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いつの間にか私の毎日はピンクで埋め尽くされている

「何か振り回すものはお持ちですか?」

初めてレ・ロマネスクのライブに行った時、隣の席の方からそう声を掛けられた。

え?振り回すもの?
質問の意味をまったく理解できず固まっている私に、手に持っているものを振り回す曲があることをその人は教えてくれた。そのうえ余分に持ってきているからと金色のスカーフを貸してくれた。

ご存知レ・ロマネスクはフランスで結成されたボーカルユニットで、2011年から日本を拠点に活動している。

私が彼らを知ったのは、ほぼ日に掲載されていたインタビューだった。
全身ピンクの二人組。パリでいちばん有名な日本人で、パリの映画祭の広報大使もしていたらしい。

偶然が重なって二人で音楽活動を始めることになったとか、銀行強盗と一緒にシャッターの中に閉じ込められたとか、おじいちゃんが亡くなった時の最後の言葉が「この恥さらし」だったとか、インタビューの内容自体も面白いけど、曲も聴くと癖になる面白さ。

軽快なテンポ、親しみやすいメロディ、斬新な視点の歌詞。
「呪」と「祝」の漢字を間違えて相手を呪うつもりが祝っていた『祝っていた』。
褒められて伸びるタイプと主張する『飴と飴』。
どの曲も一度聴くと頭にこびりつき、口ずさまずにはいられなくなる。

繰り返し聴いたり一緒に歌ったりしているうちに生の二人を見たくなり、ライブに行くことにした。

その初ライブも親切な先輩ファンヌ(レ・ロマネスクではファンのことをこう呼ぶ)のおかげで無事しかるべき時に振り回すこともでき、以降今に至るまで楽しみが続いている。

ほぼ日のインタビューを元にした『レ・ロマネスクTOBIのひどい目。』も、ネットでも読んだはずなのに、まとめて読むとまた笑ってしまう。

それぞれのエピソードが強すぎるせいでもあるし、TOBIさんの語り口やインタビュアーの奥野さんのとぼけ風味のせいでもある。

中身だけでなく装丁にもサービス精神があふれ過ぎていて、表裏両方の見返しにまでびっしり字が書かれているし、本文の左右の余白もほぼない。

こうして家で曲を聴いたり本を読んだりしているのは楽しい。
けれど、ライブはもっと楽しい。今週岩下の新生姜ミュージアムでのライブに久しぶりに行って改めてそう思った。
ピンクで埋め尽くされた建物の中で、ピンクの人たちが歌い踊るのを堪能した。

あー楽しかった。


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