〈8.未来メルヘンについてディスカッションする〉

 僕は未来メルヘンについて語った。

「未来メルヘンというのはエコと助け合いを実行して平和で豊かな未来を作ろうという僕のアイデアです。

 僕は小説を書いていて小説の中で戦争、貧困、環境破壊と言った現代の様々な社会問題が解決した理想の未来を思い描きました。そんな僕の小説を広めつつ小説に書いてあることを実行すれば小説に描いた通りの理想の未来が実現すると考えました。

 未来メルヘンの基本は仲良しやり取りです。仲良しやり取りとは物のやり取りを通じて人と仲良くなることです。

 例えば無料であげる、もらうというのも仲良しやり取りです。誕生日プレゼントなどのように愛情を込めて人にあげるというのもそうだし、困った人を助けるためにあげるというのもそうです。またいらないからあげるというやり取りもあります。普通は要らないものをゴミとして捨てるけど、あげることによってゴミが減ります。こういう風に物のやり取りを通じて愛情を表現したりエコを守ったりします。

 そしてもらう方は感謝します。単に取引するんじゃなく愛と感謝を込めた心のこもったやり取りが大切と考えます」

「なるほど礼儀が大切というわけだね」

 アーサーくんは頷いた。

「それから物々交換、貸し借り、預ける、預かる、中古品のやり取りもなかよしやり取りです。

 単に無料でもらうだけならそんなに信頼関係ができてなくてもできますが、物を貸し借りしたり預けたりといったことは信頼関係がある人とでないとできません。なかよしやり取りはそういう深い信頼関係を作るやり取りでもあります」

 キングくんが聞いた。

「なかよしやり取りではお金は使わないの?」

「お金のやり取りもあります。お金のやり取りでも仲良しを大切にします。

 エコにいいものを買う、友達がお店をやってるから買いに行く、地域の応援のために買いに行くといったやり取りです。同じようにお金を使うならただ単に自分が物欲を満たすためじゃなく人のため、友達のため、友情のためというふうにお金を人の役に立てるために買い物します。

 自分が友達から何か買うなら自分もその友達に売るというやり取りもあります。こういう風にお互いに買うことを買い合いと言います。

 またアキバのオタク文化や原宿文化では買い手の一部が売り手になるという文化もあります。みんなで夢を守ろうとか人に何かを応援しようという気持ちを持ちます。

 せっかく売買するなら赤の他人として1回のやり取りで終わらせるんじゃなく、その後、長い付き合いをして何度もやり取りを続ける方がいいと考えます。

 またお金を寄付するのも仲良しやり取りです。寄付することが投資になったり宣伝になったりすることもあります」

 インド人男子モディさんは質問した。モディさんは日本企業で働くことを目指す。

「未来メルヘンでは科学技術の発達やロボットは重視しますか?」

「それは重視します。同じことを繰り返すだけの単純労働はロボットにさせて、人間は、クリエイティブな発想の要る創作や心をこもった人情味あるやり取りに専念出来るようにします」

 アメリカ人最年長男性トーマスさんが質問した。トーマスさんは一度社会人になって大学で学び直す出戻り組。

「株や為替などの投資は未来にはどうなりますか?」

「投資は大切ですがギャンブル性のある株や為替などではなく生産性のある技術の開発といった実物投資を重視します」

 アメリカ人女子ロリポップさんが質問した。ロリポップさんは可愛い見た目だけど成績優秀。

「無料のやり取りが中心ということはGDPや景気の良さといったものは重視しないんですか?」

「社会にお金がグルグル回る景気の良さというものは重視します。

 特に問題なのが資源の浪費、労働力の浪費で、商品の値段を安くするために使い捨てにしてゴミが増えたりするのが問題ですが、値段の高いものを買ったりお金をたくさん使うというのは浪費ではなく丈夫で長持ちするものを買うために重要だと考えます」

 なかよしやり取りの説明が終わったところでみんなに意見を聞いた。

 まずそうたくんが意見を言った。

「僕は買い合いや投資などで利害を一致させるやり方に賛成だね。従業員に自社株を与えて会社の得が自分の得となる仕組みを作るのもそう。

 仲良しやり取りは単に物欲と金銭欲の交換というだけじゃなく夢や友情を売買するやり取りという風に感じた。

 人が何かに夢中になる時の心理をフローといって、そういう状態に導くことによって人の心を癒やすんだよ。

 現実的に考えれば生活必需品以外も何も買う必要ないと思えるけど、何かに夢中になってるとその夢のために何か買いたいという気持ちが芽生えてそこでまた需要が生まれる。ビジネスチャンスが生まれるんだ」

