中小/ベンチャー企業の新規事業開発をコストをかけずに成功させるポイント。
はじめに
なぜ、中小企業で新規事業なのか?
「取引先が大手1社に依存している」「主力単品商品が売上げ構成比の大半を占めている」こう言った中小企業は日本ではかなり多いですが、このような会社の場合、取引先の倒産や、景気や社会状況の変化によって売上が激減し、経営が厳しくなるということがリスクとして近年高まっているのをご存知でしょうか?
観光業や飲食業の経営者の方は2020年のコロナ禍で社会情勢が変わり今までのビジネスが成立しなくなるという経験をされたので記憶に新しいかと思いますが、大企業の不祥事で取引先からの発注が激減するなどあらゆる業種、あらゆる業態でも、もはや時代の変化が早い現代では単一事業のみの経営では安定はしません。
そんな中で効果的なのが新規事業や、M&Aによる事業多角化です。しかし、多くの企業では事業多角化を進める段階で進め方の選択肢の少なさと難易度の高さにぶつかる方が少なくないのではないでしょうか。
中小企業の事業多角化は大企業のように十分な予算を確保してM&Aも駆使した参入をするというわけにはいきません。予算は大企業のように数億といったレベルの潤沢な資金を投入できませんし、第一人材が余っていない中小企業では事業の推進役がおらず、そもそも自社だけでは事業が作れないという課題が多く、とても新規事業やろう!となってすぐに取り組めるテーマではないというのが多くの経営者の方の本音ではないでしょうか?
このホワイトペーパーでは「中小企業でもすぐに始められる、コストの少ない新規事業開発手法」をまとめたものになっています。
1.中小企業の新規事業は、自社の持つ資産と社員の得意分野を意識して始めるべし
中小企業の新規事業での支援をしているとよく聞く失敗例として、「社長が肝入りで始めた事業が全く売り上げが立たず赤字だけ残して数年でクローズしてしまった」や、「部下の発案で今まで挑戦したことのない新業態に挑んだが、競合に勝てず赤字が続いており、撤退を考えている」といった事例を多く聞きます。企業のジャンルにもよりますがこう言った失敗は、一つの共通項で解説ができます、それは「自社が得意ではなく、慣れない市場で事業を行なってしまっている」ことだと思います。
新規事業=新たな挑戦ということで斬新な事業モデルや、新しい業界に進出することをイメージされる方が多いと思いますが、こと、中小企業の新規事業ではかなり難易度が高い挑戦です。
理由は「事業というものを構成する要素」を分解するとイメージしやすいと思います。
事業とは下記の方程式で分解できます。
この場合資産には、顧客基盤や顧客データ、ネットワーク、ソフトウェアなど無形のものも含みます。また知見には、従業員の得意なことや、成功体験、社長のスキルなども含まれます。
世の中のすべての企業はこのどちらかか、もしくはどちらもに強みを持つことによって事業を成功させています。
中小企業の新規事業で失敗するパターンに私は「自社が得意ではなく、慣れない市場で事業を行なってしまっている」と言いましたが言い換えると、「自社の資産がなく、知見もない領域で事業を作ろうとしている」と言えます。
大企業は豊富な資産や多くの従業員による豊富な知見を有します。なので新業態や新業界への進出を行えますが中小企業、特に単一事業で成長してきた会社には資産、知見共に既存事業には貯まっているが他に転用できないという状況が多いです。そのため、本業とは別の事業を構想したときに、資産がないため競合差別化ができないor知見がないため売上を立てることができないと言った課題にぶつかります。
と言っても、新規事業に挑んでいく場合資産も知見もないから辞めますと言っていては何もスタートしません。では、中小企業はどのように新規事業に挑むといいでしょうか?
