囀る鳥は羽ばたかない 4巻【気づかれたかもしれない】

2022年01月31日

※ここ、某所での書き出しが
 あまりにもその日の日記だったので
 こちらでは割愛しました。
 や、ホントにどうでもいい内容だったので。

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真誠会若頭の矢代は、
男好きの淫乱と噂されているが、
部下とは関係を持たないと決めていた。
しかし、矢代の命が狙われる抗争のなか、
付き人兼用心棒の百目鬼との関係が、
大きく変わりつつあった。
自分の気持ちを自覚し、
矢代を守ることを決意した百目鬼。
守られる立場から、守る立場に──。
欲望を向けられることのない存在で
あったはずの百目鬼に、
矢代は別の感情を持つようになる。
そんなとき、矢代はある事実に気づき……。

(作品紹介)

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「囀る鳥は羽ばたかない」4巻の私的ネタバレ覚書。

周到に準備した平田の罠にかかり
命を狙われる矢代、その矢代をかばって消されそうな竜崎。
平田は手を汚さず三角にとりつく。
それに三角は気付いてる。

良くも悪くも周囲の人々の心をとらえて狂わせる矢代の
カリスマ性が事態に拍車をかける。

※毎度のお約束:
 以下がっつりネタバレ含みます。
 登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
 あくまで個人の見解です。

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3巻の終わりごろ、煩悶する百目鬼のモノローグ

矢代を守りたい、
大事にしたい
傷つけたくない

なのに、汚したい


病院で影山に言ったことでもなんとなくわかるけど
百目鬼は矢代を崇拝してた。
「優しくて強くて綺麗な人」
神様扱いだよね。

理性と、周囲からさんざん言い聞かされた戒めが
恋心を自覚した後も隠し続けた。
ただ、ホテルで矢代を抑えつけて口でしたときあらためて気付いてしまった。

綺麗な矢代を汚してしまいたい欲望、
欲望に抑制が効かないこと、そして
自分が矢代より力が強いこと。


矢代が神様じゃないこと。

一方の矢代も
百目鬼にされたことが頭から離れない。
抑えつけられ尺られたこと。

百目鬼に目を向ければ百目鬼もこちらを見ている。
合わせた目を背けながら矢代の家に向かう3人。

矢代が隠し持つ拳銃を百目鬼が取りに行った。
拳銃に弾を装着し、ズボンの後ろに挿す一連の動作が様になってる。
拳銃が隠された引き出しには、大人のおもちゃがいっぱい!
その中にある異質なものに気づく元警官・百目鬼。

それは影山のコンタクトケース

思わず手に取り裏返すとそこには影山のイニシャル。
それに気づいた瞬間矢代から電話が来て、
勢いでコンタクトケースをポケットにしまう百目鬼。

ていうかあんな大事なものをなぜ大人のおもちゃと同じ引き出しにw

そのころ七原は竜崎を探し当て、
華麗に飛び掛かり竜崎を詰問していた。
平田が矢代を、親が子を殺そうとしていることが信じられない七原。
でも竜崎は、平田が矢代を消したがっていたのは10年以上前からと言う。

七原に問い詰められて竜崎が本音を…ぐっとこらえて
準本音をぶちまける。

俺はあいつを昔から知っている
19のガキで、便所扱いされていたころから
だから知ってる、
あいつがヤクザに向いてるわけがない
お前らの目はどこについてやがんだ


本音を隠しても七原にはなんとなく伝わったかな。
竜崎は七原に矢代のもとに戻れと言い
七原も竜崎を残して立ち去った(なんか暴力はふるったらしい

竜崎の潜伏先から出た七原は矢代に電話して事の次第を話す。
平田が黒幕と知ってたと軽く言う矢代に
そんなことあっちゃならないと食い下がる七原、
平田の手先二人組に拉致られる。

ここで七原の過去が。

10年前、七原20歳。元ボクサー。
三角が組長、平田が若頭のころの真誠会の組員とつるんでた。
その組員が飼ってる名簿屋に手を出したと矢代に突っかかってた時に
七原は初めて矢代と会う。
その美しさにぼんやりと見惚れる七原。矢代おそるべしw
直前に矢代はホモと聞かされていた七原は
矢代に見つめられ、おっ俺に一目ぼれ!?と勘違いしたところに

