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まえがき_『フューチャーリテラシー』

書籍『フューチャーリテラシー Futures Literacy 過去から未来へ,「可能性の未来」を読み解くために』からの抜粋です

まえがき

本書は、「未来を読み解く」ことを、誰でも学ぶことができる学問と位置づけています。そして、読者が「最低限の論理」を用いて 「未来を読み解く」能力を身につけられるよう導くガイドとして生まれました。

本書の構成と読み方について解説します。

前編は「未来を読み解く」ための導入編として基礎知識を,後編は「未来を読み解く」ための手順とサンプルを提案します。

●「可能性の未来」を読み解くということ

我々がいきる時空の先には複数の選択肢としての「可能性の未来」が広がっており,現在のデータや論理から積み上げて「未来」を予測することは不可能との視点にたちます。

未来には「複数の可能性」があり,確率的なだけではなく,ヒトの行動によって変えることができます。ヒトたちが日々「想像」し,「創造」し続け「文化・メディア」として残すことにより,「可能性の未来」は具体化していきます。

「可能性の未来」を読み解き,そこから導きだされる「文化・メディア」のコンセプトや物語もまた,「可能性の未来」の選択肢の一つとなります。そのなかのいくつかは未来を指し示す「羅針盤」となり,共有・共感した多くのヒトたちが方向を見定め行動することで,未来が現実味を帯び,より具体的に未来を形づくっていくこととなります。

●「前編:未来につながるコミュニケーションの歴史編」について

本書では,「過去」から繰り返される一定パターンの延長にあるものとして「未来」をとらえます。物理世界の「相互作用」,生命世界の「コミュニケーション」が「個」をつなぎ,ネットワークのパターンを描くさまを学び,「脳内」にきざみ,モデルとして活用することが「可能性の未来」を読み解くための原動力となります。

「過去」を学び「未来を読み解く」行為を繰り返していると,やがて「脳内」にきざまれた記憶から湧きおこる興味が,各分野の探索を助けてくれるようになります。それまでをつなぐ入門・基礎知識として,宇宙,生命,文化・メディア,集団・社会,経済についてネットワークと相互作用の視点から読み解いて紹介します。特にヒトが誕生して以降については,「未来を読み解く」ためのベースとなることから注力する必用があります。


図0.1 過去から未来へと繰り返されるパターン

前編を読み解く三つの視点:
1)「未来」は「過去」からの流れの先にある

未来を読み解くときには現在注目する事象と変化があり,それがおきた要因は過去に,そして未来へとつながる。「可能性の未来」を読み解くには,注目する事象と変化につながる過去からの道筋を読み解くことが近道となる。

2)ネットワークの基本的なパターンをつかむ
物理は化学の,化学は生命の,生命は社会のベースとなるネットワークを構築してプラットフォームとなり,プラットフォームの上に新たなネットワークを構築する傾向がある。

3)モデル・メタファーとして使う
過去から未来に向けてよく似たパターンが繰り返されるため,過去の事象を「モデル」や「メタファー(隠喩,たとえ)」として活用すると,突破口となるアイデアが浮かびやすくなる。

●「後編:「未来を読み解く」ための方法編」について

後編では「未来を読み解く」ための方法とサンプルを提案します。

○8章 未来を読み解くための論理
「未来を読み解く」にあたり,数学的・統計学的に裏づけされた論理を容易に展開できない場合が多いため,「最低限の論理」をはたらかせるための方法について解説します。

○ 9章 未来を読み解くためのモデル
「未来を読み解く」ために,「過去(前編)」から「未来」に向けて繰り返されるパターンから抽出した三つのモデルを提案します。

1)「ヒト-文化・メディア」共進化モデル:
ヒトの基本的特性である「集団」「コミュニケーション」「文化・メディア」との相互作用に着目する

2)「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデル:
「ヒト」や「文化・メディア」が示すネットワーク的特性に着目する
3)「革命的進化」モデル:
産業革命に匹敵する大規模な変化の「時」に着目する

○10章 計画されている近未来
「未来を読み解く」ためのベースとなる,今計画されている技術・サービスを概観します。

○11章 100年ロードマップを描く
「未来を読み解く」際の羅針盤となる「100年ロードマップ」を,最低限の論理をはたらかせながら描くためのテンプレートと,そのサンプルとして「農業」「メタバース」「企業」の「100年ロードマップ」を例示します。

○12章 未来に向けたコンセプトを描く
11章までに得た知識・方法の総まとめとして,20~30年後の未来につながる技術・サービスに関するコンセプトを具体化するためのテンプレートと,そのサンプルとして「連想探索エンジン」「非線形思考を描く筆とキャンバス」「マルチバース経済循環」コンセプトを例示します。

●「前編」の読み方,ポイント 

常に1~3を意識して読みすすめて下さい。最初は難しいかもしれませんが,意識しながら読みすすめていくうちに,過去の歴史で繰り返されるリズムがみえてくると思います。

1.まずは興味をもって歴史をながめる

2.①~③の繰り返しとしてとらえる
(➡特に1章,2章,ヒト・農業の誕生まで)
①「環境(理由)」が準備されたタイミングで「集まる」
 どんな環境が準備されたのか,なぜ集まったのか?
②①を「実験場」として何度も「相互作用」を繰り返す
 何を繰り返したのか?
③②の結果として「新しい構造」が構築される
 どのように新しい構造が構築されたのか?

3.ネットワークモデルとしてみる
1)「部分(個)」は相互作用により,ネットワークをつくる
2)「部分(個)」のネットワークは,マクロな構造=「全体」を形成する
3)マクロな構造は,上位の「部分(個)」としての性質ももち,新たなネットワーク(メタ・ネットワーク)を形成する
例えば,ヒトの細胞(部分)のネットワークからなるヒト(マクロな構造)は,ヒト(部分)のネットワークによって社会(マクロな構造)を形成する

そして,9章を読み終えたところでもう一度「前編」にもどり,対応づけながら読み返していただければ,その先をよりわかりやすく楽しく読みすすめていけるのではないかと思います。

それでは,過去から未来に向けて読み解いていきましょう!


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