フットサルを理解する「枠組み」

今回、フットサルをどのように理解するかということをテーマに、自分がどのようにフットサルを構造的に見ているのかを書いてみます。


■一般的なフットサルの枠組み

基本的には、「攻撃/攻→守の切り替え(ネガトラ)/守備/守→攻の切り替え(ポジトラ)/特殊局面」の5つの局面と、よく言われます。これをもとに、局面・状況を認識したり、チームの原理原則を作りこんでいるチームもあるかもしれません。しかし、自分はこれが腑に落ちず、自分なりの枠組みを作り、フットサルを理解することにしました。

まず、5局面といいつつ、特殊局面を除くと、ボールの保持非保持とその切り替わりであり、切り替わりは局面の変化であり局面そのものではないと思っています。そして、これは「ボール」を軸として捉えすぎて、いまのフットサルを正しく理解する枠組みにはなっていないと思ったのです。

例えば、サッカーで「ゲーゲンプレス」って概念があると聞きます。自分の理解では、ロングボール主体でロストしてもハイプレスでボールを奪い取る。考え方としてはボールを管理するのではなく、プレーエリアの管理。つまり、ボールの保持非保持よりも相手のゴールに近いエリアでプレーするというプレーエリアでの管理が重要であると思います。できるだけチャンスを高めて、リスクを低める。つまりは、ボールの保持非保持以外にもチャンスとリスクを軸に考えるという考え方が成り立つと思うのです。

■初心者的なフットサルの枠組み

チャンスとリスクということで言うと、先述のようにプレーエリアでもチャンスとリスクは異なりますし、ボールの保持非保持によっても変わります。よって、「プレーエリア✕ボール保持非保持」により自分は局面を定義しています。

プレーエリアというよりも正確にはプレーゾーンですが、フットサルで言うと、自ゴールから10mがゾーン1、中間20mがゾーン2、相手ゴール前10mがゾーン3、と言われています。自ゴールに近ければ近いほどリスクは高まるし、相手ゴールに近ければ近いほどチャンスは高まり
具体的には以下の6局面となります。

 ①ボール保持✕ゾーン1→前プレ回避局面
 ②ボール保持✕ゾーン2→定位置攻撃局面
 ③ボール保持✕ゾーン3→フィニッシュ局面
 ④ボール非保持✕ゾーン3→前プレ局面
 ⑤ボール非保持✕ゾーン2→定位置守備局面
 ⑥ボール非保持✕ゾーン1→ゴールディフェンス局面

このそれぞれの局面が変わるところをを「局面の変化」と考えています。ボールの保持/非保持が切り替わる場合と、プレーゾーンが変わる場合です。

■局面の変化

局面の変化は2種類あります。
・ボールの切り替わり(ターンオーバー)
・ゾーンの切り替わり(プレーの展開)

前者は今まで言われてきた局面の変化です。これはイメージしやすいと思います。一方で後者についてですが、これも局面の変化です。つまり、上記①から②へ局面が変化するというのは、ボール保持側が前プレ回避に成功したということです。ボール非保持側がどのようにプレスを掛けていたのか、ボール保持側がどのように回避したのか。その結果、前プレが回避されたというように状況が変わったわけです。

個人的には、その局面が変えるための戦略・戦術(言い換えると、意図と実践)が見ごたえがあると思います。この局面の変化を起こそうとする力を「強度(インテンシティ)」とし、局面の変化の速さが「試合の展開(リズム)の速さ」だと、自分は定義しています。

試合を観るというのは、ひとつひとつのプレーを観るのに合わせて、この局面の変化(試合の流れ)を追うことだと思っています。その意味で、この枠組みというのは非常に適したものだと思っています。また、補足をすると、いわゆる攻撃の原則「(1)ボールを保持する/(2)ボールを前進させる/(3)ゴールへアプローチする」と守備の原則「(1)ゴールをさせない/(2)ボールラインを押し下げる/(3)ボールを奪う」という考え方とも親和性・融和性がある枠組みだと思っています。

■フットサルにおける管理すべきもの

フットサルの要素は「ヒト、ボール、スペース+時間」という要素があります。それぞれ管理すべきものですが、根源的に管理するべきものは「可能性」だと思っています。得点できる可能性がチャンスだと思うし、失点する可能性がリスクなわけです。

ここに、一般的に言われる「攻撃」「守備」というのが引っかかる理由があります。前プレを受けている側と前プレをしている側。どちらの方が攻撃的か、どちらの方がチャンスが大きいか。前プレを受ける側は、攻撃の原理原則の(1)としてボールを保持する、という前提通り、ボールを奪おうという相手からボールを守るというモードになりかねないと思います。そういう状況と、相手ゴール前でゴールを狙う状況。これを同じ「攻撃局面」と認識できませんでした。よって、チャンスとリスクをベースに自分なりの枠組みを作ってみました。

後から聞いたのですが、元スペイン代表監督のカンデラス氏が「僕らはこの枠組みをハンドボールから学んだ」っておっしゃっていました。ハンドボールって、自陣や中盤がなくて、ほとんどが相手ゴール前でプレーが行われる。競技特性が異なると思うんですね。だからこそ、フットサルにあった枠組みでフットサルを理解することが重要だと思うんです。

■既存の枠組みの弊害

攻撃と守備って、完全に二元論で語られてしまう部分に大きな落とし穴があると思っています。関東リーグ時代のフウガは「キリカエ0秒」というキャッチ-なコトバを流行らせました。当時、全国選手権の決勝の相手の名古屋が攻撃から守備への切り替わりが遅かったから、その部分をつけ入るためにポジトラの意識を高めるために用いた造語になります。これは完全に攻守を分断した状態で成り立つ考え方だと思います。

例えば、日本ではカウンターの時に、「ターンオーバーの際に素早くすれば、数的優位を築ける」とか、「数的優位を築くためにテンポライズを」みたいに言ったりします。日本は南米や欧州と比べて技術レベルに劣ることを前提として、「数的優位」を前提にチームを作る傾向にあります。でも、カウンターの本質はそこではないんです。相手の守備態勢が整う前に攻め切るという質的な部分のはずなんです。人数が足りていなくても態勢が取れれば、GK含めて数的に合わせてきたり、意外と守れてしまうものだと思います。また、海外では、カウンターの際に、速く攻め切ることと、逆カウンターへの備えとして人を掛けないということが多いです。相手陣地に2人も守備の選手がいても、整っていなかったら、1人でドリブルしていく場合もあります。その場合は残り3枚は自陣でステイしていたり、リスクヘッジはしています。

これはチャンスとリスクの管理がどうあるかという例です。ボールの切り替わり以前から、チャンスとリスクを管理の観点で、リスクヘッジなど状況に応じてアジャストしていくのが現代のフットサルです。ボールが切り替わってから切り替える(キリカエ0秒)よりも、もはやボールが切り替わる前から切り替えるというのが現代のフットサルだと思います。

こういう意味で、攻守2元論的な考え方やキリカエ0秒というようなものが、フットサルの弊害になっていると思います。よく、ボールをロストしたら、「全員ボールラインまで下がれ」とか言われますが、それはあくまでも結果としてそうなるというだけ、アジャストした結果そうなるというだけであって、それを原則のように言われるのも、個人的には違うのかなと思います。

いじょう、おしまい

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