「お前人見る目ないね」

とバッサリ指摘され、逆上。
いいように捨てられると言われさらに逆上しているところに
電話から戻ってきた組員に誘われ、
そして…いいように使われて捨てられた。

助けを拒否したにもかかわらず助けてくれた矢代に
七原は側に置いてくれと頭を下げ
ぼっこぼこにされても頭を下げ続け
とりあえず運転手として側に置かれることに。

それから10年。
七原は真誠会と盃を交わし、ずっと矢代のそばにいる。
元ボクサーなので腕っぷしは間違いない。相手の拳も蹴りも避けられる。
でも矢代の蹴りは避けずに受ける。10年前からずっと。

七原は矢代を崇拝まではしていない、恋情ももたない、
ただ矢代に付き従う。
百目鬼とは違う感情、でもわからないでもない。

七原を探しに来た3人は
刑事から聞いた竜崎の潜伏先付近で七原の携帯を見つける。
百目鬼に刑事を探させ七原のことを聞き出すように指示し
矢代は杉本と竜崎のもとへ。

矢代に煽られまくって逆上する竜崎、
自分のことじゃなく七原のことで来たと知りスンっとなるw
七原を拉致ったのが平田の子飼いの「掃除屋」と呼ばれるふたりで
矢代に差し向けた殺し屋を殺したのもそのふたりだと。

竜崎のもとに見張りとして杉本を残して
「お前と俺 どっちが長生きするだろうな」
竜崎に言い残し
七原を拉致った車のナンバーと現在地を聞き出した百目鬼と掃除屋の車を追う矢代。

海沿いの倉庫地域で発見、カーチェイス。
急ハンドルで倒れた矢代が「カーチェイスみたい」って言ったけど
まさにそれ!
追いつめて車を止めさせ百目鬼が車内に七原がいないことを報告、
二人組のひとり・甘栗食いまくりの坊主に詰問して
ナイフで左頬をざっくり切られる
甘栗は逃げるけど、百目鬼は逃がさない。絶対にだ。
腕を言葉通りバキッと折って車に連れ戻ってくると
矢代が木刀抱えて待ってた。似合うわー木刀。
連れのオールバックが気絶していてなにしたか見当つくよね。

七原がいるところに案内させようと甘栗を矢代の車に乗せようとしていた百目鬼を
後ろからオールバックが銃撃。
ボコられて片目がつぶれてて焦点が合わず、弾は車に当たったけど
それを見た矢代が思わず固まる。

オールバックが矢代に向かって走り出し、再び撃ったところに
倉庫に縛られて監禁されてた七原登場、矢代をかばって肩を撃たれた。
拳銃が弾切れになったオールバックを百目鬼がまたボコる。
(ボコってボコられてばかりの4巻

監禁から逃げ出して助けてくれた七原の頼み(尺八)は聞かず
矢代は掃除屋のふたりをスカウト。
甘栗がなにやら同調して合意。
好きなものより嫌いなもの、そしてそれは「退屈」

オールバック(バカ)(by甘栗)は矢代のSっぷりにおびえ
矢代の下につくことを嫌がったけど
甘栗が主導権握ってるのね。
下につくのは誰でもいい。平田なんか裏切ってもいい。
退屈しなそうなほうがいい。とても怖い考え方。

七原は拉致られた車内で掃除屋のふたりの会話から平田の計画をすべて知った。
平田の黒い構想には三和会・豪多組もかかわっていること。
松原組と真誠会が壊れたところで平田は道心会を抜け豪多と新しい組を作る。
道心会は今、会長の容態も悪く跡目の問題もあり
三角が事をわかっていても大きく動けないと踏んでいる。
そういうからくり。(ざっくりまとめ

ヤクザは盃かわして家族になって、家を守っていくと思っていた七原、
所詮は疑似家族だからと矢代に言われても納得できない。
子を殺す親があってはならないと七原は言うけど
七原って…
グレてチンピラになってヤクザになって、でも
親には愛されて育ったのかな?もしくはいなかった?
親が子を殺すわけがない、ひどい目に遭わせるわけがないと言い続けてるけど

その七原の横にいるのは
義理の父親に性的虐待され実の母親にネグレクトされた男で
前で運転してるのは義理の妹を性的虐待した実の父親を半殺しにした男。

矢代は七原を否定しない、でも
子を裏切る親も親を裏切る子もいる
単なる巡り合わせの問題で、それは誰のせいでもないと穏やかに話す。

黙って聞いてる百目鬼の表情もせつない。

撃たれた七原を連れて行ったのは当然のように影山医院
百目鬼の頬の傷も心配する影山やさしい。
ていうか縫ったらよかったのにね百目鬼!

