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【第11回】トライアルでチェック

さてここからは、実際にトライアルで先生の授業を見る時、具体的にどのようにチェックしていけばいいかについてお話ししましょう。チェックするポイントは以下の7つです。

1)パソコン操作指示のスムーズさをチェック
2)授業で使うシステムをチェック
3)先生のコントロール力をチェック
4)説明の明快さをチェック
5)子供との会話量をチェック
6)子供の集中力と笑顔の量をチェック
7)現状把握力と提案力をチェック  

それでは順に一つ一つ確認していきましょう。ここでは前項の内容を前提にし、具体的にどこを見たらいいのか、その視点にフォーカスして説明します。

1) パソコン操作指示のスムーズさをチェック  
まずは先生のパソコン操作のスムーズさのチェックです。1番簡単なのは、子供が端末操作に困っているとき、どのくらい簡単にかつ正確に説明できるかに注目することです。  

例えば子供が見つけたホームページを先生とシェアして欲しいのに、その方法を子供が分からない時などです。こんな時先生がどんな説明をするのか、注意して見てみましょう。システムによっては画面共有が可能ですし、ホームページのURLをコピーしてチャット画面に貼ることもできます。こんな時、先生はどんな風に操作を説明するでしょうか。  

一番ダメなパターンはこんな感じです。 「画面タブの中に、「画面の共有」があるから、そこをクリックすればいいんだよ。」  パソコンが苦手な方ならすぐにわかると思いますが、たったこれだけの指示の中に、どれだけの「宇宙語」が入っているでしょうか。

 「画面タブ」「画面共有」「クリック」。この全ての用語の意味が正しく分からなければ、先生の言った指示は生徒に全く届きません。でももしこんな時、次のように説明してくれたらどうでしょう。

「まず開けている画面の下を見てご覧。そこに「画面の共有」って書いてあるところが見つかるかな?それから画面上のどこかに、小さな矢印があるのわかるかい?見つかったらマウスを動かして、その矢印をさっき見つけた画面共有って書いてあるところの上に動かそう。それができたら、マウスの上にある2つのボタンのうち左側のボタンを押してみよう。新しい画面が出てきたよね。なんて書いてある?多分『画面を共有を許可しますか? はい/いいえ』て出てない?出てたら、マウスで矢印を「はい」の上に動かして、またマウスの左のボタンを押してみよう。ほら、無事できた!思ったより簡単でしょう?」  

こんな風にステップバイステップで説明して貰えば、分かりやすいですよね。子供は理解力が高いので、こうして説明すればすぐに吸収して覚えていきます。ただこの初期段階での説明が雑だと、子供が操作を難しく感じてしまい、レッスン自体にも支障をきたすことがあります。  

そこでしっかり見て欲しいのは、「いかに専門用語を使わず、丁寧にわかりやすく説明するかです。もちろん子供のパソコンスキルにもよりますが、子供がどれだけ先生の指示にしたがってスムーズに操作できているかに注意してみれば簡単に見分けられます。  また一つの方法がうまくいかなかった時、別のより簡単な方法を示せるかどうかにも是非注目してみましょう。このオプションをどれだけ持っているかも、操作指示力の一つの指針です。

2) 授業で使うシステムをチェック  
2つ目のチェックポイントは、オンラインレッスン中にどんなシステムを使っているかです。まず1番先に避けてほしいのは、単にホワイトボードや資料だけを示して、対面授業のように淡々と進めているパターンです。これではオンラインで授業を受ける効果は半減します。理由は既にお話しした通り、子供の集中力の減退の恐れが大きいからです。  

