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短話連作『終末カフェ』4

「CLOSED JUPITER」

その日、たくさんの流れ星が流れた。
木星が消えたからである。
木星は大きい。地球の318倍の質量だ。そして重い。その強大な重力は、地球に近づく小天体や流れ星を吸い寄せていた。
それが失われた。それゆえにたくさんの小隕石が一日中飛来していた。昼間でも見えるような明るい流れ星もあった。世界各国で「空からの落下物」による事故の報告が寄せられた。

一部の、世界中にいるもう気づいている人たちの不安が噴き出した。ある人は研究機関に、ある人は軍隊に、ある人はネットの向こう側の人たちに。それぞれがパニックになりそうな胸の内を宥めすかしながら、ただ問い続けた。
『木星はありますか』
『隕石は落ちますか』
『私達は助かりますか』
『木星はありますか。。。』
気づかなかった人も気づき始め、まだ気づかない人も隕石には怯え、日常を壊すまいといつもと同じ生活を保ちつつ、国の発表を待っていた。

しかし、どこの国も沈黙を保った。
発表するには急すぎる。突拍子がなさすぎる。
議論の時間がない、前例がない。
何よりも、救いがない。
確かに消えた。
木星は、もうどこにもない。

今日は木曜日。

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