囀る鳥は羽ばたかない 7巻【変わる、変われる、変わらない】

2022年02月05日

私がこの物語に、矢代と百目鬼に出逢ったのが
6巻の頃でした。
もっと早く出逢っていれば。
でも出逢ってよかった。

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平田との抗争終結から四年。
矢代は組を離れ、
闇カジノの金主として稼いでいる。
カジノには時折、三角が訪れ、
そろそろ真誠会に
戻るようせっつかれていた。
一方、矢代から捨てられた百目鬼は、
真誠会と良好な関係を結ぶ
三和会系桜一家の組長・綱川の下で
ヤクザになっていた。

四年間、一度も会うことのなかった
矢代と百目鬼。
けれど、ある事件をきっかけに再会して!?
止まっていた時間がついに動きだす! !

(作品紹介)

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「囀る鳥は羽ばたかない」7巻の私的ネタバレ覚書。

あれから4年。
「4年」の歳月を長過ぎるととらえるか、あっという間か。
ふたりのそれまで、そして今。
それぞれの環境、想いは。

※毎度のお約束:
 以下がっつりネタバレ含みます。
 登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
 あくまで個人の見解です。

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まずは矢代。

真誠会もなくなり、今は闇カジノのオーナー。
側には七原。杉本はなにやらお金を作ってる。株かな?
そのふたりが矢代の元にいるってだけでちょっと安心。

40歳になった矢代はほんのり渋い面立ちになったものの
老けてはいない。妖艶さは増すばかり。

三角を挑発して押し倒されるものの、その先には進まない。
キスすら拒む矢代。

三角は矢代を手離さない。そろそろ組を持てとせっつく。
組を持てばその後の人生は確定。
矢代はのらりくらりとかわし続けてる。

平田に受けた凄惨な暴行で、
矢代の右目は視力を失っていた。
治療で治るものなのか、もうダメなのか、精神的なものか。

矢代はあの時、死んでもいいと思っていた。
死ぬかもしれないと思ったから百目鬼を遠ざけたわけで。
でも死ななかった。百目鬼が助けて生かした。

以前の刑事とは切れ、今繋がっている刑事が井波
矢代と百目鬼に暴言を吐き、乱暴なプレイで矢代を傷つけ、
あまつさえ平田側について証拠と証言を捏造したあの井波。
そんな男と、なぜ??

「今から来い、金と身体をもって」
「お前ホント好きだよなあ俺と遊ぶの」

しょっぴくぞ、と言う井波に矢代が
脅しても無理、ネタなら俺に分があると返す。

矢代が時折見る夢。
夜の街並みを歩いていると、後ろから百目鬼に腕をつかまれる。
何か声をかける百目鬼。
振り払って逃げる矢代。逃げて逃げて立ち止まり、
振り返ると誰もいない。誰も…百目鬼も、街行く人々も、街並みも、
すべて消えてひとり砂漠のようなところに立ち尽くす。

矢代はもう百目鬼の顔を思い出せない。
右目を覆うのは病院で百目鬼を最後に見た時からの癖。
見える左目に焼き付けたはずの姿。

あの時諦めたものが残っている。
夢に何度も見るほどに。

矢代の暗黒時代に関わったことのある元松原組の城戸という男の
借金返済のカタに珍しいオウムを預かっている。
その城戸がひき逃げ事件を起こして逃走中。
矢代と七原は城戸を探して
府中刑務所(竜崎生きてた!)・ペットショップ(オウム関連)・
弟経営の居酒屋へ。


あれからの百目鬼。

居場所を極道と決めて三角に頭を下げるも門前払い。
どうやって調達したのか2億!を手土産にするも追い払われる。
矢代のいる世界にいたい、矢代の側に戻りたい、ただそれだけ。
きつい口調で諫める天羽には、その気持ちが痛いほどわかる。

天羽が百目鬼を連れて行ったのは
三和会の幹部、桜一家の組長・綱川
平田抗争のときに動いてくれた人。天羽と同級生だったのね!
行き場のない百目鬼はそこに預けられた。
寡黙で大柄、小指もない。
断りかけた綱川を折れさせたのは娘の仁姫

大型犬のような百目鬼に思いがけずなついた娘。
ヤクザの抗争に巻き込まれ、誘拐された仁姫を百目鬼が単身救出、
その時に額に大きな切り傷を増やしたものの組での株が爆上がり。

それでも盃はかわしてはいない。預かり扱い。
綱川は百目鬼を欲しがっているのだけれど。

百目鬼はどうやらモテまくり。
でしょうね!カッコいいもんね!!(声を大
そう、元々カッコよかった百目鬼、4年で男っぷりが
天井知らずの勢いで上がってる。
黒いスーツ、黒いシャツ、黒い皮手袋。
短い髪の分け目が4年前の矢代と同じあたりがグッとくる。

でも女はいない。あっちの処理は自分で。

節操がないので

節操がないならその辺で言い寄る女とヤルだろ、とは
綱川じゃなくても思うわな。その真意は?