次に見てほしいのは、画像の有効活用です。オンラインレッスンの大きな利点は、テキストを使った対面の授業と比べ、様々な視覚効果を有効に利用できるのが大きなアドバンテージです。例えば授業中に、子供が分からない言葉や知識が出てきた時、言葉で説明するにとどまらず、実際の画像を見せることで、その記憶の定着率は格段に上がります。特に言葉で説明が難しいものについては、百聞は一見に如かずの言葉通り、画像を見せるだけで瞬時に理解させることも可能で、大幅な時間の節約にもなります。また、動画の活用もしっかりチェックして下さい。動画は画像以上に視覚効果が高いので、オンラインレッスンには欠かせない要素です。  

このチェックポイントで注目して欲しいのは、いつどんな時に、どのように画像や動画を使っているかです。当然のことですが、いかに視覚効果の高い画像や動画でも、使い過ぎれば子供も慣れてしまい、その効果は半減します。ベースはしっかりホワイトボードやテキストを使って説明し、子供の理解力が不十分であったり、より深い理解を促すために、子供の集中力が落ちてきた頃合いを見計らってうまく使用できているかをチェックするといいでしょう。

3) 先生のコントロール力をチェック  
3つ目のポイントは、授業中に先生がどれだけうまく子供をコンロールできているかです。コントロールというといいイメージを守られない方もいるかもしれませんが、ここでは子供をいかに授業に引きつけ、効率的に学習させているかという意味だとご理解ください。  
オンライン授業の限界として、先生と生徒の物理的な距離が変えられないということが挙げられます。対面授業では生徒と少し距離を置いて見守ったり、逆に近づいて説明するなどの工夫をすると、子供の学習効率は向上しやすくなります。しかしオンラインではこうしたことはできないので、どうしても口頭での指示を工夫する以外に方法はありません。  

そこで是非チェックしていただきたいのは、先生の声の調子や抑揚、緩急といった工夫です。単調なリズムで淡々と話しているだけでは、子供をうまく学習へ誘導するのは難しいものです。一方で子供が疲れてきたら、話すペースを変えたり、声の大きさを変えたりということを意図的に行えば、子供の気分も変わって、学習効率の向上につながるでしょう。こうしたちょっとした工夫も、スクリーン越しで授業を行うオンラインレッスンでは、とても重要なチェックポイントです。

4) 説明の明快さをチェック  
4つ目は、先生の説明の明確さです。これはここまでにすでにお話ししたシステムの活用や話し方の工夫とは別で、内容説明の明快さそのもののことです。  

いうまでもありませんが、先生にとって一番重要なスキルは学習内容の説明能力です。進出事項についてわかりやすく説明し、理解させる力がなければ、そもそもプロとして失格です。しかし仮に対面では説明がうまいとされている先生でも、オンラインになるとぱっとしないということは決して稀ではありません。  

そこでレッスン時にはぜひ、先生が一回で子供に内容を理解させられているかをチェックしていただきたいのです。具体的には、説明の明快さ、具体例の利用、子供が理解できなかった場合の言い換え能力などをチェックしましょう。一番簡単なのは、説明後の子供も演習時に、どのくらいの正答率かで簡単に調べられます。説明を聞いても問題がうまく解けていないようなら、先生の節米がうまく機能していない可能性があるでしょう。  

5) 子供との会話量をチェック  
5つ目は、子供との会話量のチェックです。ただ会話といってももちろん、授業に関係がない雑談がたくさんあるかではありません。授業に関連した内容で、子供にどれくらい話させているかのチェックです。  

少し前から日本でも、アクティブラーニングという学習スタイルが注目され始めました。受験ではそんなシステムは不要と思う方もいるかもしれませんが、アウトプットの有効活用は、インプットが重要な受験でも非常に効果を発揮します。  

そのアウトプットには、まず授業内で先生がうまく発問し、子供の答えや考え方を引き出す必要があります。先生の問いに子供が答え、それに対して先生がまた問いを発し、子供により深い思考を求める。この繰り返しの中で、子供の知識はもちろんのこと、思考力も鍛えられていくのです。この学習スタイルは、受け身になりがちなオンライン学習をより自主的なものに変え、子供の学習効率向上に大きく貢献します。  

