囀る鳥は羽ばたかない 6巻【終わりとはじまり】
2022年02月05日
私はどうも
漫画をはじめとして小説、ドラマ、映画など
物語にメンタル持ってかれがちなんですね。
だからこの「囀る」は読むとかなりキツイ。
持ってかれ方が半端ない。HPもMPもひとケタになることも。
でもやめられない、離れられない。
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これまで守り通してきた一線を、
ついに越えてしまった矢代と百目鬼。
百目鬼は矢代が
かけがえのない存在であることを、
矢代は百目鬼への感情の正体と、
自らをかたちづくる
矛盾の正体に直面する。
大切だから、離れない。
大切だから、手離す。
平田との抗争が切迫する中、
百目鬼を捨て、
ひとりでけりをつけようとする
矢代だったが……
命をかけた抗争の行方は?
矢代と百目鬼の関係は?
怒濤の新展開!!
(作品紹介)
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「囀る鳥は羽ばたかない」6巻の私的ネタバレ覚書。
6巻は囀る第1部の集大成。
四半世紀かけて作り上げた矢代の
「傷だらけの心を覆い隠す鎧」が壊れた。
傷がむき出しになり、さらに増える別の傷。
でも鎧に覆われたままでは癒すこともできない傷。
簡単に治る傷ではない、おそらく死ぬまで完治はしない。
でも癒せる術があるとしたら、それは百目鬼の愛だけだけど
その百目鬼を遠ざけた矢代。
平田との抗争も激化、追いつめられる矢代の行く先は。
※毎度のお約束:
以下がっつりネタバレ含みます。
登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
あくまで個人の見解です。
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置いて行かれた百目鬼は
残された矢代のシャツをぼんやり眺めていた。
電話で杉本にめちゃくちゃに詰られしょんぼり。
飼い主に置き去りにされ、子どもからも石投げられた大型犬のよう。
この大型犬が回想する「さっきまでの矢代」が
とんでもなくエロいんですよ。淡々と語るけど。
車を取りに来た甘栗を痛め付けてハンドルを奪う。
甘栗と百目鬼の会話からわかったこと:
甘栗と平田の出会いは刑務所
平田にはよく手紙が来てたけど読まずに捨てていた
(たぶん黒羽根の姪。ちょっとだけ交流があった)
百目鬼は…矢代に守られている
守られていることを甘栗に指摘され愕然としてたけど
指摘されなければ気づかなかった。
もしかしたらこの時点で、何を言われているかわからなかったかも。
冒頭の29話から30話は情報盛りだくさん、
次々繰り出されるヤクザパートのあれこれ。
道心会の会議で竜崎が破門、松原組が解散になった。
柳という幹部が怪しい。
矢代19歳、三角の指令で黒羽根の姪について調べていた。
(矢代と姪は同い年)
その姪の母親――黒羽根の姉は娘を引き取らなかった。
三角との話し合いが決裂、お金を受け取って去っていく女性、うつむく三角…
矢代19歳に平田の舎弟がマジ惚れまっしぐら(やがて破門に)
三和会の幹部・綱川とプライベートで会い、平田を受け入れないよう話を付ける天羽。
綱川は豪多組の組長・仲本(平田と手を組んでたヤツ)が嫌い。
鯨と鮫が矢代の元を離れる。ふたりはプロの殺し屋。
豪多組の仲本に「平田と手を切れ」との指令が下り
平田を呼びつけて金返せと詰め寄る。
仲本は豪多組が三和会直参になれなくなった話は伏せていた。
でも事務所を出たところで平田はそれを知ってしまう。(優秀な部下だな)
平田の野望の肝でもあった「豪多組が三和会の直参になる」が
消えてしまうということはもう計画は水の泡。
しかも平田には関わらないようお達しを出したのが
三角・天羽と繋がりのある綱川であることも知る。
三角に知られ、その上追い込まれた。事実上切られたも同然。
察した平田は部下を豪多の事務所に戻し、
仲本とその幹部を容赦なく射殺。
そしてその罪を矢代にかぶせる。
三角からの電話に気の抜けた対応をする矢代。
逃げる俺ねぇ笑える
私知ってる。笑えない状況で笑えると言うときは
己の危機的状況を認識してるとき。全然笑えないとき。
俺を切っちゃってくれと言う矢代、
頭の血管切れそうなほど激怒する三角。
自分を切ってシンプルに行きましょうという矢代の真意。
そんな三角の前に顔を出し、怒りの三角につらつらと嘘をつける平田のふてぶてしさ。開き直りかな。恐ろしい。
3巻で矢代に乱暴なプレイで矢代を痛めつけ百目鬼にボコられた
ゲス刑事・井波が警察側の証人となって証拠もでっち上げてる。
なんで血染めのシャツを持ち帰らなかったんだ矢代も百目鬼も~~~!
