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【連載第7回】新しい判断基準を持とう~既存の実績は当てにならない

山口たく(やまぐち・たく)1972年生まれ。都内大手名門進学塾やプロの家庭教師として、15年以上に渡り御三家中や最難関国公私立高校受験を指導。
その後、理想の教育を求めてニュージーランドに教育移住し、Ties. JNZ(Terra International Education Services. JNZ)を設立。これまでに国内外で教えた生徒は数千人にのぼる。
現在は『望む場所で、望む仕事をしながら、世界に貢献できる喜びを実感できる未来を与えられる教育』をモットーに、日本人留学生や現地在住日本人子女に指導を行っている。また、10年近い海外子育て・教育の経験を活かし、『ニュージーランド教育&国際バカロレア受験コンサルタント』としてさまざまなメディアに出、教育相談はもちろんのこと、留学や国際バカロレア教育に関するコンサルティングを行っている。2児の父。 

新しい判断基準を持とう~既存の実績は当てにならない

さて、このオンライン学習のメリット・デメリットをご理解頂いたところで、次は塾の判断基準の視点についてお話ししていきたいと思います。ここではまず基本となる判断基準のアウトラインについてご説明し、次の項からより具体的な各項目の判断基準の視点をご紹介していきます。  

まず最初にお伝えしたいことは、これまでの実績は必ずしも当てにはならないということです。これはすでにお話しした事ですが、対面とオンラインでは同じ内容の授業であったとしても、大きく異なるスキルが必要となるからです。それを前提とした上で、オンライン学習の塾選び基準として私が考えているのは、次の3点です。

1)メインコンテンツの充実度
2)集団効果・競争効果育成システムの有無
3)オンラインに習熟した子牛の有無
4)フォローアップサポートの充実度
 

以下、順にお話ししていきましょう。  

1) メインコンテンツの充実度  
まず、チェックすべきことは、言うまでもなくメインコンテンツの内容です。簡単に言うと、対面授業での「講義」にあたる新出事項を説明するコンテンツの部分です。  

この講義部分については、特に双方向ライブ授業にこだわる必要性は、必ずしもないと私は思っています。というのも事前に録画された講義動画の方が、編集も十分に行われてより魅力的なものに出来ますし、何よりYoutubeなどで動画視聴に慣れている子供達にとっては、慣れてしまえばこうした動画授業はそれほど苦ではないからです。  

また、動画配信で得られるもう一つのメリットは、時間を有効に使えるという点です。動画であれば好きな時間に見られますから、まとまった時間を取らなくても、細切れ時間を有効活用できます。また分かりにくいところは繰り返しみたり、逆に知っているところは飛ばして見られるなど、学習効率は良くなります。  

ただし動画視聴はあくまで受動的な学習方法ですので、そのコンテンツが子供を飽きさせない工夫に富んだものかどうかは必ずチェックしましょう。しかし、講師の授業を録画しただけのものを流している塾は、論外です。それでは必ず子供は飽きてしまい、集中力も持ちません。詳しい内容については、後述します。  

一方、ライブ配信授業がある場合は、その授業の形式と内容に注目しましょう。

ライブ授業は動画視聴に比べれば、先生による監督がある分、子どもたちの集中力は確かに増します。ただあまりにも人数が少なかったり、逆に対面授業のように数十名を一気に入れるなどすると、先生の目が届かず、動画視聴と同じ受け身の姿勢になりがちです。

また、スクリーンに映る内容にも注目してください。板書はしていますか?板書は必須ですが、それが単に教室の黒板やホワイトボードを写しているだけでは、オンライン学習の効果は薄いです。どういったコンテンツがいいかの詳細も、後ほどお話しますのでもう少しお待ち下さいね。

2) 集団効果・競争効果育成システムの有無  
さて2つ目の判断要素は、集団効果・競争効果育成システムがくみこまれているか否かです。言うまでもなく塾が果たす大きな役割の一つに、子供同士が競い合える環境の提供があります。同じ目標を持つ生徒同士がともに学び、切磋琢磨して伸びていく。それは塾ならではのメリットといえるでしょう。  

こうした要素は実は、以下の3つを実施することでオンラインでも十分実現できます。 

① 集団&競争効果を目的とした機会の存在
② 適正人数の確保
③ クラスメンバーの選定  

一つずつ確認していきましょう。

① 集団&競争効果を目的とした機会の存在    
動画のみの授業しかないという塾はさすがに存在しないと思いますが、単に先生にマンツーマンで質問できるだけでなく、他の生徒と一緒に解説を受けたり、話し合いをしたりする時間があるかどうかは、生徒のモチベーション維持に極めて重要です。  