二つの手法があります。一つ目は「すでにある資産を活用して違う売り上げの立て方をする事業をつくる」という手法です。
当たり前ですが事業=資産×知見で生まれます。このうち、まず前者の資産を持っているか持っていないかは大きな違いです。資産は競合との差別化要因です。競合は持っていない資産を自社が持っている場合、その事業の成功率はグッと上がります。
弊社で支援している事例として介護会社の新規事業立ち上げがあります。
介護会社の業務課題を精通しており、同業の会社とのネットワークを有するA社では、自社が使うために独自で設計した業務管理システムを開発し、それを同業のネットワークに売っていくモデルで新たにソフトウェアビジネスを立ち上げています。
この場合競合は介護会社向けのソフトウェア会社なのですが、彼らがかけているコストの多くは介護会社への営業コストです。業界に参入する場合介護会社のネットワークに入り込み売っていく必要があります。そのため専門の営業人員を雇い広告を回して多数のマーケコストをかけてソフトウェアを売っています。しかし、A社は同業向けの勉強会などですぐに繋がれる同業のネットワークを多数保有しています。また自社で使っているシステムのため実績も豊富にあります。このネットワークと実績こそがA社の資産であり競合差別化要因です。
当然ですが介護事業においては同業とのネットワークや、自社のシステム活用の実績とは本業ではあまり意識しない資産です。しかし、売上の立て方を介護報酬から、ソフトウェア使用料として、変えてみると強力な資産に変化します。
このような事業であれば補助金を活用し自社の持ち出しを少なくした上で営業人員を雇う必要もなく事業をスモールスタートさせることが可能です。かかるコストも数百万円〜始めることが可能です。
こういったモデルは他の多くの会社、特にニッチな業種であればあるほど始めやすいです。ソフトウェア会社で工事会社とのネットワークを強く持つ会社は少ないですし、特殊な卸構造を理解して入り込む業者も少ないです。自社が特殊な事業を行なっていればいるほどソフトウェアによる新規事業は成功しやすいです。
このように自社の資産を活かした事業であれば、勝ち目の多い事業に、低コストで挑むことができますし人員も新たに採用しなくても進めることが可能です。あとは外部のパートナーさえ見つかればできるのが資産を活かした新規事業の魅力です。今回はソフトウェアでしたが売上の立て方をかえれば他の事業でも転用可能です。例えば弊社の周りの例では自社の同業とのネットワークを活かし同業に向けた経営コンサルティング事業で初月から数百万円以上を稼ぐ事業者もいます。これも、自社のネットワークを使った新しい売上の立て方です。
さて、しかし資産を活かせる事業は立ち上げは容易ですが、そもそも業界そのものが衰退しており転換を求められる場合もあるでしょう。その場合次の手法が有効です。
手法の2つ目は自社の知見を活かして、オペレーションによる強みを出した新規事業です。
例えばナイル株式会社という会社を知っているでしょうか?
元々はデジタルマーケティングの支援を行っていた会社なのですが直近売上の柱は受託ビジネスではなく自社のマーケティングの知見を活かして始めた中古車のオンラインリース事業です。デジタルマーケティングの会社なのでデジタルで顧客を集めてくる知見は豊富にあります。その強みを活かして、プロのマーケティング集団が新領域である中古車リース事業に参入し顧客の集客力で強みを持ち、圧倒的な稼ぎ頭にまで成長させ、上場までしています。
これは受託会社に限らず、多くの会社の新規事業で活かされています。弊社の支援している例だと、広告代理店のB社があります。B社はクリエイティブエージェンシーですが自社のコンテンツ企画力や、SNS運営力を活かしてメディア事業を立ち上げ、広告を作る側だった業態から、広告によるマネタイズを目指すメディア×物販事業を推進しています。これも自社の社員の能力や知見を活かした自社メディア物販事業をマーケティングやクリエイティブの知見で伸ばすという動きです。
こう言った自社の得意な力を活かした新規事業は、強みが明確であるため、勝ち筋を描きやすいです。また、売上の立て方も熟知していることが多いため売上が立たないという場合が少なく、堅実に事業を始められ、また本業に変わる事業に育てることも可能です。
以上のモデルを解説してきましたが、では問題になるのは「予算」かなと思います。予算が潤沢ではない状況は変わらないため勝ち筋がわかっても、予算がないなどの場合が多いでしょう。次の章では資産を活かした新規事業、知見を活かして新規事業それぞれの低コストでの事業開発戦略を解説していきます。
2.低コストでの事業開発はパートナー選定が肝!
