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「未来を読み解く」ためのお勧めの11冊

『フューチャー・リテラシー』では多くの参考書籍をもとに執筆しましたが、初学者のためにこれは読んでおいて欲しいという総合的な視点で書かれた書籍を紹介します。

 おすすめ 11冊: ①~⑩
 副読本  15冊: 1)~15)

近年は、多くの文字を読むことが苦痛な傾向にあるというのに、未来を読み解くためになぜ本を読む必要があるのだろう。

レオナルドダヴィンチになれとは言わないが、未来を読み解くためには総合学としての視点・視野が必要になる
なにより良書に出会うことができればヒトの考え方や言葉を借りることができ、思考や表現にかかる時間を大幅に短縮できる

未来のために書籍を読む必要:
1)基礎知識

ヒトの未来のベースとなる基礎知識として、「未来」は、生命進化、ヒトの脳と体、社会形成(人文科学、歴史、経済、組織)の「過去」から「現在」の延長にある。

2)メタファー
世界は、アーキタイプ(原型)・プロトタイプ(類型)・ステレオタイプ(典型)に満ちあふれている。発明や創造にメタファーが有効なのは、原初から繰り返される構造があるからだ。

3)探索・散策・探求
ある程度、基本的な書籍を押さえておくと、しだいに自分の求めるものがわかってくる。そうなればしめたもので、内なる欲求に従って広く探査・散策・探究を進めればいい。

ゼロから探すのは大変だ。おすすめの書籍をきっかけとして、幅広い視点と統合的な視点を得て、未来を読み解いただければと思う。

1.総合

⓵「知の編集工学」、松岡正剛

松岡正剛(2001)『知の編集工学』朝日新聞出版

「フューチャーリテラシー」必読書、本書全般にわたる参考書

・編集とは「該当する対象の情報をよみとき、それを新たな意匠で再生するもの」
・対象は、映画や書籍やニュースだけではない、企画書、営業報告書、イベント、都市計画、政策、料理、プログラミング、ラグビー、子育てなど、ヒトがかかわる知的創造全般にかかわる行為を「知の編集工学」として語る。
・我々が情報の未来を読み解く際に、分節、関係、再編集をどのように扱っていくのかと思索するときのヒントが満載されている。

副読本:
1)ケリー,ケヴィン
(1999)『「複雑系」を超えて―システムを永久進化させる9つの法則』アスキー

ケヴィン・ケリーの原点。複雑系の入門書。


2)Webページ:松岡正剛の千夜千冊 

未来を読み解こうと検索していると、結局ここにもどってくる
本を探す際におおいに活用
テーマ毎に書籍化されている

3)今井賢一/金子郁容(1988)『ネットワーク組織論』岩波書店

「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルの原点
古い本だが、複雑系をふまえた未来につながる組織論の基礎がここにある「ティール組織」を読むよりまず本書


2.歴史総合

②『ビッグヒストリー』、デヴィッド・クリスチャン

クリスチャン,デヴィッド/他(2016)『ビッグヒストリー:われわれはどこから来て、どこへいくのか』明石書店

「フューチャー・リテラシー」必携参考書!

・宇宙創生から2010年、そして未来まで。百科事典サイズで、全400ページにわたる壮大な歴史書
・各章の最初はいくつかの問いから始まる
 - 都市とは何か?国家とは何か?農耕文明とは何か?
 - 都市が生まれるためには、どのような技術の進歩が必要だったのか?
点通り一辺倒の教科書的なものではなく、統合的な視点で最新の情報をもとにした著者たちの考察がふんだんに盛り込まれている。
例えば、
「農耕民が誕生したのは、狩猟採集民が豊かな狩猟採集生活という『定住化の罠』にとらわれたから。」

あわせて『オリジン・ストーリー』『「未来」とは何か』も読んでみるといいだろう。

③『情報の歴史』、松岡正剛

松岡正剛監修/他(2021)『増補 情報の歴史:象形文字から人工知能まで』NTT出版

「フューチャー・リテラシー」必携書、一家に一冊!

7000万年前から2020年までの人類史、世界史、宗教、政治、経済、科学、芸術などを網羅してトピックを縦横に整理した統合年表
歴史をひもとくときに、同時に何がおきているのかを世界の東西にわたり確認するために必須

3.生命

④『地球と生命の誕生と進化』、丸山茂徳

丸山茂徳(2020)『最新 地球と生命の誕生と進化:[全地球史アトラス]ガイドブック』GEOペディア,清水書院

生命、進化、地質学、宇宙をクロスオーバーさせて、生命の謎を解き明かす!