平田の嘘のほころびを三角が鋭く突いたところに
真誠会の事務所襲撃の知らせが。
手配したのは三和会側か、平田側か。
様子をうかがいに事務所に戻っていた杉本が撃たれて
病院に逃げ戻ってきた。後をつけられたかもと。
誰かに電話する矢代に七原が気付く。
追い縋る七原をボコり、置いていく。
七原怪我してるしね。矢代もだけどね!
ふらふらの七原なんて連れて行くわけがない。
でも矢代もかなりふらついてる。
車で迎えに来たのは甘栗…と思ったらなんと百目鬼。
呆然とする矢代に凶弾が。抱き寄せてかばう百目鬼、
刺客が走り去ったのを見て矢代の腕を引き
助手席にポイっと投げ入れ無言で発進。
矢代のそばから離れたくない百目鬼、
百目鬼をそばから離したい矢代。
百目鬼を部外者扱いし、またひどい言葉で否定し、傷つける。
ひどい言葉には意味がある。とにかく百目鬼を絶望させ、車から降ろしたかった。
嘘の羅列。あの身体の反応が芝居であるわけがない。
百目鬼が車を降りて出ていく。
車内に残り、ひとりタバコを薫らせる。
窓の外は雨。傘を差した母親と雨合羽を着た幼い子ども。
無言で見つめる矢代の心に雨が降る。
深く沈めた感情がふわふわと動き出す。
とか言ってるうちに
傘やら水やら買い物してしれっと戻ってきた百目鬼。
矢代の罵詈雑言に
離れる気はないと言いました、ときっぱり。
顔を蹴られても(矢代から百目鬼への暴力は初めてかな?)揺るがない。
強気な態度で側を離れない百目鬼に、矢代の身体がうずく。
影山医院の3人が心の箸休め。
七原めっちゃ矢代に暴言はいてましたけど。
先生はつきあい長い割に頭のこと全然わかってない、と
七原に指摘され驚く影山。は~(ためいき
わかってないって自覚あるじゃんねw
そしてまた言う、
矢代もフラれたからってなにも百目鬼を捨てることねぇよな
沈黙の後、杉本「え?」七原「は?」影山「ん?」
そんな噛み合わないなごやかさでほのぼのしている裏で
平田が貸金庫から財産を全部出していた。
そこに甘栗たち。拉致られる平田。
矢代と百目鬼は空港近くの倉庫街にいた。
高熱の矢代がふらつく。
タイヤを枕に寝かせたものの、百目鬼の膝枕をねだる。
罵詈雑言の後に膝枕要求!おねだり!
下心があるからと却下するものの、結局膝枕しちゃう百目鬼かわいい。
膝に頭乗せて弱ってる矢代かわいい。
百目鬼の部屋でのことを淡々と語る矢代の口を百目鬼が手で塞いで止める。
すぐハッとして手を引っ込めるけど、その咄嗟の動きに今までにない距離の近さを感じました。身体を重ねた後のふたりというか。
矢代の口を手で塞ぐなんて、ねえ。
矢代の身体を、命を心配する百目鬼に
人を好きになるのってどんな感じだ?
どんなふうに好きになるんだ?
