〈ピンキーに会いたい 前編〉
「未来少年さん、未来少年さん。」
ある夜、僕が布団の中でまどろんでいると誰かの声がした。目を開けてみると女の子がそばに立っていたので、僕は驚いて上半身起き上がった。
「こんばんは、未来少年さん。」
「ピンキー!?」
ピンキーというのは僕の好きな人形。目の前にいるのは紛れもないピンキーだった。
「一応初めまして、私の名前はサキ。いつも遊んでくれてありがとう。これからあなたを素敵な場所へご招待いたしま~す。」
「へーんしん!」
サキちゃんの体から光が出てきたかと思うと、私服から天使の服に変身した。そして僕の手を取ると、僕とサキちゃんは異次元の世界に飛んでいった。
「わぁ~。」
「きゃはっ(笑)。」
そして気付くと僕はおしゃれな街に立っていた。頭上にはピンキーの生みの親vance projectやピンキーのアニメを作ったgonzoなどの沢山の看板があった。歩道にはおしゃれな女の子ばかりが歩き回っている。
「ここってもしかして?」
「そう。私たちの街ピンキータウンなので~す。」
よく見ると僕もパジャマから普通の服に変わってた。
「へぇ、僕も一度来てみたかったんだ。」
「さあ、ピンキータウンへご案内しますよ。レッツゴぉ~♪」
サキちゃんは僕の手を引っ張って歩き出す。
まずは洋服屋さんに入った。店員のランちゃんが迎えてくれた。
「わぁー、本物のランちゃんだ。」
そして洋服を見てまた驚いた。
「これ本物のダメージジーンズじゃない。ヴィンテージものがこんな完璧な状態で売られてるとは。」
さらにまたいいものを見つけた。
「これは本物の獣から獲った皮ジャンだ。」
それから麻製のシャツを見つけた。それは僕の好きな緑色だけど、染めたんじゃなくて元々の麻の色をそのまま使った緑色。
僕が着替えて決めポーズを取ると、
「ほぉ~。」
サキちゃんとランちゃんは感嘆の声を出す。
「こういうワイルドな服をオシャレに決めると、ワイルドさとオシャレを兼ね備えてる感じでカッコいいよね。」
僕は気に入ったのでそのまま着ていくことにした。
次におもちゃ屋さんに入る。お店の中に歩いていくと、
「とんとん。」
という声とともに背中をつつかれて、振り向くと、
「いらっちゃ~い。」
店員のルーちゃんが迎えてくれた。
「ぬいぐるみはちゅき?」
僕はルーちゃんに案内されてぬいぐるみコーナーに行く。僕はイルカのぬいぐるみを買った。
「なんでそれを選んだんですか?」
「この口元、口角がキュッと上がった所がサキちゃんの口に似てる。」
「なっ!?」
サキちゃんはうろたえた。
「あとルーちゃんを買いたい。」
「未来少年さん、なんてこと言うの?」
サキちゃんは驚いたけどルーちゃんは、
「はい、どーぞ。」
といって自分そっくりの人形を差し出し、僕は受け取る。
「なんだ。人形か。」
僕とルーちゃんは笑った。
「えへっ。」
「メイちゃんやケイイチロウくんのもあるね。」
カフェで食事することにした。買った品物の入った紙袋を隣の席にいっぱい置いて座る。
「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」
僕もサキちゃんも店員のノリコちゃんにストロベリーパフェを頼む。僕はサキちゃんの食べっぷりに驚いたけど、サキちゃんは平然とした顔してこう言う。
「ここではどんなに食べても太らないのよ。」
「それが最高だよね。」
僕もいっぱいおかわりした。
街には他にも観光客らしい人たちがピンキーに街案内されてた。
「ピンキー好きな人を次々に呼び寄せてるんだね。」
「未来少年さん、この後どうしますか?」
「そうだね。海とか行ってみようよ。」
「じゃあ任せて。」
サキちゃんが杖を振るとまたサキちゃんの体が光だした。
「お願い、ピンキー!」
かけ声とともに目の前に2台のバイクが現れた。
「さあ、これに乗って海に行きましょう。」
「すごいね。」
感心する僕にサキちゃんはさらに自慢げに言う。
「どれだけ乗っても燃費はゼロだから乗り放題ですよ。」
僕たちはバイクで街を走る。花屋の角で曲がり、信号の先にあるひまわり畑を全速力でダッシュ。
そして視界が開けるとそこは海だった。
「うわぁ。綺麗。」
海がキラキラ光ってて、大勢の水着の女の子が海水浴してた。
「ピンキータウンって常夏なの?」
「一年中あったかいのよ。」
みんな太陽の光を浴びてるはずなのに全然日焼けしてなくて、綺麗な白い肌してた。
「どれだけ太陽を浴びても焼けないんだね。」
「太陽なんかに負けないよ。」
僕たちも水着に変身して泳いだ。
「あっ、未来少年よ。」
女の子の1人が僕に注目する。僕はこの世界ではそこそこ知られてるみたいだった。
夕方になって遊泳時間の終わりを告げるアナウンスが流れる。すると海水浴してた女の子たちは一斉に着替えてからある場所へ向かった。
「みんなどこ向かってるの?」
「近くにラジオ局があってこれから公開生放送が始まるのよ。」
僕たちもついていく。
つづく
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