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アイデアを生むためのアイデア・プロセッシング

 アイデア・プロセッシングは、「情報素材」からアイデアを得るための手続き、「脳の外化」であり、脳の外に記述したテキストやコンテキスト、構造を含めて脳の一部として連携し、思考をまとめるプロセス
 「脳」は「断片化された情報」と関連するものどうしを関係づけし、「意味ネットワーク」を構築する基本的な機構をもつ。このヒトエンジンの能力を活用して、情報を関連づけ、編集することにより「意味ネットワーク」を構築し、アイデアを整理する。このプロセスを通じて我々の脳は、情報間に関係とパターン=妥当な道筋 を見出す。時にそれらは論理的な帰結であり、エネルギーを最小化する最短路であり、仮説を、そして妥当な解であるという「閃き」をもたらす。

●ビジョンドリブンな思考法

 アイデア・プロセッシングは、理想状態(仮説)を先にうみだすビジョンドリブンな思考法だ

例えばiPhoneを創造するとき:

「数年後には、誰もが片手に携帯端末のような手軽さで、情報端末を使っている」

というビジョン(仮説)が先に立ち、皆が情報端末を持つような時代には、どのような生活をしているのかを考える。

 問題解決型のアプローチや論理的な思考プロセスに慣れている人ほど、ビジョンが生み出される理由を問わずにはいられない。どんなに不安でも、論理的な問いや、現在からの積み上げ式の思考をいったん捨てることが肝心で、問題の積み上げでは見えてこないジャンプする発想が必要だ。ヒトには未来のビジョンを見通す能力がある、目隠しをして論理だけで進むよりも、先にゴールがわかっている方がより短距離を選んで進むことができるのだらから。

●アイデア・プロセッシングの原則

 ・アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない[1]
 ・30年未来、新しいサービスのもととなる技術は今ここに必ずある

●準備するツール

 アイデア・プロセッシングの手法を開拓してきた先人たちが、大きなカードを持ち歩いてまで解決したかった情報の整理と検索。現代では、全文検索でページを串刺しして散策できる「ノートツール」、思いついた時にすぐパソコンの「ノートツール」とメモを共有するスマホの「メモツール」、電子的な切り貼りを可能とするスマホの「OCRツール」で、脳と外部記憶との連携を実現することができる。

1)メモツール
・スマホなど常時持ち歩き、すぐにメモをできること
・メモをすぐにパソコンと連動できること
・音声認識で入力できるとよい

2)ノートツール
・全ページにわたっての全文検索ができること
・パソコン上で利用でき、OneNoteやアウトラインプロセッサなど、ページやページ内での階層構造(アウトライン)を表現できること
・下位階層ごとまとめて移動できること
 ex. 大項目をドラッグして移動すると、その下の中小項目もいっしょに移動する
・スマホやiPadなどと連動できること

3)OCRスキャナ
・必要に応じて書籍などから文字をスキャンしてテキスト化してできること
・手軽さからスマホアプリがよい
・スキャンしたテキストをノートにコピペできること

4)画像共有
・Googleドライブなど、スマホで撮った写真を手軽にパソコンに共有できること

●アイデア・プロセッシングの進め方

 アイデア・プロセッシングでは情報の収集、分解、再構築というStepによりアイデアの形をつくっていく。特に、Step2とStep3は順番に進めるのではなく、ユーザニーズは?、収益性は?といった問題解決型のしがらみに縛られず、自由に泳ぎ、行き来し、しだいに形づくっていく。
 適当なタイミングで具体化が必要となることから、Step4と5を通して具体的なアウトプットに繋げていけばいい。
 余裕を残し、常にアイデア・プロセッシングを回すことが肝要だ。

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アイデア・プロセッシング用語解説:
・ノート: ノートツール
・ページ: ノートツール上のページ、分類の単位
・階層構造: アウトライン構造、分類を階層的に表示
・情報素材: 段落などのを単位とする文章で文節、区分けしたテキスト。1枚の画像。1枚の絵。
・1行見出し: グループ、情報素材、分類を1文で表現したタイトル。
 ※「内容」の意味のエッセンスをとらえて圧縮し、できるだけ柔らかい言葉で表現する、過度に抽象化しないこと。
・内容: 「1行見出し」に配置した「情報素材」群
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Step1: 課題抽出・課題設定
 ⇒アウトプット: 課題
 創造的に「課題」を設定するフェーズ。「何か問題を感じる」ことを始点として、「課題候補」を書き出し、編集して「仮課題」を設定し、最後に上位課題がないかを検討してた後に「課題」を設定する。

Step2: 情報散策
 ⇒アウトプット: 情報素材
 情報を散策して、「情報素材」を生成するフェーズ。書籍などの情報を散策し、メモ・書籍などから情報を収集、文節・区分けして「情報素材」を生成する。
 
Step3: グループ編集、離合集散、分類と階層化
 ⇒アウトプット: 分類・階層化した情報素材
 ページ・情報素材を編集して分類・階層化するフェーズ。関係の近いページ・情報素材を集め、グループ化し、「1行見出し」と「概要」をつけて分類、階層化、俯瞰して再編集する。

Step4: シナリオ・物語編集
4-1)「情報素材」を言葉にする
 ⇒アウトプット: 文章化した情報素材
 図、絵、テキストを用いて小規模な文と文脈を具体化するフェーズ。文章として記述することにより、アイデアを整理し、論理的に意味を持つ「情報素材」を生成する。

4-2)アイデア編集
 ⇒アウトプット: アイデアのクレーム(短文)、ネーム(呼称)
 「情報素材」をもとに、アイデアを形成するフェーズ。背景、テーマ、材料・素材を書き出し、着想を「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で整理して、クレーム(短文)とネーム(呼称)を生成する。

4-3)コンセプト編集
 ⇒アウトプット: コンセプトの説明文
 アイデアの「クレーム(短文」と「ネーム(呼称)」を起点にコンセプトを具体化するフェーズ。6W1Hで表現し、曖昧な言葉を具体化し、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」で表現して、コンセプトのクレーム(短文)としてまとめる。

Step5: ビジネス展開
 ⇒アウトプット: 製品開発企画書、販売可能な製品
 製品の特徴となる技術・エンジンやビジネスモデルの具体化、投資計画としてマーケティング分析、投資対効果の算出、保守運用計画、撤退条件、予算の獲得、プロトタイプ開発、製品の開発、試行運用、販売などを行うフェーズ。

 常にメモを記録し、情報散策してノートに記録し、編集することを自然に繰り返すようになるといい。本書ではStep4までを扱う

参考書籍:
[1] ジェームズ・W・ヤング(1988), "アイデアのつくり方", 今井茂雄訳, 阪急コミュニケーションズ
[2] 川喜多二郎(1976), "発想法 改版 -- 創造性開発のために --", 中央公論新社
[3] 梅棹忠夫(1969), "知的生産の技術", 岩波書店
[4] 外山滋比古(1986), "思考の整理学", 筑摩書房
[5] 松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫








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