綱川は天羽が、百目鬼のことを三角には秘密にしていることが気になっている。
好戦的な綱川、重戦車の百目鬼を自分のものにしたいけど
百目鬼のことも何もわからない。
以前、真誠会にいたということだけ。

桜一家が山川という男の借金回収に向かった先で
ひき逃げに遭う。運転していたのは城戸という男。
百目鬼は神谷というチンピラ風情の組員とそのふたりを探しに向かう。

城戸が元松原組と聞いて、心ざわつかせる百目鬼。
ふだん何にも動揺しない百目鬼の様子の変化を観察する神谷。

城戸に解放された山川からの情報でペットショップに、そして
城戸の弟が経営している居酒屋へ。

ペットショップで見えた、本当に追っている男の後姿。
この世界にしがみついている理由。
そして、その時が近づいているのを感じていたその夜―
城戸の弟の居酒屋で、

ふたりは4年ぶりの再会を果たす。

予感があった百目鬼、
思いもしなかった矢代。
逃げた弟を追って走り出す3人、唖然として言葉もなく立ち尽くす矢代。

頭打って忘れた設定の百目鬼の名前を呼ぶ。
忘れた男のことを詳細にボロクソ言う。

俺のこと覚えてたんですね 頭

七原のほうが「しまった!」て顔するの笑う。
さっき思い出した、というへたくそな嘘。

七原は怒り心頭、とっくに堅気に戻っていると思ってたから。
病院の屋上で百目鬼が七原に何か言ったのは
必ず戻るからそれまで頭をよろしくとかそういうことかと思ってた。
でも七原の様子をうかがうに、堅気に戻るようなこと言ってたのかな。
なのに誰よりもヤクザな身なりで百目鬼が目の前にいる。

俺がどう生きようと
何になろうと
俺のものです
俺の時間も この体も

言われて苦虫をつぶす七原、一瞬表情が固まる矢代。

神谷は綱川の命令で百目鬼の動向をうかがっていた。
動向を気にするということは、信用できてないということ。
それは裏返せば、信用したいということ。
一同は城戸の弟を引き連れて、桜一家へ。

道すがら、怒りが収まらなくて喚き散らす七原、
黙り込む矢代。

あれがお前の―上司だった男かと聞かれて
せつなげな、複雑な浮かべる百目鬼。
組員ではなかったことを言い、
忘れられても仕方ねえなと言われた百目鬼の脳裏に浮かんだのは
百目鬼の部屋での膝枕。

思い浮かべるのはそこかあ…

綱川邸はなんていうか、昔気質の和風な屋敷。

天羽が三角の奥さんの連れ子だったことをはじめて知るとか
この人ホント、人に興味ないんだなあ。
三角の組持て攻撃から逃げ回るのもそろそろ限界だと思ってる。
そして、綱川から
百目鬼のことを聞かれる。

用心棒兼運転手だったこと。
何もわからない、何も考えられないガキだったこと、
(ひどい
で、
その無鉄砲さに命を助けられることもあったけど憂いもしたこと。

それを聞いて驚く百目鬼。

自分みたいな男に従う百目鬼が不憫で捨てた。

これは…

七原も驚いていた。矢代が本心を言うなんて。
ふだんなら―4年前なら、罵倒で終わったかもしれない話。

身も心も立派な極道になって、という矢代の言葉を無表情で聞く百目鬼。

綱川が去り際に尋ねた二択。

人は変わるもの
変われるもの
どっちだと思う?

矢代はどっちかしかないなら変わるもの、と答え
綱川は人はどうせ変わらない、と答える。

じゃあ選択肢に入れとけよ、思いましたよね、私も思いました
という若頭の(むらじ)がとてもいい人っぽくてイイw
なんていうか、7巻通して見てると桜一家って
なかなかの武闘派なんだけど組員はおだやかでほのぼのしてるのよね。
もちろん有事には変わるんだろうけども。

その後城戸の件でなんやかんやあり、
行動を共にすることになり、
その夜矢代と七原は綱川邸に泊まることに。

お風呂を借りる矢代。着替えを持ってくる百目鬼。
知ってる。この物語でお風呂場は重要スポット。

浴室と脱衣所、
お互いの顔が見えない状態で話すふたり。
当たり障りのない会話で、お互いの様子をうかがう。

城戸が昔ヤッた仲であること、同じくヤッた仲の竜崎の話題、
そしてその時、矢代の携帯に井波からの着信。

百目鬼の表情がみるみる変わっていく。

変わらないんですね
今も変わらず 誰とでもするんですね

言われて言葉に詰まる矢代。
しばらく沈黙した後、絞り出した言葉は

たかが4年で
どうして変わってると思った?

