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007.【Mリーグ】他を突き放し独走する青き海賊船。セミファイナルに向けて絶対に必要だった『船長の帰還』という最後のピース

※この話は麻雀、Mリーグについてある程度知識のある方にしかわからない話がふんだんに含まれています。ご了承ください。

どうも、風茶でございます。

長かったMリーグ2023-24シーズンのレギュラーシーズンも佳境となり、あと4節、1週間の闘いを残すのみとなりました。

現状、チーム首位を走るのは青き海賊船、U-NEXT Pirates。2度目の優勝を目指し、ここにきてMVP争いをする瑞原明奈プロ、鈴木優プロが互いに300ポイント超えのプラスを叩き出し、独走体制を築いています。


そんなチームの中で、大人しい…というか、なんでしょう。

マイナスしても淡々としてらっしゃる方がひとり。

船長・小林剛プロ。

Mリーガーでは現時点で唯一の麻将連合所属で、自団体の最高の称号・将王にも何度も輝いた実績の持ち主です。


余談ですが僕は一度、大阪で行われたイベントで小林プロと同卓したことがございます。

結果は粘ったドラで小林プロに打ち込んだり、その後自分でも点数がわからなくなるほどの大物手(実際は倍満でした)をあがり、小林プロに計算を助けてもらったり……わたわたと落ち着きのない麻雀を打ってしまい、最終的に3着だった記憶があります。

そんな素人丸出しの僕の姿を見ても、嫌な顔ひとつせずに笑顔で対応してくださった、まるで仏様のような小林プロの姿は、今でも僕の脳裏にはっきり焼き付いております。いやあ、本当に感謝しかない……(^^)


さて、そんな小林プロですが、初年度からパイレーツをまとめる存在として、デジタル思考と凄まじい安定感を武器に、海賊船の舵をとり続けていました。

しかし、昨年は個人マイナス、今年も好調なチームの中にありながら、手が入らずにポイントを伸ばせずにいました。


個人ポイントについてはあまり気にせず、今ある状況と目の前の麻雀の結果を、ポーカーフェイスで淡々と分析する。

結果に惑わされず、自分に出来ることを着々と。

麻雀サイボーグ、あるいはロボとも称される男は、いつも通り『偶然』が味方する時を待っていました。


2024年3月22日。

前日、下位3チームのボーダー争いへの挑戦権を賭けた死闘が繰り広げられた、その熱が冷めやらぬ中、チーム首位のパイレーツの先発を任されたのは、船長・小林選手でした。

偶然に意味などない。
あるのは手元にきた牌の並び、その組み合わせ。それに対し自分ができるのは、自分の読みや思考を掛け合わせ、一番利益のある結果に向かい進むこと。

ハマった時の小林選手の恐ろしさは、同卓者なら既知の事実のはずです。

しかし、彼の思考はおそらく、

「今日は先制した」

ただ、それだけ。
だから調子いい、とかではない。

この差を守るための思考にシフトするだけ…

安全度をみて、ドラでも切った方がいいと判断すれば、迷わず選びます。

次巡、手元にきたのは六萬。
待ちは広がりますが、九萬を切っているため、六、九萬待ちはフリテンになり、ロンあがりができなくなります。

手出しで六萬を空切り。
これはリーチを掛けていたKONAMI麻雀格闘倶楽部・佐々木寿人選手のあたり牌でした。

うん、こういうこともある。
たまたま勝負するのに最善を選んだら当たっただけのこと。

今までもこうやって勝ってきたし、こうやって乗り切ってきた。

確固たる自身のスタイルへの自信。
親への放銃ひとつで揺らぐ事などありえません。

実況・日吉辰哉プロも、
「放銃にはなりましたが、1巡前の1索、小林らしい」
とコメント。

ありのままに打つこと。
一番慣れた自分の姿で、一番ストレスなく打つ。

小林剛という雀士のスタイルは、Mリーガー、いやすべての雀士を見ても、かなり極端に打ち筋に現れる方でしょう。

最も効率の高い打牌を選択し、流れや勢いなどという不確かなものを排除する。

手が入った時は力強く前進し、
手が入らない時は引く波のように身を翻す。

この日は久しぶりに、手牌と思考が噛み合って、彼の手元で綺麗な道筋で手が完成されていくのを見たような気がしました。

鳴きを駆使して躱すあがりが真骨頂なら、リーチをかけて他を悠々と突き放すあがりもまた彼の持ち味。

状況により変わる最善手を見つけ、着実に選ぶ。あがりはあがり。勝利への道筋のひとつ。

手が追いつかなければ場を静観するのみ。それもまた、負けないための道筋のひとつ。

オーラスを終えた時、船長は静かにトップに座していました。


これが、彼の勝ち方なのでしょう。

静かに、淡々と、前進する。


今期、確かに彼は苦しみました。
手が入らず、当然ともいえる打牌が放銃となったことも多くあり、マイナスを重ねました。

しかし彼は、今まで自分を雀士として導いてきた『デジタル』というスタイルを貫き続けることで、いずれ来る勝利を信じ続けたのです。

「今日の対局はいい偶然が多かった」

彼はそれくらいにしか捉えていないかもしれません。しかしそれが、雀士・小林剛の強さなのです。

悪い結果に惑わされない。
良い結果に縛られない。

小林剛という男は、その『らしさ』をもって今まで勝ってきたし、これからも勝っていくのです。

いつも通り。

穏やかな笑みをたたえ、慣れ親しんだポーズを決めた船長は、快調に進むチームに勝利を報告しました。


依然好調をキープする仲間たち。

隙なく、誰が出てこようと勝つ。

セミファイナル進出はもはや安全圏といっていいほど他の追随を許さない差をつけたパイレーツにとっては、唯一マイナスを背負っていた船長が復活したことで、懸念材料がかき消えたといって過言ではないでしょう。


第2試合。

結果だけ申し上げます。

仲林圭選手が、100ポイントに迫る大勝。

チームをさらなる安全圏へと押し上げました。


デイリーダブルを決めたパイレーツは、ついにトータル700ポイントを大きく突破。

754.3ポイントは、これまでのチームポイントとしては最大だそうです。

この勝利で仲林選手もMVP争いに迫ってきたことで、3人が個人200、300ポイントなんてことになれば、そりゃそうかと思いますが……

いやはや、凄いの一言です。


終盤戦に入り勢いの止まらないU-NEXT Pirates。

このままセミファイナルに入り半分に減ってもなお、かなりのアドバンテージを持ってのスタートとなる…そんな差をつけました。

残り4試合でどこまでポイントを伸ばすのか……

ああ、いえ、失礼しました。

この記事で勢いという言葉を使うと、船長にやんわりと指摘を受けそうですね(^_^;)

すべて偶然の結果であり、ポイントの多少が起こるのは当たり前のこと。結果で一喜一憂せず、よりポイントを持って帰れるよう選択し続ける。


船長が海賊船を率いる限り、このチームがブレることはないし、崩れることはない。


だからこそ、この日の船長の勝利は。

U-NEXT Piratesには不可欠な勝利だったのです。


船長が自分のスタイルを守って、危なげなく勝利してきたことが、このチームを栄冠に導く最後のピース。

Mの頂点に海賊旗を立てるためのピースが、船長が勝利の敬礼を決めた瞬間、綺麗に揃ったのです。


今期、セミファイナル、そしてファイナルへと続く中で、パイレーツを止めるチームは現れるでしょうか。


それは、ステージが変わってからしかわかりませんが……


迎え撃つ準備は整った、ということだけは間違いないでしょう。


それでは。

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