 統合的視点で生命誕生、大量絶滅、進化の歴史を読み解く

地球誕生~地球消滅までのCG映像

副読本:
4)レーン,ニック(2016)『生命、エネルギー、進化』みすず書房

生命エネルギー生成の仕組みから、生命誕生の場所と方法を読み解く

5)マクファーランド,ベンジャミン(2017)『星屑から生まれた世界 進化と元素をめぐる生命38億年史』化学同人

生命誕生も、生命進化も化学的な限られた選択肢の中から発生する
周期表をもとに、なぜその元素が利用されるのかを解説


4.脳

⑤『進化の以外な順序』、アントニオ・ダマシオ

ダマシオ,アントニオ(2019)『進化の意外な順序:感情、意識、創造性と文化の起源』白揚社

ヒトの「感情」「思考」の仕組みを読み解く

ソマティック・マーカー仮説の神経学者
感情の役割、イメージ形成から言語化・理解、原始生命から神経形成についての独自の見解が面白く、ネットワーク社会におけるヒトの脳のアウトソースについて考える際に参考になる

 
副読本:
6)大隈典子(2017)『脳の誕生:発生・発達・進化の謎を解く』筑摩書房

脳の発生、進化、誕生を分かり易く解説

7)坂井建夫/他監(2011)『ぜんぶわかる脳の事典:部位別・機能的にわかりやすくビジュアル解説』,成美堂出版.

脳内の名称がわからなくなったらこれ
脳の仕組みが分かり易く解説されている

5.人文・社会科学

⑥『銃・病原菌・鉄』、ジャレド・ダイアモンド

ダイアモンド,ジャレド(2015)『若い読者のための第三のチンパンジー:人間という動物の進化と未来』草思社

世界中の人類史観を変えた必読書。統合視点の入門書。

・地理、食料、家畜と病原菌、文字、部族から国家の形成、なぜ中国ではなくヨーロッパが主導権を握ったかなど、総合的な視点から人類史を分析
・原初生活を残す原住民の観察をふまえ、
・ヨーロッパ人が優位となったのは、ユーラシア大陸が生産性の高い穀物と家畜に恵まれて人口が増加し、地理的に東西に広がるため多種の文化の相互作用により洗練し、激しい競争(=戦争)が繰り返されたから
・コミュニケーションする集団が大きいというのはそれだけで有利
・そして、古くから家畜とすごしていたため病原菌に耐性があり、特にアメリカ侵略において病原菌を武器として勝利した


副読本:
8)アレン,ロバート・C.(2017)『世界史のなかの産業革命:資源・人的資本・グローバル経済』名古屋大学出版

蒸気機関が発明されたから産業革命が起きた?そんなわけがない
資本主義、技術の発展が産業革命を契機とするならば、それがなぜこのタイミングでイギリスで起きたのかを広い視野で知る必要がある

⑦『文化がヒトを進化させた』、ジョセフ・ヘンリック

ジョセフ,ヘンリック(2019)『文化がヒトを進化させた:人類の繁栄と<文化-遺伝子革命>』白揚社

ヒトと文化、集団とコミュニケーションの絡み合う共進化が、過去・現代・未来の歴史をつくる

マクルーハンのメディア論、ドーキンスの利己的な遺伝子におけるミーム(文化遺伝子)を包括
文化の対象:道具、技術、知識、ノウハウ、社会習慣・規範、宗教、芸術
ヒトが文化を形成・維持するためには、「集団の規模」「結びつきの強さ=集団のコミュニケーション能力」が必要条件となる


副読本:
9)マクルーハン,マーシャル(1986)『グーテンベルクの銀河系:哲学人間の形成』みすず書房.

未来を考えるための必読書
「文化がヒトを進化させた」に続いて読んで欲しい
ヒトとメディアは共進化する、
活字人間、視聴覚人間、新しいメディアがヒトの思考を変え、新しいメディアが古いメディアを衰退させる、ヒトの書籍離れを予言


8)オング,ウォルタ・J.(1991)『声の文化と文字の文化』藤原書店

マクルーハンを読んだら、これ!。そして、『ネットバカ』、ニコラス・G・カーへと続く
ヒトの思考の変化を追って未来を考えるためには、「文化がヒト~」、「グーテンベルク~」、「声の~」は読んでおく必要がある

可能ならば「身振りと言葉」、アンドレ・ルロワ=グーラン(1973)まで読み進めて欲しい


6.経済

⑧『やさしい経済学:しくみがわかる1、2』、池上彰

池上彰(2013)『やさしい経済学1:しくみがわかる』日本経済新聞出版社.
池上彰(2013)『やさしい経済学2:ニュースがわかる』日本経済新聞出版社.

