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環境の変化が激しすぎた

前回の続き。前回の記事はこちら↓

僕の言葉が彼女には届かないと感じたあの夜から、僕は彼女に対して、ある種の引け目を感じるようになった。

僕と彼女の間には、圧倒的な差があった。

彼女は僕に、ある種の救いを求めた来たのだろうけれど、僕には彼女を受け止めるだけの自信がなかった。

どうして、これだけの圧倒的な差が開いてしまったのだろうか。
この引け目はどこから来るのだろうか。
ずっとそこのことを考え続けた。

東京の本社に戻ることなった

彼女と渋谷で会った二か月後に、僕は東京本社に戻ることになり、福岡のワンルームマンションを引き上げてきた。

福岡に転勤になって3年の月日が流れていた。

この3年間は、ある種とても充実していた。福岡の事務所は、所長と僕の二人だけだった。所長が営業を担当し、僕がエンジニアとして勤務していた。エンジニアが一人だけだったので、すべての仕事は自分の思い通りに進めることができた。とても自由に仕事をさせてもらった。

所長と二人きりではあったのだが、事務所は親会社の九州支社の一角に机を置かせてもらっていた。親会社は日本でも有数の大企業で、その九州支社はワンフロアで50人以上の人が働いていた。当然、同年代の若い人たちも多く、職場はとても楽しい所だった。

独身だった僕は、ワンルームマンションは会社が借り上げてくれていたし、お給料も悪くなかった。時代も、今よりもまだ景気も良く、お金に困ることもなかった。職場の若い人たちと一緒に、しょっちゅう飲みに行ったり、ゴルフやキャンプに出掛けていた。

そんな生活を3年間続けていた僕に、本社に返って来るようにという辞令がでたのだ。

忙しくなった理由

会社としては、僕を東京に戻して、入れ替わりで別の人を九州営業所のエンジニアとして送り込む算段だった。ところが、この人が家庭の事情を理由にその転勤を断って、会社を辞めてしまったのだ。

そうなると、僕の代わりに九州の仕事をこなす人がいなくなっしまう。その結果、僕が引き続き九州の仕事も続ける事になった。そのうえ、本社の案件もいくつか回ってくることになった。つまり、これまでの仕事の上に、新たな仕事を任されることになったのだ。

その結果、九州の客先からは頻繁に呼び出されるようになるし、相手の担当者の機嫌は悪くなった。これまでは、電話をすれば5分のところにいたのに、飛行機で来るようなったのだから、当たり前のことだと思う。そのうえ、東京の案件も任された僕は、一気に忙しくなってしまった。そのおかげで、趣味で続けていたトライアスロンのトレーニングをする時間を捻出するのが難しくなっていった。

会社の失敗の尻ぬぐい?

ただでさえ忙しくなったうえに、さらにもうひとつ問題が起こった。僕の知らないところでとある案件の担当者として名前を使われてしまい、結果的にはその案件も担当することになってしまったのだ。このいきさつを詳しく書くと長くなるので簡単に書くが、会社の人事異動によって、くだんの案件をメインでこなすはずだったエンジニアが他部署に異動してしまったのだ。これに不快感を示した客先が会社にクレームを入れると、営業担当が僕の名前を出して、「渕脇は優秀なエンジニアで、彼を選任で当てますから。」と説明してきたと。だから、「客先には専任でやっているということにしてくれ」というのだ。

つまり、会社のマネジメントの失敗の尻ぬぐいをさせられる形になったということだ。九州の人事の件についてもそうだし、この案件においてもそうだ。

「そんなひどい話はない、聴いていない。」と、僕は断ったのだけれども、客先とトラブルを避けたい会社側は僕を説得しにかかってきた。課長、部長、営業担当に囲まれて、「何とかしてくれ。渕脇君に業者をつけてもいいから。」と頼み込まれた。もともと、頼まれごとを断れない性格の僕は、「ここは僕が犠牲になって頑張ればこの場は収まるのかもしれない。」などと考えてしまって、この曰く付きの案件を引き受けてしまったのだ。

この結果、僕の休日はついに無くなってしまった。毎日、遅くまで残業し、休日も会社に出るという生活が始まってしまったのだ。

楽しい九州の生活からの変化が激しすぎた

九州から新宿本社に戻ってから半年後には、全く休みの取れない生活になってしまったのだ。この間の変化が激しすぎて、かなりのストレスをため込むことになった。

環境の変化に加え、自分の人生の嘘に気づき始め、彼女に対して引け目を感じ、トライアスロンのトレーニングもできなくなり、休日も無くなった。

整体師と心理カウンセラーをやっている今の僕だからわかるけれども、この時点で僕は相当なストレスを抱えていて不思議ではない。しかし、さらにこの後、僕を叩きのめすような大事件が起こることになる。その出来事がダメ押しとなって、僕はうつ状態へ突き落されていったのだ。

(つづく)

自分がうつ状態に陥って、そこから這い上がってくる過程で考えたことなどを書いています。自分の思考を記録しておくことと、同じような苦しみを抱えている人の参考になればうれしいです。フォローとスキと、できればサポートをよろしくお願いします!