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長野がF2へ降格 しながわとの入れ替え戦に2連敗

試合後のコメント

 Fリーグ2018-19シーズンのディビジョン1・2入替戦でアグレミーナ浜松を破って、Fリーグ・ディビジョン1(F1)に昇格していたボアルース長野。それ以降、2019-20シーズン、2020-21シーズン、2021-22シーズンとレギュラーシーズンでは最下位に沈みながらも、F1に踏みとどまってきた。

 しかし、2022-23シーズンもレギュラーシーズン最下位となった長野は、F1・F2入れ替え戦でFリーグ・ディビジョン2(F2)王者のしながわシティに第1戦を1-4、第2戦を3-4で敗れて、ついにF1から降格することとなった。

 入れ替え戦で見せ場を作れなかったわけではない。2試合を通じてパワープレーは、しながわにとっても脅威となった。それでも、力の差は歴然としていた。F1という舞台に所属していた4シーズン、チームを強化できなかったツケを払った形だ。

 長野の人々はあたたかい。クラブ関係者によると、F2に降格したとしても、スポンサーやファンがチームを見捨てることはない見込みだという。その状況に甘えてしまえば、もう一度、F1の舞台に戻ってくることは難しいだろう。F1の舞台で戦えるから長野に在籍していたという主力選手も、この日の敗戦によって、チームを離れることも考えられる。

 F2からF1に昇格することの難しさは、降格を経験したデウソン神戸、アグレミーナ浜松の2クラブ、そして圧倒的な戦力を抱えるしながわが示してきた。

 降格が決まった直後の会見やミックスゾーンで、長野の柄沢健監督、選手たちが発した言葉を記しておく。

柄沢健 監督「痛みを伴わないと前に進めない」

記者会見でのコメント

──試合を振り返ってください。

柄沢 まずは2日間、このような素晴らしい舞台を、聖地・駒沢で入れ替え戦を戦うことができて、多くの関係者の皆様に感謝を伝えたいと思います。そのなかで、負けてしまったことが、もうすべて。結果がすべてだと思っています。我々の力のなさ、しながわさんの方が私たちよりも強かったことに尽きると思います。

それでも、3点を取らなければいけないビハインドのなかで、第1ピリオドのパワープレーの攻撃で2点取れました。試合後のミーティングで選手たちにも伝えましたが、苦しいなかでパワープレーで、彼らが群れになって泥臭く戦ってくれたことを、すごく嬉しく思っています。

ただ、昨日からしながわさんの強さ、ここで決め切るところでしっかり決めてきた。今日はチアゴ選手がファウルを受けたところから、瀧澤選手が直接FKを決めたところが、1つのポイントだったと思います。

それでも、ゲームプランのなかでは第1ピリオドは1点差であれば良い状況でした。もう一歩、第2ピリオドでしながわさんのように、1対1の局面で決め切るとか、戦い切るとか、その強さが足りませんでした。この舞台で一人ひとりの選手に自信を持たせられなかったのは、私の責任だと思っています。

いずれにしても、何度も何度もパワープレーをやりましたが、田村が最後まで全力で戻ってきたり、山蔦コーチの指示に、ピッチの選手たち全員がしっかり耳を傾けてくれました。その姿勢なくして、長野の発展はないと思っています。この悔しさを胸に、今日からクラブとして1つになって前を向いていきたいです。入れ替え戦の2日間、また1年間、特にアウェイの試合でいつも記者の方たちにお話いただけて大変感謝しております。本当にありがとうございました。長野はこれからも頑張って、群れになって泥臭くクラブとしてやっていきたいので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。

──今季の長野はパワープレーを長い時間やる試合が多かったように思います。今年の長野にとってパワープレーの位置付けは?

柄沢 結果的に、やはり今日勝てなかったので…。本来であれば、パワープレーは残りのわずかな時間で勝負を仕留める戦術だと思っています。全体的に言うと、弱いからこそ、そこに頼らざるを得ない。選手が、パワープレーの攻撃以外の選手も、そこに気づけなかった。ちょっと答えになっていないかもしれませんが、勝つために必要ではあったのですが、皆さん、ご存じの通り諸刃の剣です。いつどうなるか分からないところに、何回も、何回も、頼っていては、やはりなんの成長もありません。クラブとしては、全員がパワープレーができて、インプレー中にゲームを仕留められないといけないところに気付かされた、パワープレーの攻撃だったと思います。

──パワープレーに頼った試合をしなくても、今日のような守備ができれば、もう少し違う戦い方もできて、もっと強いチームになれたのでは?