丁寧に優しく正しく経済の歴史を読み解ける

経済学の初心者が教科書を読んでも何も得られない。かといって「富国論」や「資本論」をいきなり読んでも、何のことやらと思ったらこれ
1と2があるが両方読んでもたいした時間はかからない
アダム・スミス、マルクス、ケインズ、フリードマンを中心に経済学の歴史から学び、世界恐慌やバブルなど現代に続く歴史を概観する

副読本:
9)池上彰(2017)『池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」』集英社

「やさしい経済学」をよんだら本書も目を通しておこう

10)ケインズ,ジョン・メイナード原著/山形浩生要約・翻訳(2011)『ケインズ雇用と利子とお金の一般理論:要約』ポット出版

巻末の経済史の読み解きが軽快で面白い
もちろん、読みにくい「一般理論」の概要も把握できる

11)ボールドウィン,リチャード(2018)『世界経済 大いなる収斂:ITがもたらす新次元のグローバリゼーション』日経BPM

未来の社会を考えるときに、グローバル経済のおかれている状況について知っておきたい


7.アイデア・プロセッシング

⑨『発想法』、川喜多二郎

川喜田二郎(1976)『発想法:創造性開発のために(改版)』中央公論新社

野外科学のためのアイデアの整理法、KJ法はここから生まれた
ブレーンストーミング、デザイン思考の原点

KJ法で知られる川喜多二郎、僕らの知っているKJ法はほんのサブセットだ
筆者自身の野外観察の体験から、ありのままの自然を観察して得た情報を集め、整理・分類・保存、要約化、統合化、物語化について丁寧に解説
デジタルネイティブをフィールドワークしよう

副読本:
12)梅棹忠夫(1969)『知的生産の技術』岩波書店

脳のアウトソースに関するカード整理の記述がいい
知的生産にからめた作者の考えの雑記、いろいろと示唆にとんでいる
手帳、カード、切り抜き、整理、読書、原稿、文章など多岐にわたる
自分なりの思考スタイルを獲得するために読んでおくといい

13)外山滋比古(1986)『思考の整理学』筑摩書房

「知のエディターシップ」を軸とする、アイデア整理の基本3冊目
エッセイ本のような軽快な流れの中で、思考の整理について示唆に富む
「情報の"メタ"化」など現代・未来についてのヒントももらえる

8.計画されている未来

⑩『未来創造の白地図』、川口信明

(川口信明(2020), "2060 未来創造の白地図 :人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる", 技術評論社)

計画されている未来本はこれ一冊でいい

実際の企業やスタートアップの事例がふんだんに盛り込まれている


副読本:

14)「インターネットの次にくるもの」、ケヴィン・ケリー(2016)

「フューチャー・リテラシー」につながる未来読解者にして、『Wired』誌の創刊編集長ケヴィン・ケリー
未来を12の視点で整理する、未来整理の手本
(BECOMING、COGNIFYING、FLOWING、SCREENING、ACCESSING、SHARING、FILTERING、REMIXING、INTERACTING、TRACKING、QUESTIONING、BEGINING) 

続けて、テクノロジーを複雑系ネットワークとしてとらえる『テクニウム』も読んでおきたい。

8.近未来

⑪『デジタルネイチャー』、落合陽一

落合陽一(2018)『デジタルネイチャー:生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』PLANETS/第二次惑星開発委員会

〈自然〉と〈デジタル〉が融合した新たな自然が環境となり、ヒトはその中で狩猟採集時代のように生活をするようになるだろう。

・〈自然〉と〈デジタル〉の融合。侘びたデジタルが行き着く〈新たな自然〉。それは東洋文明が育んだ完成を端緒としたイノベーションになるはずだ。
・波動・物質・知能、の関係性から捉える世界認識においては、人間と機械が本質的には同一なモノとして扱うことができる。そのことによって、近代に象徴される人間と機械の対立構造を更新し、さらには、人間と機械のすべてを内包する万物の関係性(縁起)を記述することができr。そのとき記述される世界とは、新たな自然(デジタルネイチャー)である。

新刊〈マタギ・ドライヴ〉の発売が待ち遠しい。

副読本:

15)佐藤航陽(2022)『世界2.0:メタバースの歩き方と創り方』幻冬舎

「世界を変える=新しい生態系を創ること」など、「空間」「世界」を生態系モデルでとらえなおしているところが、非常に興味深い。


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