 トーマスさんも発言した。

「夢を見る心理を利用して品物を高く売ることで安売り競争を避けるのがいい。ディズニーランドみたいにみんなが夢を買う場所では多少高くても物が売れる。

 逆に無料で提供してほしい所では、ウィキペディアみたいに知識自慢したいという心理を利用すればみんな無料でコンテンツを提供し合えるんじゃないか?」

 アーサーくんも賛成した。

「なかよしやり取りはみんなで心を一つにして社会を1つの目標に向かわせるのに役立つと思った。

 例え民衆が無知の混沌、私利私欲、分裂争いの只中にあっても知性あるリーダーの明晰な判断で社会を治めることが出来る。市民の行動パターンや何を欲しがってるかを読むことによって治世すべき。

 シャーロックホームズやアガサクリスティの小説のように人の心理の裏の裏まで読んで行動パターンを読んで人心掌握して株と法律で社会を律するべき」

「それは例えばどういうこと?」

 僕の質問にアーサー君は答えた。

「金融界や法律界では罪と罰、飴と鞭のやり方で民衆を律するというやり方が取られている。例えば民衆には生活費の支払いがあるため民衆は勤勉に働く。会社には株主への配当の支払いがあり、借金の支払いがあり、企業同士の競争もあり、それが社会に役立とうとする動機付けになる」

 それに対してまほろちゃんは言った。

「私は罪と罰で社会を治めるやり方に反対。思いやり、助け合いが大切だと思うわ」

 アーサー君は続けた。

「ここにいる諸君にはそんなコントロールから抜け出すことを進める。そのためにはガイストの精神が大事だ」

「ガイストって何?」

 アンジュちゃんは聞いた。

「ガイストとは、罰が怖くて正しいことをするんじゃなく自らの良心から自主的に正しいことをするという道徳観念であり、ドイツ哲学で理想とされる生き方である」

 ロリポップさんも発言した。

「寄付をしたり寄付を募るといったこと自体が持続可能性に反すると思う。貯金が尽きればお金はなくなるからね。買い合いのような仕組みだとお金は回り続けるわ。

 ロボットに仕事をさせて人間が失業したら本末転倒よ。それも持続可能性に反するわ。
 ロボットに仕事をさせて人間の仕事がなくなった時に代わりになる収入源が必要よ。それにピッタリなのが仲良しやり取りだと思う。仲良しやりとりは究極の効率化だと思うわ。

 日本企業は取引先の企業に対等なお金を支払い末永く取引を続けようとする。

 ビジネスや投資で大事なのは全ての人が同じことをしても社会が成り立つかどうか?を考えることだと思うわ」

 インド人モディさんは手をあげた。

「私もその意見に同感です。

 ロボットが活躍するということは日本企業が活躍するということ。日本企業の規律正しさからインド人が多くを学びました。たゆまぬ改善の努力、必ず納期を守るという責任感、見えない所まで手を抜かない誠実さ、普段単純作業しててもいざという時はトラブル解決の最前線に立つ、普段はライバルでも一緒に働く時には何のわだかまりもなく協力し合う、そういう日本精神は素晴らしい。

 日本企業は仲良しやり取りを実行していると思います。」

 アメリカ人ロリポップさんはまた発言した。

「日本人が自分の国の経済力を声高に主張しないのは謙譲の美徳のためだと思うわ」

 インドネシア人男子アデさんも発言した。

「私は仲良しやり取りの話を聞いてインドネシアの経済に近いなと感じました。

 インドネシアには屋台が多いです。国策として屋台を増やしてるんです。なぜかと言うと株に支配されてないオーナー社長の社会だからです。

 経済を支配するリーダーがいない。リーダー不在だから買収されにくいということです」

 それについてアメリカ人ロリポップさんはこういった。

「ウォールストリートもリーダー不在だから今まで買収されなかったと思うわ」

 アーサーくんは意見を言った。

「私はリーダー不在の社会には反対である。しっかりとしたリーダーが社会を治めるべきだと主張する。国益を損ねる買収には応じないそういうしっかりした芯のあるリーダーが必要である」

 アデさんは続けた。

「バブル時代の日本は居酒屋中心の経済でした。居酒屋が第2の職場と言っていい程重要な場所でした。会社の従業員がお互いに飲み交わして上司も部下もそこでは本音を言い合って他の会社との人とも交流していました。

 関西で盛んな人情経営のようなことも大切です」

 アーサーくんは発言した。

「日本経済は今にも廃れると言われ続けながら存続している。経営者と従業員は家族というような温かい経営が企業を長く続かせてる」

つづく

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