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金融安定化に対する顕著なリスクに関する調査 by FRB

米FRBが2023年5月版の金融安定化レポートを発表しました。その中でいくつかマーケットについてうまくまとめているレポートを出していました。その中からいくつかを紹介していきます。投資家の方には、市場レポートを理解するには非常に興味深いレポートです。

金融安定化に対する顕著なリスクに関する調査
ニューヨーク連銀のスタッフは、市場情報収集の一環として、米国の金融安定化に対するリスクについて、幅広い関係者から意見を求めた。2月から4月上旬にかけて、ブローカー・ディーラー、投資信託、調査・助言機関、大学などの専門家を含む25人のコンタクトにアンケートを実施した(図A)。持続的なインフレ圧力が金融政策の制限強化につながる可能性は、2021年秋の調査以来、引き続き上位のリスクとして挙げられた(図B)。3月10日にSVBが閉鎖された後、回答者の大多数が、追加的な銀行が再びストレス下に置かれるリスクを強調した。多くは不動産市場の脆弱性を指摘し、中にはCREエクスポージャーが銀行セクターのさらなる懸念を誘発する可能性を強調する回答もあった。また、地政学的リスク、特に米中間の緊張の高まりや、ロシアのウクライナ戦争がさらにエスカレートする可能性についても、引き続き注目されている。ここでは、今回のアウトリーチで最も多く挙げられたリスクについてまとめている。
 
持続的なインフレと金融引き締め
特に米国では、金融政策が大幅に制限されているため、インフレ圧力が持続することへの懸念が引き続き最重要視された。複数の関係者が、政策金利が急速に上昇したにもかかわらず、労働および経済活動データが堅調であることを強調し、世界の中央銀行がインフレに対抗するためにさらなる引き締めを必要とする可能性を示唆し、より急激な景気減速と金融市場の不安定化を招くリスクがあると指摘した。一部の関係者は、米国および海外の中央銀行のバランスシート縮小が、特にソブリン債市場において市場機能を低下させる可能性があると指摘した。
 
銀行部門と非銀行金融機関のストレス
市場参加者は、銀行部門におけるストレスのリスクを強調し、資金調達コストの上昇と収益性の低下により、一部の銀行が預金流出に陥りやすくなる可能性があると指摘した。多くの回答者は、預金の安定性をめぐる市場の監視の高まりや、長期固定金利資産の公正価値の下落が、さらなる伝染や市場のボラティリティを引き起こす可能性を指摘した。一部の回答者は、2022年9月に英国で見られたような金融引き締め環境下でのNBFIに起因するリスクを強調した。
 
商業用不動産
特に商業施設では、金利上昇やバリュエーション、エンドユーザーの需要変化に対する懸念が示された。一部の市場関係者は、不動産のリスクを銀行セクターのストレスの発生と関連付け、不良債権化したCRE資産に対する銀行のエクスポージャーの一部が不安定な状況を引き起こす可能性があると指摘した。
 
地政学的リスク
多くの市場参加者は、主に米国と中国の関係を中心とする幅広い地政学的リスクを挙げた。緊張の高まりは貿易や金融の流れを悪化させ、世界のサプライチェーンや投資家心理に悪影響を及ぼす可能性があるとの指摘がなされた。また、中国と台湾の軍事的・政治的衝突のリスクや、それに伴う米国の介入も、発火点のひとつに挙げられた。また、ロシアのウクライナ紛争が拡大するリスクは、欧州の経済見通しや商品価格の上昇に影響すると指摘し、さらに拡大するとサイバー戦争のリスクが高まると指摘する回答者もいた。
 
債務限度額
回答者は、法定債務上限が適時に引き上げられない場合、資金調達市場の混乱や金融環境の悪化の可能性があると見ている。また、技術的または完全なデフォルトの場合、国債利回りの急上昇、企業の資金調達コストの上昇、リスクセンチメントの悪化などの悪影響があると指摘している。また、金融政策が長期にわたって制限的な領域にとどまる環境では、政府の資金調達コストが上昇するリスクがあると指摘するコンタクトもあった。
 
図A 2023年春: 今後12~18ヵ月間の潜在的なリスクとして最も多く挙げられたもの

図B. 2022年秋:今後12~18ヶ月間の潜在的リスクとして最も多く挙げられたもの

   ※当資料は、投資環境に関する参考情報の提供を目的としてFuture Researchが翻訳、作成した資料です。投資勧誘を目的としたものではありません。翻訳の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する決定は、ご自身で判断なさるようお願いいたします。

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