〈ピンキーに会いたい 後編〉
ピンキーのよしこちゃんがDJを務めながらラジオの前のリスナーと目の前にいる観客に向かって挨拶する。
「こんばんは。よしこで~す。週刊ピンキーストリートの時間だよ~!さて今日の1曲目はもちろんこの曲。
レッツゴぉ~♪ピンキーストリート。」
よしこちゃんは曲を流すと同時に、自分の声や観客の声もラジオに聴こえるようにすると、曲の中の歌に乗せてよしこちゃんと観客が一緒に歌い出し、それをラジオに流した。
「♪ピンキー ピンキー shalala ピンキー ピンキー shalala♪」
僕も一緒に楽しく歌った。
曲が終わるとよしこちゃんは観客の方を見た。
「さて今日は観客席の中に素敵な方が紛れ込んでるみたいですね。」
よしこちゃんが僕の方を見るとみんなの視線が僕に集まる。
「えっ!?僕?」
僕とサキちゃんはスタジオに入れてもらった。
「今日は未来少年さんが来てくれました。」
「僕ってピンキータウンで知られてるの?」
「もちろん。未来少年さんはピンキータウンを人間界にも作ろうとしてるんですよね。」
「そんなことまで知られてるなんで思いもしなかったな。」
観客の女の子の1人から質問が来た。
「未来少年さんの好きなタイプはどんな子ですか?」
「僕はピンキータウンの女の子全員と付き合いたいな~。」
「それはダメですよ。」
サキちゃんは反対して困った顔したけど、他のみんなは喜んで騒ぎ出した。
「アタシもつきあいた~い。」
「アタシと結婚して。」
「キスして、キス。」
僕が投げキッスすると女の子はキャーキャーと黄色い歓声をあげた。
「モテてるね。」
僕が自慢げな顔するとサキちゃんは、
「やれやれ。」
呆れ顔して肩をすくめた。
「未来少年さんはピンキータウンのどこが好きなの?」
よしこちゃんの質問にこう答えた。
「やっぱり平和でのんびりしてる所かな?学校にも行かないでいいから年中好きなことしていられるし、それに女の子もカワイイし、なによりみんな笑顔なのがいいよね。」
みんな笑い出した。
「ほらこの屈託のない無邪気な笑顔。(笑)」
「ホント、そうよね。」
ラジオが終わり、浜辺で夕日が沈むのを眺めた。うっとりするような景色。
「夕日から光の道ができてる。」
僕とサキちゃんは街に戻った。すっかり薄暗くなってて街灯の灯りがポツポツとつき始めていた。公園のブランコに座ってブランコをユラユラと揺らしながら会話した。
「今日はありがとう、サキちゃん。楽しかったよ。」
「どういたしまして。私も楽しんでもらえて嬉しいですよ。」
僕はちょっと暗い顔してうつむいた。そんなサキちゃんはふしぎに思って顔を覗き込む。
「あのさ。昨日ある人と口論になっちゃってさ。
僕がピンキータウンを作りたいっていう夢を語ったの。そしたらね、そんな夢物語ばかり語ってちゃダメだって怒られちゃったの。」
「人のいうことなんて気にしないでいいよ。未来少年さんは自分の信念を貫けばいいと思うよ。」
「それはいいんだけどね。」
「けど?」
「別にその人悪気があって言ってる訳じゃないんだ。僕のためを思って助けようとしてアドバイスしてるだけなの。ただその助け方が現実主義的っていうか……。」
「ピンキーを信じない?」
「そう。夢や祈りを信じてくれないの。」
「でも大切な友だちなんだね。」
「ねぇ。ピンキーってお願いする時「お願い、ピンキー!」って唱えるんだね。ピンキーがピンキーにお願いしてる。まるで自分にお願いしてるみたい。」
「ピンキーは願いを叶える妖精で、叶えてもらった人の一部がピンキーになって叶える側になるのよ。」
「つまりピンキーにもなれるの?」
「うん。」
サキちゃんは笑顔で頷いた。
「ピンキーってどこから来たの?」
「ピンキーはこんな妖精がいたらいいなっていう、人の願いから生まれたのよ。」
「空想の産物だったの?」
「そう。」
「そっか。今まで僕はピンキーっていう妖精がスピリチュアルの世界に実在するかどうかばかり考えてたけど、単なる空想の産物が信じる力によって魂を持つこともあるんだね。」
「そうなの。だから信じることを諦めないで。ピンキーはホントにいるよ。」
僕はブランコを少し強くこいで前に飛び出し大きく伸びをした。
「よ~し。ピンキータウン作り、頑張るぞぉ~!」
▽ ▽ ▽
気付くと僕は布団の中で目覚めた。もう朝だった。
友だちからメールが来ていた。
「昨日はいろいろ言ったけど、ピンキータウンを作る夢、俺も応援してるよ。頑張ってね。」
おわり
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