七原を病院に置いて帰るふたり、矢代が
百目鬼の傷からさっき百目鬼が撃たれかけたことを思い出す。
ぼんやり立ち尽くす矢代を心配する百目鬼の傷をなで、そのまま
腕を取って車の後部席に連れ込む。

目を見て、傷を見て、その傷を舐めあげる。
一連の動作が妙に扇情的でセクシー。
ついさっき振るい振るわれた暴力を思い出しつつ興奮していく矢代。
片手でもたもたとベルトを外しているとその手を止め
百目鬼がめずらしく感情を顔に出し
ベルトを外し、そして
「自分の意志で」口に含んだ。

丁寧になめ、じっくり口でする百目鬼をたしなめ
早く終わらせろと言う矢代に上着をかけてモノを隠し
突然車を動かしだした百目鬼。
影山医院から離れ、人気のない場所に移動して再開。

病院・ホテル・そして車でと
毎回ぐいぐいスキルを上げていく百目鬼のフェラ。
じっくりねぶる百目鬼にしつこい、丁寧にやるなと言った矢代の叱咤が今回の引き金。
矢代の両脚を高く上げ、露になった穴を舌で愛撫し始める。同時に手で竿をしごく。

これ以上したら歯止めが利かなくなる、と
頭でわかっていながら止められない。
矢代は矢代でその攻めに動転してあっという間に達してしまう。

百目鬼を車外に出し、ひとりになった車内で百目鬼の上着を見つめる。
見たことない百目鬼の雄の顔、済ませるためだけじゃない愛撫。

そのころ三角のもとに矢代とその周辺についての報告が。
平田の掃除屋とは違って妙に有能そうなふたり、
矢代の居場所を探し出し、尾行し、百目鬼との動向まで報告し
三角に怒られるw
鯨(いらん事報告する坊主)と鮫(こっちのオールバックは切れ者そう)のふたり。

三角のほうでは平田と豪多の関係ももう暴いてた。こええなヤクザって!
三角は平田が、自分が大事にしている矢代を殺そうとする気持ちがわからない。
平田は三角の一番になりたかった。なれないのならいっそ。
三角の秘書にして右腕の天羽はその気持ちがちょっとわかる。

天羽は三角の奥さんの連れ子。
でも「息子」になるより「右腕」になることを選んだのかな。
天羽も三角という男に憧れていた。そして側にいる。

外に出された百目鬼はうなだれて逡巡しつつ、
自分の気持ちをはっきりと自覚していた。
矢代を自分のものにしたいという強い独占欲
百目鬼って今まで自分から人を好きになったことってないのかな?
中1の時の保健医は論外としても、
高校時代につきあってた女子も相手から告白されてなんとなくつきあってた?
ただふつーのおつきあいをした経験者だけに
矢代よりは恋愛偏差値ちょい高めだけど(矢代は底辺
ただ、百目鬼は矢代の気持ちには気づいていない。一方通行だと思ってる。
いやホントに、この時点で気づいてるのって久我だけだよ!
矢代本人も気づいてないしね!?百目鬼にわかるわけないね!?

竜崎と話していて竜崎の矢代への想いに気づいた杉本と竜崎が
わーわー言ってるところに平田の子分が。
竜崎の女を拉致ってひどいことしてる動画を見せ、
杉本をボコって(またボコる)竜崎を拉致。

眠っていた矢代が目覚めると古くて質素なアパートにいた。
嫌な既視感。20年前の記憶。昔住んでいたアパートと似てる。

ついに時をかけちゃった?俺

ついにってwww

杉本からの電話で目が覚めた矢代は鎮痛剤が切れて痛みでふらふら。
その時浴室からシャワー浴びてた百目鬼が出てくる。
当然全裸ですね。ギリシャ彫刻のようだよその裸体。