いきなりの問いかけ。
俺じゃなくてもいい、ほかにもいたんだろ、と矢代は言うけど
前にも書いたけどたぶん、ほかにはいなかったと思うのよ。
自分から好きになったのは矢代が初めてだと思うの。
答えを拒否する百目鬼の頬の傷を覆ったテープをはがし、
俺にとってはこんな感じだ
血が滲むような痛み。
絶望して泣き崩れた過去、受け入れられないほど揺らぐ気持ち。
汚れた自分にはできないと思い込んでいる、まともな恋愛。
妹は 良かったな お前がいて
百目鬼に抱かれてからの矢代は
本音を時々口にするようになったんですよね。
深く沈めて閉じ込めた想いが浮き上がり、
壊れた鎧の隙間からこぼれる感じ。
誰も助けてくれなかった。母親すら。
百目鬼の妹は百目鬼が助けてくれた。
百目鬼はそう言われて思わず涙が込み上げる。
ずっと後悔していた。気づいてあげられなかったこと。
助けたことで妹を救えたのなら。
矢代の言葉でようやく長い罪の意識から百目鬼自身も救われた。
矢代はそんなつもりで言ったわけではないと言うけど。
矢代が誰かに連絡を取り、そのあと
百目鬼の拳銃を奪って百目鬼の左足を撃つ。
思わず跪いて足を押さえる百目鬼の額に銃口を当てる。
あなたを守るために使うと決めた命です
あなたの好きにすればいい
そう言う百目鬼の右足を撃ち、立ち去る矢代。
百目鬼は七原たちに連絡を取る…
別の倉庫に、甘栗たちが拉致った平田が縛られていた。
拘束を解かせ、甘栗たちを立ち去らせ、平田とふたりに。
甘栗たちは平田の金の延べ棒を三角に届け
天羽は鯨と鮫に甘栗たちの尾行を命じる。
跡目のこともあって事を荒立てなかった三角、ついに堪忍袋の緒が切れる。
平田を静かに挑発する矢代。
はじめのうちは余裕を見せていたものの、どんどん追い込まれていく平田。
矢代に敵うわけないんだよ、頭の出来が違い過ぎる。
浅い野望や策略なんてあっさり覆される。
死にたいわけじゃない、
でも生きたいとも思っていない
そういう矢代をパイプ椅子で殴打。
優位に立ったと思わせて、さらに挑発して追い詰める。
三角への複雑な愛憎、三角の側に立つために黒羽根の命を奪った過去。
矢代を殴打しながら自ら暴露。
その一部始終を矢代は録音しており、天羽にデータを転送。
(三角はガラケーなんですよね)
後がなくなったと察した平田は逆上、
持っていた拳銃を使わなかったことも怒りに拍車をかける。
鉄パイプで滅多打ちにされる矢代。
壊さないと あいつは言った
もうとっくに 壊れていた
壊れていることを自覚していた矢代。
死にたいとは思わなかったけど、生きていくのはつら過ぎた。
擦り切れてく
生きることは 途方もない
飛び散る血しぶき、平田が矢代の首を絞め
意識が遠のく中
ああ これで
ようやく俺は
俺を終わらせることができる
ふと、気が付くと
霞む人影。
百目鬼が平田をめちゃめちゃに殴っていた。
どうして百目鬼は意識を取り戻した矢代に気づいたんだろう。
百目鬼が一瞬気を取られた隙に平田に撃たれる。
とどめを刺そうとするも拳銃は弾切れ、その時
後ろから矢代が石で平田を滅多打ち。
倒れた百目鬼の横に跪き、頬の傷に触れ
お、まえは 俺を
飛行機の轟音が矢代の囁きをかき消す。
不死身の平田に背後から石で殴られ、
百目鬼の横に寄り添うように倒れる矢代。
矢代の録音データを持って三和会に向かう三角と天羽。
その途中で会長危篤の知らせが届く。
天羽ひとりで三和会に行き、会長逝去の話と録音データで
話をまとめる超有能・天羽。
産廃処理場の片隅。取り押さえられた平田は拘束され三角の前に。
ずっと付き従っていた幹部たちは豪多組の残党に捕らわれアスファルトに。
殺されるなら三角の手で。
そんな平田の望みを三角が叶えるわけがない。
裏切りかけた柳に「処分」を指示し、去っていく三角。
「そんなに三角さんに愛されたかったですか?」
と矢代に言われ逆上した平田。
愛されたかったのね。それは平田が毛嫌いするホモ的な意味じゃなく。
認めてほしかった。一番側にいたかった。そのためならなんでもした。
叶わなかった。
自分の姿を見てもくれなかった。
自業自得。
後日、無事に三角は道心会の会長を襲名。
平田の死亡記事は小さく新聞に。
矢代と百目鬼は
駆け付けた七原たちに救急車で運ばれ、死を免れた。
百目鬼はストレッチャーで搬送される間も矢代の安否を気にしていた。
矢代はナースにモテモテ、そらそうでしょうね。
見舞いに来た影山に現状を話す矢代。
組が解散したのでしばらくはなんかしてろと言われてる矢代に
足を洗えばいいのにという影山。
竜崎も極道辞めろと言っていた。ホントにね。辞めるいい機会なのに。
お前はなんで
俺じゃなくて久我だったんだ?
