〈ククリちゃんとふしぎな町⑥〉

 僕たちはマグマの上の橋を渡る。ひつじさんはビクビクしながら渡ったけど、ククリちゃんとニケくんは楽しそうだった。

「この橋には魔法がかかってるデシからマグマの危険はないデシ。」


 そこからしばらく歩いた所で大木が立ってて、その木は大きなウロの穴が空いてた。ニケくんはそれを見て面白がる。

「やけにユニークな形の木だな。」

 すると、

「お〜い、こっち来〜い。」

 木から声がした。

「木の中から声がする!」

 ひつじさんはまたビックリした。僕は恐る恐る中を覗いてみた。けど何もない。

「ここだよ。私は木だよ。」

「わっ、木が喋ってる!」

 僕もビックリした。

「木さん、どうしました?」

「さっきは植物に話しかけてくれてありがとう。僕はその植物の親だよ。」

 僕は気付いた。

「さっきの異様に美味い店にいた植物のことだ。」

「僕はいろんな人の声を代弁出来るよ。誰か話したい人いるかい?」

 トマスキーくんが名乗り出た。

「僕トマくんと喋りたいです。」

「いいよ。トマくん。」

 木さんの呼び声の後すぐにトマくんの声がした。

「はい、こんにちは、トマスキーさん、みなさん、元気ですか?」

 ククリちゃんは驚いた。

「ホントにトマくん?」

「そうですよ。トマです。お久しぶりです。ククリさん、ニケさん。」

 トマくんはトマスキーくんとそっくりの礼儀正しい人だった。


 するとチクリ魔ちゃんは、

「お前ら、そんなのと喋ってる場合じゃないデシ。早く行くデシ。」

 でも他のみんなはトマくんと喋りたがる。

「すいません、トマくんと話す機会はあんまりないので。」

 トマスキーくんは懇願した。

「仕方ないデシ。みんなを置いてく訳にいかないデシ。今日の所は聞いてやるデシ。」


「ありがとう、僕が話す機会を与えてくれて。僕はいつもここにいるみんなのことを見守ってますよ。

 最近トマスキーさんはペットボトルでイカダ作るアイデアを思い付きましたね。」

 トマスキーくんは返事した。

「そうでした。ペットボトルをいっぱい集めて結び付けて水に浮かべたらイカダになるってアイデアを話してましたね。」

「そういう実験を沢山するといいですよ。

 隆弘くんは最近、アートを描きましたね。夢文字っていう文字で描いた人が大勢出てくる絵です。」

「よく知ってるね。確かにそんな絵描きました。」

 僕は答えた。トマくんが知っててくれて嬉しかった。

「棒人間も描かれてます。」

「トマくんのつもりで描いたんだよ。」

 実はトマくんは魔法陣グルグルの原作では棒人間に描かれることがあって、それを真似してファンもトマくんを棒人間のように描くことが多かった。

「嬉しいです。僕は自分のことを棒人間に描いてもらうのは気に入ってますよ。キタキタオヤジさんを呉の字に描くのと同じですよね。」

 魔法陣グルグルのキャラ・キタキタオヤジは踊ってる様子が「呉」の字に似てるということでファンの間では「呉」と書き表わすことが流行ってた。

「トマくん、ありがとう。」

「ありがとう。また話したくなったら植物に声かけて下さい。植物が代弁してくれますよ。」

 トマくんと木さんと別れた。


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?