界があるでしょう。しかしこれを動画でみたらどうでしょう。ましてやそれを、様々な演出付きで面白おかしく見られたなら、子供たちの理解度は飛躍的に上がってくることでしょう。  

また分からないことを調べるという点においても、オンライン学習は非常に優れています。かつては調べ物といえば書籍が定番でしたが、今はGoogleがリサーチのメイン。オンライン学習ではこうしたネットを使ったリサーチが存分に行えています。もちろん信憑性のある情報かどうかを見極める目は必要ですが、その育成もデジタル時代を生きていく子供達にとっては、必須のスキルとなるはずです。

2) 時間の節約になる  
オンライン学習で次にあげられるメリットが、時間を節約できるという点です。これはそれでなくても忙しい中学受験の親子にとって、本当にありがたいメリットだと思います。  


子供が塾通いを始めると、親の仕事は一気に増えますよね。忘れ物が多い子だと、塾の準備から始まり、塾への送り迎えをする必要がある場合もあるでしょう。また遅くまで授業を行なっている塾であれば、お弁当の準備も必要です。 

お仕事をされていない方でも、これらをするのは結構骨が折れるもの。ましてや塾が遠方だったり、ご兄弟がいたりしたら、ますます時間のやりくりが大変になります。その上もし仕事をされている方なら、その忙しさは察して余りあります。  


でもこれがもしオンライン授業になったらどうでしょう。まず、授業が自宅で受けられる以上、忘れ物の心配もありませんから、塾の準備は入りません。もちろん塾の送迎も不要です。これだけでもう、数時間は時間が浮くことでしょう。また他にご兄弟がいらっしゃる場合、習い事への送迎も行きやすくもなるはずです。そして時間と手間がかかるお弁当の準備についても、ご家族の食事と一緒に作って、子供の部屋まで持っていくだけでOKという手軽さ。  


忙しい方なら、これらの時間が減ることで、毎日にどれほどの余裕ができるか容易に想像できるのではないでしょうか。この余裕が親の心に生まれることは、子供を支える心の余裕にもつながります。その効果で子供のメンタルも安定しやすくなり、学習意欲や成績上昇にも貢献するはず。

3) 場所を選ばずに学習できる  
パソコンのある居場所が教室になるオンライン学習は、学習する場所を選ばないという大きなアドバンテージを持っています。それは親自身が仕事や旅行などで移動しなければならない場合でも、それらのスケジュールに振り回されることなく、どこでも気軽に学習ができることを意味しています。  


例えば夏休みなどの長期休暇の、家族旅行を考えてみてください。毎年恒例で行っている実家への帰省や、イベントや仕事等での長距離移動が必要になる時、受験生がいると思うように行きませんよね。特に小6ともなれば、長期休暇中は必ず講習があり、それを休むと受験に大きな影響が出るもの。だからほとんどのご家族は皆、受験生の予定に合わせてその年だけはこうしたイベントをキャンセルすることが多いはずです。  


でも私はこうしたイベントについては、可能な限り受験生も連れて行って欲しいと思っています。というのも受験学習ばかりでは気が滅入ってしまいますし、場所を変えたり、旅先などからの授業となれば、気分もリフレッシュして逆に集中できることもあるからです。  

実際に私の生徒は、夏休みに家族とご両親のご実家に帰省し、そこから授業を受けていました。その親御さんからは、子供にとっても良い息抜きになったし、自分たちも無事帰省できて、オンラインレッスンにして本当に良かったというご感想も頂きました。これもオンラインならではですね。  

また今世界では、キャンパスを持たないミネルバ大学のような新しい学校の形も生まれてきています。また昨今のテレワーク拡大からも分かるように、今後仕事も場所を選ばずに行える時代になっていくことでしょう。そんな未来を生きる子供たちにとって、中学受験時代からオンラインに慣れていくことは、大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。

4) 未来型学習スキルが身につく  
私がオンライン学習で一番の利点では思っているのが、この未来型学習スキルが身につくという点です。というのも世界では教育のオンライン化が急速に進んでいて、日本だけがその流れにいまだうまく乗れずにいるのが現状だからです。  
世界的に拡大したウイルス感染で、多くの国々がロックダウンを経験しながらも、子供たちはオンラインで学校教育を継続できた一方で、日本は緊急事態宣言下の全国一斉休校を受け、公立校通学生を中心に、数ヶ月にわたって教育が完全にストップしてしまったことは、記憶に新しいところでしょう。  
それだけではありません。今回の事態を機に、世界の教育はより一層オンライン化を加速し始めています。それはすでに説明した大学のオンライン化だけではありません。学びそのものがオンライン化することで、生涯学習の流れが定着しつつあるのです。  


