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1994年から描く未来:曖昧な要望に応える通信サービスアシスタント(1994年)

第三章 1990年から描く未来
 本章では「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルとアイデア・プロセッシングのサンプルとして、1990年代に読み解いた未来(現代ではあたりまえとなったサービス・コンセプト)を例として紹介する。
 今あるコミュニケーション、ネットワークをベースとして次のメタ・コミュニケーション、メタ・ネットワークを問い続けることにより、次の時代のサービスに気づくことができる。
3.2 アイデアとプロトタイプで描くもの
 本節では、商品化にいたらなかったアイデアやプロトタイプについて、「コンセプト編集」に焦点をあてて例示する。
・動的に適応する仮想コンピュータ(1990年)
⇒社会変化に適応するバーチャル・オフィス(1992年)
・曖昧な要望に応える通信サービスコンサル(1994年)

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曖昧な要望に応える通信サービスアシスタント

●背景:

 日本で初めてのインターネット・サービス・プロバイダーがサービスを開始した2年後の1994年。通信サービスが複雑化するに伴い、通信サービスを利用することが難しい時代となっていく。このため、利用者の曖昧なサービス要求を理解して、通信サービスの提案や操作補助を行うインテリジェントなアシスタントのサポートが必要となる。

●お題: 

⇒到達フェーズ:プロトタイプ開発
 通信サービスへの利用者の曖昧な要求を獲得し、提案する

○前提: ヒトの要望は曖昧

 ヒトは、知識不足であることや、言葉の欠落、矛盾、誤りなどさまざまな理由により、自分自身が何を望んでいるのかをうまく表現できないことが多い。

○通信サービスとは:

 通信機能によって、人のコミュニケーションにかかわるエネルギー消費を効率化するサービス

例えば電話では:
 通話: 「遠距離のコミュニケーション」の効率化
 電話の転送: 「通話のかけなおし」の効率化
 住所録からの発信: 「通話相手の電話番号を探し、入力する行為」の効率化


●言葉で表現する

○アイデアを言葉で表現する

 ・ネーム(呼称): 通信サービス・アシスタント
 ・クレーム(短文): 
 「通信サービス・アシスタント」は、通信サービスの利用状況をウォッチして、利用者毎に最適な通信サービスの利用や操作を推論して提案する。

○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルでコンセプトを表現する


■構成要素
□技術・社会的背景:
 ・経済のグローバル化、環境変化への即応要求に応える通信サービスの急激な発展と提供、それにともなう通信サービス利用の複雑化

ミクロなコミュニケーション 
 ヒトとヒトの通信サービスを介したコミュニケーション

□通信サービスの利用環境:

 社会環境の変化、ユーザ要望の多様化、経済のグローバル化に適応する企業・オフィス環境

□メタ・コミュニケーション:

 通信サービス利用履歴、提案結果をもとに推論ベース群が推定する利用エネルギーを最適化した「理想通信サービス利用ネットワーク」

□フィードバック・ループ、動的適応:

 利用者の「通信サービス利用履歴」、「通信サービス提案要望」、「提案履歴」、それにもとづいて「推論ベース群」が構築する「理想通信サービス利用ネットワーク」イメージ、それにもとづく「通信サービスの提案」、複数の「推論ベース群」の重みづけの調整。
■ネットワークの特性 
□利用者の通信サービスへの動的な多重帰属:
 通信サービスコンサルの提案により、通信サービスの利用が促進され、各利用者の通信サービスの利用が動的に変化

□通信サービス提案のための記憶:

・短期記憶: 各利用者の通信サービス利用状態
・長期記憶: 
 - 通信サービス利用履歴
 - 利用者間距離(同じ通信サービスを利用しているほど近い)
・論理記憶:
 - ルールベース
  要求とサービスの対応を重みつきルールで記憶
 - 類似ベース
  通信サービスの利用方法が似ている利用者群を常時分別
 - ニューラルネット
  利用してもらえた通信サービスの提案パターンをニューラルネットにより学習
    
□サービス提案の固定化と変異要素:
 要求に対するルールベースが学習により固定化してしまう可能性があり、変異要素を入れるなど工夫が必要


●サービス・イメージ

1)顧客要望推定
 次の3つの要素を演算した結果を「顧客要望」とする
 ①ユーザ要求入力、②現在の通信サービス利用状態、③通信サービス利用履歴

2)通信サービス提案ロジック
 通信サービス提案は、次の3つの推論ベース群のうちマッチ度の高い論理を適用する。マッチ度は各推論毎に通信サービス提案のヒット率をもとに強化学習。「推論統括」がコントロール。

(1)ルールベース
 要求とサービスの対応を重みつきルールで記述、通信サービス提供者が初期値を入力、提案結果によるルールを修正
(2)類似ベース
 通信サービスの利用パターンが似た利用者群をもとに提案、現代のレコメンドエンジンに近いロジック
(3)ニューラルネット
 提案により利用してもらえた通信サービスをニューラルネットにより学習、未成熟な分野のため参考ロジックとする

3)通信サービス・アシスタントのマンマシン・インタフェース
 - 6W1Hなどの単語選択入力
 - 日本語音声合成
 - 発話表情ができるアバター

通信アシスタントイメージ

      通信サービス・アシスタントのサービスイメージ


●現代の類似サービス:

 iコンシェルにはじまり、スマートフォン操作のSiri、ホームコントロールのアレクサ、ドコモのしゃべってコンシェルなど。他、ミラーワールド、AI、指令AI。



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