百目鬼が車に薬を取りに行ってる隙に矢代は掃除屋改め甘栗たちに電話で
なにやら指令を出す。

布団以外なにもない百目鬼の部屋であたためてないレトルトおかゆを食べながら
部屋を引き払おうと思ってると言う百目鬼に
引き払うなとやんわり止める矢代。

百目鬼はまだ組員じゃない。小指を落としても極道ではない。
百目鬼の膝枕(前も言ったけどそれは股枕)でくつろぎながら
矢代は百目鬼を可愛いと言う。
お前が可愛い。でも怖い。
可愛いのはわかる。わかりやすすぎる。怖いとは?

そして久々に百目鬼をシャクる矢代。
シャクられて百目鬼の百目鬼は…とても立派にそそり立った。

兆候は矢代の部屋で自分の初体験を聞きながら矢代がしてるのを見せられた時。
はっきり勃ったのは影山の病院で口でした時。
バレないようにと思っていた。でも。

勃たないことが矢代のそばにいる唯一の条件と思っていた。
謝る百目鬼、よかったじゃん、我慢させてて悪かったと謝る矢代、

そして百目鬼にとっての最終通告、

せっかくだしセックスするか

******

バレたら切られると思って隠していた感情が
車内でのときにがっつり顔に出て気づかれた。
矢代は可愛い百目鬼を切り捨てるつもりなのか。
セックスするのか。しないのか。すげー引き!

平田のこともどんどん大変なことになり
予断を許さない中でのこれ。
矢代の命は、ふたりの関係は。

******

4巻は小冊子がついてた。電子だとまとまってて便利。
百目鬼と矢代の出会い、百目鬼視点。

仕送りのための金稼ぎにと誘われて入った会社は闇金。
辞めようと思っていたそのとき百目鬼は矢代に出会ってしまった。

綺麗な人だと思った

それがはじまり。

闇金からヤクザの事務所に。
百目鬼自身もまさかいきなり矢代に気に入られ、運転手兼用心棒として
側にいられるようになるとは思わなかったのでは。
もっと言うといきなりシャクられるとは夢にもw

とはいえなにかにつけ、辞めたい時は言えと言う矢代。
側にいられるならなんでもすると言う百目鬼。
警官のコスプレさせて、そういうゲイビデオに出ろと言いながら
頭がやれと言うならやる、と言われればやんなくていいと言う矢代かわいい。

矢代に影山のことを指摘して寝室を出ていかれ
リビングで寝ている矢代に毛布を掛け
側にいるでもなく廊下に座り込んで眠る百目鬼。
矢代のことを知りたい、少し知ればもっと知りたい。
自分には何もない。捨てたい自分ならある。
妹のことを気づけなかった自分、怒りに任せて父親に暴力をふるった自分。
そして感情すら。でも捨てられない。現に感情は大きく動いた。
もう戻れない。以前の自分には。戻らないと決めた。
戻らずに矢代のそばにいると。そのためならヤクザにもなると。

でも捨てたい自分は矢代にもある。ていうか矢代は捨てるべきだった。
矢代は捨てずに覆い隠した。捨てたい自分を塗りつぶすために自傷行為に走った。
ふたりは似てる。似てるけど違う方向に向かった。

百目鬼が警官のころ、矢代がスリーピースじゃなかったころ。
通りすがりにふたりはすでに出会ってた。
お互い覚えてはいないけれど。

まあなんていうか…運命ってやつなのかしらね。ふたりの出会い。
っていうお話。

******

ヤクザパートは甘栗が言ってた
「偉くなるのってメンドクセーなぁ」がすべて。
傭兵となって渡り歩いてる甘栗たちには理解できないよね。
野心のない矢代、断る矢代を引きずり上げようとする三角、双方に怒り爆発の平田。
矢代に一生ついていくと誓う七原、矢代を助けたかった竜崎。
(あー、竜崎は矢代にまあまあな怪我負わせて足洗わせる気もあったのかな?)
(なーんてね)

表紙も毎回意味深なんだけど、4巻は
風吹く麦畑で少し離れて向かい合う矢代と百目鬼。
百目鬼はまっすぐ矢代を見つめてる。
矢代は視線をそらしてる。意味深。

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