ここでチェックして欲しいのは、先生が一方的に話している時間が多すぎないかということ。子供が学習に関する内容を話す時間が多ければ、先生がうまく問いを与えている証拠です。私も日本で最上位クラスを担当していたときにいつも心掛けていたのは、いかに子供達自身で答えを出させるか。先生がどんどん説明するだけの授業であれば、講義スキルを極めた先生の動画授業の方がはるかに効率的です。

6) 子供の集中力と笑顔の量をチェック  
6つ目のチェックポイントは、子供の集中力と笑顔の量です。集中力はともかく笑顔の量ってどういう事?という声が聞こえてきそうですが、これからきちんと説明しますのでご安心ください。

まずは集中力です。子供が集中しているかどうかは、簡単に見分けられそうで実は案外難しいもの。一見集中しているようでも頭の中で別のことを考えていたり、落ち着かない様子でも実は必死に考えていたりと、見た目と集中力は比例しないことも少なくありません。こんなとき注目して欲しいのが、先生との会話のスムーズさです。先生からの質問に対して、スムーズに対応できているか。また分からないところを質問できているか。こうした点を見れば、比較的簡単に集中力はわかります。  

また子供の笑顔の量も、集中力同様にしっかりチェックして欲しい点です。もちろん笑顔と言っても、雑談中のものではありませんし、先生の冗談に大笑いする顔でもありません。学習していて理解できた時に見せる、顔がパッと明るくなるような笑顔です。子供はもともと学ぶことが大好きなもの。だから知らなかったことを知ったり、できなかった問題ができたりすると、その喜びは顔に現れます。子供がレッスン中にそういう笑顔をどのくらい浮かべているかは、そのレッスンの価値そのものと言っていいでしょう。  

これは対面レッスンでももちろん重要ですが、オンラインレッスンでは子供の集中力を図るバロメーターとしても機能するので、とても大切な要素です。是非注意してチェックしてみてください。

7) 現状把握力と提案力をチェック  
最後の7つ目となるチェックポイントは、先生の現状把握力と提案力です。言うまでもありませんが、家庭教師やプライベートレッスンは、集団授業と比べてより細やかな生徒の状況把握が可能です。また個別に学習プランを立てられることも大きなメリットですね。しかし一方で塾のようなカリキュラムがないので、先生の提案力が授業の質、ひいては合否にも大きな影響を及ぼします。しかもオンラインレッスンでは画面越しになるので、先生のこうしたスキルの有無をよりしっかりチェックする必要があるのです。  

ではまず現状把握力のチェック法から見ていきましょう。先生がどの程度子供を把握できているかは、子供の長所・短所や性格をどの程度具体的に指摘できるかで、比較的容易にチェックできます。授業の前後などに先生と話す時間をとって、子供のことについて色々と話してみましょう。この時、こちらからはあまり子供の情報を与えず、逆に先生に課題や達成度、授業中の集中力などについて聞いてみるといいです。もちろん授業中の様子を、後ろからチェックすることは忘れずに。この際、親が気づいていることしか指摘できないようだと、プロの先生のスキルとしては不十分です。逆に親の知らない子供の一面を具体的に教えてくれるようなら、信頼できる先生と言えるでしょう。  また提案力については、現状と合格のギャップをしっかり指摘できるか、そして現実をしっかり直視し、正直なプランを親に提示するかをチェックしましょう。まず親の言うことを何でも聞く先生は、あまりお勧めしません。必要なことは、親が気づかない視点を与えてくれることです。またプロである以上、無理なものは無理と正直に伝えることも大切です。現状と目標のギャップの大きさが、残された時間と子供の学力では越えられないものであれば、次善策をしっかり提示できてこそプロです。これは対面と比べるとどうしても距離を感じやすいオンラインでは、非常に重要なポイントです。是非しっかりチェックしてくださいね。


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