1巻1話のモノローグがここで来た!
影山が久我と恋人になってから抱いていた想い、もっというと
高校時代から抱き続けていた想い。
絶対に聞けないと思っていたこと。
聞けるようになった矢代。
影山への恋が終わったのね。
その問いに対して影山は答えなかったけど。
矢代を「身内」と言ったからもう全部許そう。
影山が帰った後、甘栗から電話。
甘栗たちは倉庫から移動中、矢代を切って逃げようと言う話になりかけたけど(提案したのはオールバック)甘栗判断でやめたのよね。
平田のこともあったけど、尾行していた鯨鮫にも気づいていたかな?
その後矢代は百目鬼の病室へ。
家族に囲まれる百目鬼を
遠くから右目を隠して左目だけで見つめる矢代。
百目鬼が気配に気づいて(鋭い)周囲を見渡したけどもう矢代の姿はない。
病院の外で飛び立つ鳥。
そして月日は流れ―
七原に「社長」と呼ばれる矢代、
誰かに呼ばれ、黒い手袋をはめて従う百目鬼。
******
巻末に描き下ろし。
飛ぶ鳥は言葉を持たない
病院の屋上で話す七原と百目鬼。
矢代が頭を打って百目鬼のことを忘れたと言っている。
当然嘘。
嘘で固めた人生の矢代の、非常にわかりやすい嘘。
七原はいい機会だから足洗えと百目鬼に言う。
ホントにね。辞めるいい機会なのに(定型文
でも百目鬼は辞めない。
同じ世界にいなければ、矢代との縁が途切れると思っているから。
ここで驚いたのが、
七原が矢代の幼少時代に性的虐待を受けていたかもと気づいていたこと。
小さい頃からヤッてた、とは聞いていた、でもそれが
本人が望まない形でやってたとしたら?
そしてそれを聞いて百目鬼がすぐに
矢代の涙を思い浮かべてはっとするのもいい。
それをきっかけに次々と思いだされる矢代の言動。
お前って
俺の好みど真ん中みたい
お前は
優しそうな普通のセックスしそうだから嫌だ
お前が可愛い でも怖い
お前は 嫌だ
お前を どうにもできない
「お前は」「お前が」
他の人間と線を引く言い方。
何かに気づき、何かを決意し、屋上を後にする百目鬼。
******
物語に流れていた矢代を形作るもの
そのひとつである影山への片思いがここでピリオド。
高校時代にひっそり盗んで大事にしていた
影山のコンタクトケースは今、百目鬼の手元にあるわけだけど
影山への恋心が消え、親友に、さらには身内になった矢代は
コンタクトケースがなくなったことに気づいてるかどうかも怪しい。
矢代が平田との抗争で、
決着をつけるためには自分の命と引き換えにしてもいいと
考えたのはいつ頃だろう。
矢代に豪多組襲撃の濡れ衣がかかった時か、
百目鬼に抱かれた後か、それとももっと前か。
矢代は死を覚悟した。死と引き換えに証言を引き出そうとした。
それにはひとりで立ち向かわないと平田は吐かない。
百目鬼を、七原たちを守るために置いていった。
そゆことちゃんと…説明したらダメか、絶対阻止するためについてくるか。
やっぱり黙ってやるしかなかったか…
百目鬼は傷つけられても置いて行かれても、くらいついて側にいた。
矢代の計画を邪魔することになってしまったけど、
そういうところも矢代の鎧を壊すきっかけのひとつではあったものね。
壊れた矢代の鎧は今後どうなるのか。
百目鬼を手放し、また鎧を修理して着込むのか。
百目鬼は七原に何か伝えていたようだけど、それは何か。
倉庫街で、飛行機の轟音にかき消された矢代の言葉はなんだったのか。
様々な謎とそれぞれの想いをちりばめて終わった、
そんな6巻です。
表紙は今のところ、6巻が一番好きかも。
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