浴室の入り口に立ち尽くす百目鬼にどけと言うと(そら言うよね

命令ですか
だとしたら聞きません

もうあなたの部下じゃない

変わらないなら
俺ともできますか
矢代さん

至近距離で、裸の矢代に言い放つ。
井波の名前にスイッチが入る百目鬼、
誰とでもするんですねとの言葉に様子がおかしくなる矢代。

4年後の再会が、ふたりを大きく動かしていく。

******

4年間。

百目鬼は矢代の動向を追い続けていた。
甘栗を手懐け、矢代の居場所を仕入れていた。
「捨てられた腹いせにいつか仕返しするから協力しろ」という
わかりやすい嘘八百に乗っちゃう甘栗w
仕返しとかそういうの好きそうだもんね甘栗!
(私は「嘘」と思っています。甘栗の言葉に乗っかっただけと。そう、百目鬼はふつうに嘘がつけるようになったという描写かと)

いつか逢える、きっと。そのために自分はここにいる。
自分には不向きな世界とわかってる。だから変わる努力をした。

綱川の二択で言うなら百目鬼は「人は変われる」派かな。
必死で自分を曲げ、自分を変えようとしていた。

くらべて矢代の4年間の動向はまだ不鮮明。
どうして井波とつるんでいるのか。よりによって。

百目鬼のことは心の奥底に沈めた。
でも忘れるわけがない。夢に見るということはそういうこと。
矢代にとっては突然の再会、動揺して我を忘れるほどに。

かしら と呼ばれて
もう頭じゃないと言った矢代が
連を「かしら」と呼んだ百目鬼の声に反応するのが
おもしろいけどせつない。

矢代さん、と呼ばれて複雑な表情するのもつらい。

なにかと「いいんじゃねぇの」と言うのも気になる。
よくないんだろうなあ…

神谷という男は百目鬼の2歳上、シャツの前がっつり開けた肉食男。
目端が利いて百目鬼のこともよく観察している。
七原とのやり取りはまさにザ・チンピラ、おもしろいけど
この先の鍵を握りそう。

七原と言えば
矢代の側にずっといて、多分もう18年?
矢代の内面にも気づくくらいによく見てるけど、
いまだに気が利かねえなあ!w
城戸の弟を水責めにする矢代を自分から気付いて手伝いなさいよw
百目鬼のほうが先にそばに行ってんじゃん。
そして何より、神谷よりシャツのボタン下までガバー開けてるのどうなのよ。

竜崎に会いに行くにあたって
矢代が前髪を下ろして長Tシャツ、という姿は
ヤクザっぽくなくとの理由もなくはないけど
アレよね、「あの頃の矢代」演出だよね。19歳のあの頃。
矢代を見た瞬間の竜崎の反応よww
声も出ないで立ち尽くすわ真っ白になるわw
顔が真っ赤で七原に心でツッコまれる始末。かわいいなおい。
そのうえ竜崎に会いに来たわけではなく
城戸の情報収集のために来たとか
前にもありましたね!心配してきてくれたかと思ったら
七原のために来たとかね!
繰り返されるがっかりwため息も出るわw

百目鬼が欲しい綱川が矢代に
百目鬼を捨てた経緯を聞いたとき
「泣いて縋る百目鬼を心を鬼にして捨てた」
と答えた矢代。
言い方を変えれば、
「離れたくないと言われたけど百目鬼のためを思って遠ざけた」
当時、平田の件で矢代が窮地に立っていたことを綱川は知っている。
側にいたら百目鬼の命も危ない、だから手離した。
ということに綱川は気付けたか?
もし百目鬼が矢代の元に戻ると言ったら綱川は了承するのか?

そして井波が再登場した意味。
井波はわかりやすいヒール。
平田のようなはっきりとした「敵」ではないが嫌な「悪役」といった感じだった。
それが今、矢代とつるんでいる。なぜ?

三角は今でも矢代を溺愛してる。
いつか側に置く、そのためにまず組を。
それはおいといて、

矢代は三角とのキスを間に手を挟んで拒絶した。
自分から挑発しておきながら。
頬を張られても無表情、痛がって終わってる。
天羽の「やはりやれなかったか」も意味深。

私は「矢代はあれから誰ともやってない説」を推奨してるけど
では井波とは?
身体も持って来いと言った、それは?

百目鬼に「今でも誰とでも」と言われて沈黙した意味。

4年で変わったもの。変わりたかったもの。変わらなかったもの。
百目鬼のモノローグが全くなかったことも気になる。

あ、単行本のおまけ(今回は電子にもついてた!ありがたい)
百目鬼の夢。
矢代の薄暗い夢と違って
正月観たんだね、私もそれ大好きよ!
というテレビの影響がっつり受けた内容w
百目鬼が思い描く矢代が離れる前の矢代(髪型とか)で
かわいかったりせつなかったり。
いやもう本編もなんならこんなノリでいいよもう。こういうの大好き。

表紙はノワール。黒いバックに黒い衣装の百目鬼。
昏い表情、その目が見据える先は。

******

やっと既刊語り終わった~
これでもいろいろ端折ってる。自分の文章まとめの能力のなさが悔しい。
このあと単話でネタバレ覚書つづります。

今現在47話、いろいろと進展していろいろと種明かしがありますが
その話その話、先を知らないていで書き連ねようかなと。
(ここまでもそうでしたし)

なによぞよろしくお願いいたします。

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