2012年に行われたOECDによる国際成人力調査によると、日本人の生涯学習率は他の先進諸国と比較するとかなり低いことが明らかになっています。言うまでもなくこの当時と比較し、オンラインで名門大学の授業が手軽に受けられるようになった今、他国の人々の学習意欲はますます上がっているでしょう。実際にMOOCと呼ばれるオンライン学習システムは現在急速に拡大しており、世界中から多くの受講生が日夜学び続けています。こうした流れを見ても、いち早くオンライン学習に慣れることは、子供にとって大きな武器になることをご理解いたただけると思います。

5) 保護者が学習内容を把握できる  
意外に気づいていない方が多いのですが、オンライン学習に切り替えることによって保護者が後ろから授業の様子を見られることは、大きなメリットです。  


多くの塾では、授業内容を保護者が見ることはできません。そのため実際に先生がどのように教えているのかを理解することができず、自宅で子供に勉強を教える時に教え方が先生と違って、子供が混乱するということがよく起こります。特に算数を教えられている方は、すでにご経験されているかもしれませんね。  


授業を見られるということは、教え方を理解できること以外にもメリットがあります。例えば他の生徒の出来を同時に把握できるので、自分の子供の立ち位置が分かります(だからといって、もしお子さんが他の生徒よりも出来が良くなかった場合でも、お子さんを責めることは厳に謹んで下さい!)。  
また、生徒に対する先生の対応を見ることで、子供への接し方も学ぶことができるでしょう。特にベテランの講師であれば、ナーバスになっている子供に対してどう接するかをよく心得ています。メンタルをきっちりケアしながら、決して甘やかすことなく、的確な学習指示をすることができるはずなので、こうした接し方を学ぶことで、中学受験の特殊な状況下の親子関係を、スムーズなものにできるヒントを得られることでしょう。

いかがでしたでしょうか。オンライン学習のメリット、イメージできましたか。  

次にデメリット
それでは続いて、オンライン学習のデメリットについてお話ししたいと思います。オンライン学習で気をつけたいポイントは、以下の5点です。

1) 集中力が続きにくい
2) 時間管理が難しい
3) 目が疲れやすい
4) 緊張感を体験しにくい
5) パソコンやネットのスキルを要求される
 


こちらも順に、お話していきますが、デメリットについては、合わせてその対策も説明していきたいと思います。


1) 集中力が続きにくい  
オンライン学習の最大のデメリットが、集中力が持続しにくいという点でしょう。特に動画授業がメインで、双方向のライブ配信がない場合には、より問題となりやすいものです。  

私もオンライン授業をしていると、生徒の集中力が切れるのがみていて分かります。またオンライン学習についていただくご相談の中でも、この集中力に関するご質問が1番多いのが現状です。  


動画メインの学習は、その内容がどんなに良くても、長い間集中してみ続けるのは困難です。そもそもたとえ対面であったとしても、小学生が授業中に15分以上集中を切らさずにいるのは容易ではないのです。  


このような状況に照らしてみると、もし動画中心でオンライン学習をするのであれば、15分間隔で休憩をとったり、演習に切り替えたり、内容を変えるなど、何かしらの変化を与えながら実施するのが効果的でしょう。  
また授業中は積極的に自分でメモを取り、分からないところもチェックしながらみるなど、能動的な学習を心がける必要があります。その意味でも、こまめに休憩を入れることは必須だと思います。  


さらに可能な限り、保護者の目を届かせるようにするとなお良いでしょう。時間に余裕がある時は一緒に動画を見て、共に学ぶと良いかもしれませんね。先ほどもお話しした通り、授業内容を親が把握することには、メリットがあります。  


でもこの問題への最大の対処法は、双方向のライブ配信授業を軸にするということです。ライブ配信授業であれば、先生が工夫することで、集中力を対面授業に近づけることは十分可能です。この詳細については、後ほど掘り下げてお話ししますね。

2) 時間管理が難しい  
次に問題になりやすいのが、時間管理の難しさです。オンライン学習はどうしても自宅学習ですので、通塾する時と比べ、だらけやすい環境にあると言えます。そのためもともと時間にルーズな子供だと、なかなか時間管理がうまくいかず、だらだらとした学習になってしまう危険性があります。  


これもやはり、動画学習が中心だとより起こりやすい問題と言えます。特にいつでも動画視聴できるシステムだと、ついめんどうくさくなって「あとでみればいいや」と後回しにしやすくなり、どんどんみるものがたまって結局やらないというパターンに陥りがち。これは通信教育による学習にも言えることですね。  