予算はなるべくかけずに事業をやりたいというのは経営者の共通する本音だと思いますが、しかし予算を全くかけなければ、事業はリソース不足ですぐ止まってしまいます。そのためいかにしてコストを下げつつ効果的な事業推進を行うかが肝になってきます。その中で大事なのは適切なパートナー選びです。無闇に外注してしまっては事業は立ち上がらないですが新規事業のタイプに応じてここは外に投げれば爆発的に進むという部分があります。そこを掴めば低コストで事業の構築が可能です。
資産を活かした事業の場合
資産を活かした新規事業で、不足するのはなんでしょうか?一見すると自社の資産があるためすぐに始めれそうですが、この場合ネックになるのは「その業態での知見不足です」当然ながら、例えば介護会社でソフトウェア事業を始めるとき自社にエンジニアがいる場合は少ないでしょう。また、ソフトウェアビジネスの契約の仕方、価格の決め方など詳しい社員がいるのは稀です。そのため、売上は立てることができるがその業態の知見を持ったパートナーを探す必要があります。
弊社のような新規事業の経験のあるチームに相談いただく形のほか、自身がやりたい業態のビジネス経験が豊富な経験者の方を副業や業務委託で参画いただく形で知見を補強して事業を立ち上げるのが肝です。
その場合コストはどんなに多くても数百万円ほどで抑えられます。またシステム開発などであればものづくり補助金などの補助金が活かせる場合があるほか、コンサルティングに関しても、大手コンサルファームに頼むのではなく副業マッチングサイトやフリーランスマッチングサイトなどで依頼をすれば月数十万円〜で良いパートナーを見つけることができます。
資産はあるので知見を補強する。ここにだけに集中して予算をかければ低コストで事業を始めることが可能です。その際、大事なのは丸投げにせず自社の事業としてあくまで知見をもらうことを最重要に考えパートナーを選ぶことです。自社で運営する前提がないと高い業者に大量の費用をかけて事業が進まないと言ったことがよく起こります。そのためコンサルやベンダーの選定では、あくまでも主体は自社、知見や技術をもらうという姿勢で発注することがコストを抑えるコツです。我々で支援させていただく場合も必ずカウンターパートナーというクライアント先の担当者の方を立てていただきその方を事業オーナーに我々は知見を提供する形での支援をさせていただいています。そうすることで無駄なコストを使わずいずれは自社で完結する形で事業運営ができるようなご支援をさせていただいています。
知見を活かした事業の場合
知見を活かした事業の場合では、どのようにコストを抑制できるでしょうか?一般的には自社の知見を用いて事業を立てるので自社の人員さえ確保できれば堅実に事業を立ち上げることが可能なモデルですが、事業がある程度立ち上がると、知見はあるが資産がないため競合に勝てないというフェーズがきます。そのような場合の時こそ有効にかつ低コストでの事業を行う肝があります。それは、資産を持つパートナーとのアライアンスです。
知見を生かす事業の場合オペレーションは強いですが顧客基盤や仕入れ先などはない状況からのスタートです。そのため仕入れ先とのネットワークを持つ会社「資産を持っているパートナー」とのアライアンスに予算をかけていくことで事業を円滑に進めることが可能です。
パートナーとのアライアンスは多様です。紹介してくれる顧問がいれば進む事業があれば、紹介から仕入れまでまるっとやれないとできない事業もあります。そのため、何の資産を競合は持っているか、そしてそこに最短で辿り着き資産を得ることのできるルートはどこにあるか?を意識して、そこにのみ集中的に予算をかけることで自社の知見を活かした事業が加速します。
販売に弱みがある場合は代理店戦略などで代わりに売ってくれるパートナーを見つけるもよし、販売はできるが仕入れが弱い場合は仕入れ先を紹介してくれるパートナーを見つけるもよし、これも先ほどと同じようにフリーランスマッチングや、顧問マッチングサイトを使えば数十万円〜で可能ですし、広告などで募集すると言ったことでも事業の立ち上げが可能です。
例えば弊社で支援しているメディア事業の場合集客の知見はあれどマネタイズに関しては課題がありました。そのため、集客力を活かしたマネタイズ方法として商品を持っている事業会社とのアライアンス構築を進め物販によるマネタイズ支援を行い、売る実績を作りそれを持って広告営業を行うという形でひたすら顧客獲得につながるアライアンス構築を支援させていただいております。
この場合弊社ではアライアンス先の開拓、アライアンス交渉の型の作成、アライアンス後のケアに集中して、オペレーションを丸っと受けない形により予算を下げての支援を実現しています。