そもそも集団効果や競争効果は、他の生徒の様子を見ることを通し、子ども自身が自分に必要なことを感じたり考えたりする機会を持てることから生まれます。この観点から考えると、双方向ライブ授業はもちろんのこと、グループで受けられる公開質問室や、進路について相談する公開相談室なども有効です。

② 適正人数の確保  
①で示したような機会があったとしても、その人数が適正でなければ効果はあまり期待できません。それはオンラインという特殊な環境にその理由があります。 オンライン学習はたとえ集団で実施していても、意識的には先生と一対一という感覚を強く感じるものです。特に先生が長く話している場合は、この傾向が強くなります。 

その特徴から考えると、こうした集団効果や競争効果を最大化するには、生徒それぞれが先生からきちんと目が配られていてかつ、生徒自身が周囲から刺激が得られる人数である必要があります。これが適正人数の基準となります。  
では何人がいいのかと言うと、正直これといった正解は出せません。それは先生の管理能力やクラス内の生徒のレベルや集中力に左右されるからです。ただ一般的にいって、5名未満では周囲からの刺激が少なすぎますし、10名を大きく超えてくると、先生が細かく管理するのは難しくなります。この観点からは、5−10名程度が合理的だと私は考えています。  

③ クラスメンバーの選定  
②で述べたように、5−10名程度の人数にするとなると、メンバー選定も非常に重要となります。それはもちろんレベルの適正化という観点もありますが、同時に生徒の性格も考慮する必要があります。  

例えばクラス内のほとんどがあまり自己主張せず、受け身の姿勢で授業を受ける生徒ばかりだと、競争効果はあまり期待できませんね。逆になんでも主張する生徒ばかりでは、授業が混乱してまとまりがつきにくくなります。  

オンライン環境ではこうした細やかな配慮が必要となりますが、逆にこれは塾側が生徒のことをより深く考えるいい機会になると私は思います。そしてそれは必ず合格実績にも反映されますので、生徒だけでなく塾側にとってもメリットがあることでしょう。

3) オンラインに習熟した講師の有無  
3つ目の判断基準は、言うまでもなく講師の質についてです。ここで気をつけて欲しいのは、これまで対面授業でカリスマと言われてきた講師が、オンラインでも同様の効果を出せるとは限らないと言うことです。  

例えば授業内で生徒に発言させる時を考えてみましょう。対面なら数名が同時に発言しても問題ありませんが、オンラインでは音声が混じって同時発言は聞き取れないことが起こります。  

また授業での演習時に机間巡視で生徒にアドバイスをしていた場合、オンラインでは同様のことはできません。その場合はチャット機能や他のオンライン共有システムを使うなりして対応が必要になりますが、こうした機能はトレーニングを積んでいないとスムーズには使いこなせません。  

さらに同じ講義をしていても、動画や画像をどう使うのかも講師のスキルによってその効果が大きく異なります。また板書一つとっても、大きな黒板に書くのとオンラインホワイトボードを使うのでは勝手が違います。こうした内容はオンライン学習の経験を積んでこそ向上していくものなので、講師のオンライン指導経験はしっかり確認したいものです。

4) フォローアップサポートの充実度  
4つ目のチェックポイントは、フォローアップサービスの充実度です。中学受験は親子ともに大きなプレッシャーがかかる長期戦ですので、塾のフォローアップは大きなサポートになります。  

従来の塾のサポートとしては、親向けには合格報告会・学校情報セミナー・親子面談・サポート電話などがあり、生徒向けには質問室・先生との面談・カウンセリングなどがありました。  
こうしたサポートは、全てオンラインでも可能ですが、それが単なるチャットや電話、動画で終わらず、しっかりお互い顔が見えるライブ形式になっているかをしっかり確認しましょう。  

特に子供に対する質問対応やカウンセリングは、学習意欲やメンタルの維持に極めて重要な要素です。こうしたものは顔を付き合わせてこそ効果が最大化するものなので、本当に生徒を大切に思っていれば、こうしたサポートは必然的に充実するでしょう。  

いかがでしたでしょうか。オンライン学習の塾を選ぶ視点、だいたい理解していただけたでしょうか。今回ご紹介したものは、数ある基準の中でもどうしても外せない、必須のものを厳選してお伝えしました。これを基準にして、お子さんの性格や状況に合わせて、最適な環境を探してみて下さい。  

続いてはこれまでお話しした授業コンテンツの具体的な内容のチェック法について、さらに掘り下げてお話ししていきたいと思います。

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