この対策もやはり、時間の決まった双方向ライブ配信授業をメインにすることで、だいぶ解消されると思います。特に塾の先生が出席を厳しく管理してくれれば、子供も時間通りに学習に臨めると思います。  


ただ私は個人的には、オンライン学習に切り替えることはこの時間管理を子供が学ぶことができる良い機会だと思っています。時間管理能力は受験のみならず、進学後に学習についていくためにも必須のスキル。さらに社会に出てから生涯にわたって使える、まさに一生ものの財産です。だからこそこれを良いチャンスと捉え、親子で協力して、子供に時間管理を身につけてほしいと思います。

3) 目が疲れやすい  
オンライン学習はタブレットやパソコンの画面を通して授業を行いますので、どうしてもスクリーンを長時間見つめることになり、その分目に負担をかけることは否めません。そのため、学習で目が疲れてしまうという声も聞きます。  


この点に関してはまず、こまめに目を休めながら学習を続けていくことが基本となります。できれば最低1時間に1回は休憩をし、温めたタオルで目を覆うなどすると、目も休まって気分も落ち着き、リフレッシュできます。  


また画面の大きさや距離も十分に気をつけたいところです。いうまでもありませんが、オンライン学習はできるだけ大きな画面で行ったほうがいいと思います。スマホはもちろん適しませんし、タブレットやノートパソコンでも、できるだけスクリーンが大きいものの方が目も疲れにくいものです。  

さらに画面にはブルーライトカットのプロテクターをつけたり、ブルーライトカット用の眼鏡をつけるのもおすすめです。こうしたグッズはAmazonなどでも手軽に手に入りますので、うまく活用してみるといいでしょう。  

4) 緊張感を体験しにくい  
塾の教室という環境で実施される対面授業は、たしかに独特の雰囲気があり、それがいい緊張感の体験の場となります。それに比べて自宅で行うオンラインレッスンでは、そうした緊張感を作り出しにくいことは確かです。特に動画メインの授業であれば、それは尚更だと思います。  

この問題に対する解決策はやはり、双方向ライブ配信授業です。ただし、単にライブ配信をするだけでは、対面に近い緊張感を作り出すのは困難です。というのもライブ配信では、たとえグループで実施していたとしても、どうしても先生と自分の一対一の関係という意識が強く、他の生徒との競争を感じにくいからです。

  
ではどうすればいいのでしょうか。私の考える答えは、先生の管理能力と、授業内人数の適正化です。

緊張感の創出は、先生の技量によるものが大きいものです。たとえ対面で実施していても、ある先生のクラスは常に緊張感と競争に満ちているのに、隣のクラスはのんびりとした環境であることは少なくありません。特にオンラインは対面とは違ったスキルが要求されるので、そうしたスキルを先生が持ち合わせていれば、オンラインでも十分に環境整備は可能です。  


また授業の適正人数も、対面とオンラインでは異なります。オンライン授業では、緊張感や競争感を出すためには、対面とは違って、多すぎず、少なすぎすの絶妙な人数選択が重要です。  
この先生のスキルや適正人数に関しても、後ほど項を改めて、詳しくお話しますね。

5) パソコンやネットのスキルを要求される  
オンライン学習で考えられる最後のデメリットは、親子の双方にパソコンやインターネットのスキルが要求されるということです。もちろん専門的な知識は不要なのですが、普段スマホしか使っていない人にとっては、簡単でないこともあることでしょう。  


まず安心していただきたいのが、こうしたスキルに関しては、塾側がしっかりとしたサポート体制を持っているはずだということです。もしまだ不十分であったとしても、今後大手塾を中心に、サポートは充実していくと思います。  


一方でこれは時間管理のところでもお話ししたことと同じですが、このパソコンやインターネットのスキルについても、オンライン学習への移行をいい機会として、是非お子さんに身につけてほしいスキルです。  
今更いうまでもなく、これからの未来の世界では、パソコンやインターネットのスキルは「必須」です。残念ながら日本の生徒たちは、世界の生徒に比べてこうしたスキルが、大きく劣っています。  

これまで留学生の指導もさせて頂いてきましたが、ニュージーランドの高校の先生によく言われたのが、学習指導の前にコンピューターとインターネットのスキルを指導して欲しいということでした。現地では小学生からこうしたスキルを学校で当たり前のように身につけて行くので、日本から来た学生は非常に戸惑ってしまうのです。  


新しいスキルを身につけることは時に困難なこともありますが、中学受験時にこうしたスキルを身につけることは、進学後はもちろんその後の人生でも、大きなアドバンテージになってきます。  


さて、いかがでしたでしょうか。オンライン学習のメリットとデメリット、だいたい理解できましたか。それでは次の項からはいよいよ、塾選びの具体的な視点をお伝えしたいと思います。

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