知見がある事業の場合は、資産のある事業とは違いどれだけピンポイントで、どれだけ効率よく資産を手に入れるかが肝です。コンサルや顧問、代理店に教えてもらうという姿勢ではなくどうやって彼らの先にある資産を持つ人と繋がれるか、資産を獲得できるかにフォーカスを置いてより厳密な効果測定を行うことが肝要です。
3.確実に黒字化する事業推進体制の作り方
ここまで、事業の立ち上げる際の領域の選び方、コストの掛け方をまとめてきましたが、多くの経営者の方は上記は言われずとも意識はしている方が多いのではないでしょうか?しかし多くの場合黒字化まで至っている事業は少ないと思われます。
領域の選び方は自社にあった形でやっているしパートナーもいるが黒字化しない、赤字が拡大しているという会社の方からの相談を弊社でも多いです。この場合の会社で共通しているのは「はじめに予算をかけず、成果が出たら予算をかける」という戦略を取る方が多いということです。
事業の成果が見えない中ではじめから予算をかけたくないというのはまさに経営判断として正しい感覚です。しかし、事業の立ち上げは速度が命です。事業には自社の資産が市場にマッチするか、自社の知見でのオペレーションの強みが市場に認知されるかしたタイミングで売上がたちます。その交点を専門用語ではプロダクトマーケットフィットというのですが、上記の事業領域選びを実践して、パートナー選定もできている会社様に限っては、どれだけ早くその交点に辿り着くかという早さがものを言います。黒字化には戦略の正しさも重要ですが、速度も大事です。
軍事用語で「戦力の逐次投入は禁じ手」という言葉を耳にした方もいらっしゃると思います。これは、戦力を次々に投入すると、各個撃破されてしまい、結果として戦争に負けるという用語なのですが事業の立ち上げも同じことが言えます。あくまで上記は1.2の戦略設計ができている場合に限りますが、(戦略が間違ってる場合はそもそも黒字化しません。)早く黒字化するためには、予算やパートナーリソースなどを初期に集中投下していない場合、赤字が長引く傾向があります。
一般的には立ち上げ期間の3ヶ月は社長直下でパートナーもフル込みに近い形で、予算も7割を使う覚悟で早く知見を手に入れるor資産を獲得する必要があります。ここで様子見をしてしまうと勢いを逃し、ダラダラと進まない事業が生まれます。パートナーにも最初の3ヶ月は利益度外視で巻き込むなど、本気の巻き込みを行い、早く事業の根幹を作り上げてしまう。そうすればあとは緩やかにコストを下げていけば自然と売り上げがついてきます。
弊社で支援する際におすすめしている体制は100日事業部というものです。
100日間は、弊社メンバーも、フルコミットし、社長も参加いただき事業責任者もすべてのリソースを新規事業にかけて事業を推進します。その100日間は利益度外視で予算を使い、100日で圧倒的な成果を出すためにあらゆる施策を打ち尽くすという体制を敷き事業を離陸します。
飛行機もそうですが何事も離陸のタイミングが1番エネルギーを使います。ここでエネルギーをかけられない(社長がコミットできない、事業責任者が掛け持ちなど)とどんなに戦略が良くても事業は低空飛行で黒字化しません。
その代わり100日でいいので全てを注いでみると、100日後には事業が立ち上がっています。そこからは売上のバランスを見てKPIを設定し予算をコントロールし場合よってはパートナーのコミットを下げて運営していくフェーズです。
事業の最速黒字化には、こう言った、速度の意識とリソースの集中投下が求められるため、ここを意識しておくと事業の立ち上がりがしやすくなります。
終わりに新規事業のパートナーならFuturesLabへ
FuturesLabでは上記のような新規事業の立ち上げ、黒字化のご支援のほか「オペレーションのデジタル化」や、「業務改善支援」「システム開発」などDX全般のご支援をしています。
FuturesLabはビジネス全般の知見を持った起業家やマーケターを中心としたコンサルタントやITエンジニアなどが在籍するブティック型のコンサルティングファームです。ビジネスとテクノロジーを融合させた支援が得意ですのでぜひお気軽にご相談ください。
現在事業の課題壁打ちおよび経営・DX・新規事業相談は初回無料で提供しております。どうぞお気軽にお申し付けください。
運営:Social Change Lab合同会社
mail:futureslab@socialchangelab.jp
HP:https://futures.socialchangelab.jp/
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