柄沢 まさに、おっしゃる通りだと思います。それが、あの手この手を使っても選手の目が覚めない。なかなか、そこがどう我々もアクションを起こせばいいのかとすごく悩みました。私は、今回の入れ替え戦についてクラブとして覚悟を持っていました。選手が変わるためには、何か痛みを伴わないと前には進めない。しながわさんは去年、その痛みを知っていますが、我々は知りません。だからトレーニングで米村が厳しいことを言っても、他の選手たちには響かない。かといって、群れにもなかなかなりにくい。入れ替え戦は、そういった意味で、この一つの戦いというよりも、選手の成長とクラブの成長を考えて、私は覚悟を持っていました。それが分かっていれば立川の5秒はなかったでしょうし、立川で同点であれば、町田の試合の雰囲気は変わっていたはずです。いずれにしても、おっしゃる通りだと思っています。

──今後のシーズンに向けて、どういうチーム作りをする?

柄沢 自立することだと思っています。選手が日常から当たり前のように自立をする。それ以外にフットサルでの成長はないです。パワープレーに頼るのは、誰か人に頼るということ。いつまでたっても頼っていては成長はないので、そこだけだと思います。

以下、個別取材

柄沢 健 監督

――F1にいた4シーズン、ずっと最下位は悔しい結果だったと思います。それでもこの4年間で、地元の人たちに日本最高峰の試合を見せて、種まきもできたのかなと感じますが、これまでの経験を次にどうつなげていきたいですか?

柄沢 先ほどの記者会見でも最後に伝えさせてもらった通り、まずは日常から選手たちが自立できるか。フットサルだけでは、日常のところはそう簡単には変わらないと思います。お世話になっている分、当たり前に仕事をやることが、まずは一つ。山蔦コーチが昨シーズンの最後に入ってくれて、今シーズンからは山元コーチも入ってきてくれて、難しいところが一理あるかなと思っています。今までの自分たちがやってきたことをやりたいとか。でも、これで一つ、どう戦わないといけないとか、どういう方向でチームをもっていかないといけないということは、弱いチームだからこそのプレーモデル、ゲームモデルもあると思う。なかなか理想と現実のところでは、この試合が一つ基準になると思う。あらためてパワープレーに頼るだけでは勝てないことが分かったので、整理しないといけないと思っています。

――僕は真逆で、カイラトやカザフスタン代表のようにパワープレーを突き詰めて、そこに特化したチームにしてしまえばいいと思いました。

柄沢 ああ、逆にね。それも考えつつやりたいと思います。たとえば、中嶋を最後に前に置いてハイボールを競らしてマイボールにしようとしました。それが一つ特徴であり、相手に脅威になったことだと思うので。名古屋さんみたいに、常に高いレベルで平均点を高くすることができない分、一つひとつ選手の特徴を整理するなどして、土台をしっかり作って、ベースを作っていきたいと思います。

――初戦で起用していなかった中嶋選手を、2戦目ではかなり出場させました。しかもチアゴ封じという大事な役割を与えていましたよね?

柄沢 そうですよね。吹っ切れるか、吹っ切れないか。

――吹っ切れたのを感じたから起用した?

柄沢 そこのゾーンに入れるか、入れないかです。やらなければいけないとか。だけど、昨日の場合はまだ1戦目で、たぶんですけれど「やられてはいけない」という気持ちで、「やってやろう」という気持ではなかった。今日は「やってやろう」となっていたのが、皆さんも見ていて思ったと思います。昨日はちょっとだけ出ても、何か「やっちゃいけない」「やられちゃいけない」という気持ちが出ていて、それが我々スタッフ陣にも伝わってくるものがあった。もちろん彼を使うことで、より得失点があったりするところがあったので、なかなかトレーニングで我々がもっと向かい合って、ぶつかり合って、落とし込むことができなかったのが、一つのポイントだと思います。

――土橋GMとも話しましたが、長野は車を持っていないと生活が難しく、18歳の若手を簡単に獲得でできないという話もありました。しかし、F2に落ちたことで有力な中堅の選手補強も簡単ではなくなり、クラブとして育成に力を入れなければいけない状況かと思います。さらに入れ替え戦も勝たなければいけない立場になります。今後のクラブとしての強化方針はどうなっていますか?

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