〈28.セントラルパークでくつろぐ〉

 セントラルパークに行ってダイアナさんオススメの青空カフェに入った。すごくオシャレな雰囲気の中にオシャレな曲が流れる。


 僕は考えた。

「ニューヨークのダンサーや高校生を仲間にしたのはいいけど、どうやって協力し合おうか? 高校生たちをマンガ家として有名にしてあげたいな。」

 ダイアナさんは意見を言う。

「パブリックエネミーが歌ってた通り、見せかけだけ磨いて努力しない態度はダメよ。有名になりたければひたすら練習あるのみよ」

 僕も意見を言った。

 「他の民族のいい所を学ぶことも大切だと思う。日本人なら他の民族と仲良くしようとするよ。日本人は他の民族をバカにしないしゴミも捨てない。日本人は見かけはセクシーじゃなくても清潔で礼儀正しい。日本好きの高校生たちは治安がいいのがいいことだと認めてたよ」

 ダイアナさんは何度も同じこと聞いたというようなうんざりした顔をした。

 店内にはクーリオのギャングスターズパラダイスが流れた。僕はまた言った。

「クーリオがギャングスターズパラダイスで歌ったように自分を傷つけてるのは自分だと気付くべきだよ。」

 僕はふと考えが浮かんだ。日本人は理想なばかりじゃない。日本に観光に来ればみんな優しいけど日本で働くことになった途端厳しい現実が待ってる。学校ではいじめもある。日本に憧れる高校生にそういう日本の嫌な面もちゃんと伝えるべきだろうか?それとも日本の憧れる夢を守った方がいいのか?

 ダイアナさんはこう言った。

「アイスTが言ってる通りラップで大切なのは解釈よ。ラップが暴力的だと考えるのも1つの解釈にすぎないわ。ラップが抗議運動だというのも1つの解釈。ラップのおかげで黒人に希望が見えてるというのも解釈よ。

 ジェームズブラウンはマンガ家でいうと手塚治虫みたいな功労者よ。手塚治虫がマンガの基礎を作ったみたいに、ジェームズブラウンは黒人音楽の基礎を作ったのよ。そんなジェームズブラウンのことを知らずにニューヨークを平凡な街だと思ってるのはただの無知よ」

 ボビーマクファーリンのドントウォーリービーハッピーが流れた。この曲は「辛いことがあっても心配しないでハッピーに生きていればそのうちいいことあるさ」というような気持ちを歌った歌だった。

「私この曲嫌いよ」

「僕はこの曲好きだよ。

 ドントウォーリービーハッピーは僕が信じてる祈りの教えに近いと思う。人生楽しんでいればいつかは願いが叶うんだ」

「心配せずハッピーでいるだけで願いが叶うって言うの? そんなんで願いが叶うなら誰も苦労しないわ。」

 ルイアームストロングのワンダフルワールドが流れた。まほろちゃんは興味を持った。

「ワンダフルワールドだ。私この曲好き。」

 僕は言った。

「この曲はルイアームストロングが1番辛い時期に歌った歌でしょ? でもそんな時期に世界が素晴らしいと歌ったのは本音だったと思うな」

「そうかもね。私もこの曲好きよ」

 ダイアナさんは珍しく僕に共感した。

 カフェのBGMで晴れてハレルヤのインストゥルメンタルが流れ出した。僕は驚いた。

「あれっ!? なんでこの曲が流れるの?」

「どうしたの?」

 ダイアナさんは眠たそうな顔して聞いた。

「この曲は僕の好きな魔法陣グルグルのテーマソングだよ。ニューヨークのこんなオシャレなカフェで流れる曲じゃないよ」

 するとアンジュちゃんは、

「もしかしてカフェの店員さんが魔法陣グルグルのファンだったりして。」

 と言って笑った。

「そんな可能性は低いと思うけど、でもこの曲がかかってるってことはそうとしか思えない」

 キョロキョロしてる僕を見て店員さんが聞いてきた。

「お客さん、どうかしました?」

「なんでこの曲が流れるの?」

「ああ、ニューヨークのカフェでは定番の曲だよ。でも余りに定番すぎてこんな曲選ぶ人は凡人だね」

 すると近くにたまたまいたお客さんも

「そうだ。凡人だ」

 周りのお客さんさんが口々に「凡人だ」と言い出した。僕は何が起きたのか分からずにいると、

「誰が凡人だよ!」

 キングくんが現れた。僕は驚いた。

「キングくん、何でここにいるの?」

 するとさらにアーサーくんやアンさんもやってきた。

「やれやれ、君は相変わらず鈍感で凡人だな」

 アーサーくんは僕を見て呆れたように言った。

「たかひろくん、元気?」

 アンさんは挨拶した。

「アーサーくんにアンさんも!」

 僕は考えた。

「もしかしてサプライズ?」

 ダイアナさんがサプライズしてくれたみたいだった。

「私がまほろちゃんとアンジュちゃんに頼んでカフェクラブのメンバーに声をかけてもらったの。みんなでまた集まろうって」

 まほろちゃんは言った。

「そして誘いに乗ってくれたのがアーサーくんとアンさんとキングくんだった訳」

「さっきの曲をかけようってアイデア出したの、俺。」

 キングくんはニッと笑った。

「実はこの店、俺の知り合いがやってる店でたまにフラッシュモブをやってんだ」

 フラッシュモブとは大勢で仕掛ける大掛かりなドッキリみたいなもの。

「ドッキリだったんだ」

「大成功ね」

 ダイアナさんは笑った。アンジュちゃんも喜んだ。

つづく

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