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元フットサル日本代表キャプテン・藤井 健太が世紀の一戦で振り返る、勝敗の分かれ目、ゴールのための3つのポイント、見えていた世界、刻一刻と変わる状況判断解説

ピッチが俯瞰して見えた?トッププレイヤーになると"ここまで"見える

「時間が止まったように見える時があった」

藤井 健太。元フットサル日本代表キャプテンは、「常にではないが、時に、研ぎ澄まされて、ピッチを俯瞰したように見える時があった。その時は、今日の試合は大丈夫と思えた」と言う。

藤井が例として引っ張り出してくれた話が非常に興味深かったので、ここに書き記しておきたい。

振り返るのは、2008年、Fリーグ2年目、第8節の代々木セントラル。観客 7,081人を集めた、首位攻防の天王山、名古屋オーシャンズ×バルドラール浦安戦、残り35秒でのバルドラール浦安の"劇的"決勝ゴールだー。

7,081人が見守った、Fリーグ 2008 首位攻防戦、フットサルクラシコ、名古屋×浦安の劇的ゴール

この試合は、⑤完山 徹一と⑭山田 ラファエル ユウゴのゴールで2-0、名古屋のリードで前半を折り返すも、後半、浦安は⑤小宮山 友祐と⑦中島 孝のゴールで2-2に追いつく。そこから⑭山田 ラファエル ユウゴのゴールで名古屋が3-2と再び引き離したが、浦安も⑤小宮山 友祐の連続ゴール(ハットトリック達成!)で、4-3とついに逆転に成功。しかし、残り45秒、名古屋が⑱シジネイのゴールで4-4の同点に追いつき、場内の興奮とどよめきが収まり切らない、残り35秒、⑰稲葉 洸太郎が決勝ゴールを上げて、浦安が土壇場で勝利を掴むという、フットサル史に残る試合であった。

この最後の⑰稲葉の決勝ゴールの起点となったのが、藤井だったー。

この時、藤井には、何が見え、何を考えて、プレーをしていたのだろう―。

ゴールが生まれる3つのポイントとは?

試合のシーンを振り返る前に、藤井 健太が言うゴールが生まれる3つの"ポイント"を先に挙げておきたい。

①チームとしての意思統一

試合の最終局面で、チームとして置かれている状況に対して、(戦い方の)意思統一ができているどうか。

②常に見ている、意識している点

今回のメインとなるポイント『どこまで見えていたか』の部分で、意識している点。ゴールであったり、対峙している選手やキーパーの位置や体の向き、ベクトル(動きや狙いの向き)を、ゴールを生むために"常に見ている"、トレーニングから"できるだけたくさん見ようとしている"ということ。

プラス、ゴールを決めるために、ゴールを決める確率を上げるためのゾーン『セグンド(ファー詰め)』のスペースにどう侵入するか、は常に見て、意識しているということ。

③誰をシューターにするか

チーム内で、最終、誰にシュートを打たせるのが良いか。当時のバルドラール浦安で言えば、稲田 祐介が一番ゴールハンターだったので一番の選択肢だった。また、セグンドに入る中島 孝もひとつのポイントだった。

これを決めるために、藤井は、試合前、この時期誰が調子が良いか、練習中、もしくはその時のウオーミングアップで乗っている選手、シュートの感覚が良い選手を「見てたりする」という。後は試合の40分の中で『誰が運を持っている』のを、観て、判断材料にしている。

この3つのポイントが一番ゴールが生まれるポイントだと藤井は言う。

選手たちにとっては、「こういうことが日々の努力の中で必要であり、偶然ではなく、勝ちにこだわるために、勝つ確率を上げる要素として努力をしていかないと日本のレベルは上がって行かない」と断言する。

実際に藤井は日本代表時代、「"勝負強さ"を売りにしていたところで言うと、そういう日々の努力はあった」という。

「点を取りに行け」。戦い方、プレーを決める、シト監督の"隠されたメッセージ"

この場面、浦安は⑩岩本 昌樹をゴレイロにパワープレーに出ていた。

当時の浦安はパワープレーに自信を持っていた。後半、パワープレーで引き分けに追いついたり、試合をひっくり返すことも多かった。劇的な試合展開になることも多く、そんな浦安の試合は"浦安劇場"とも称されていた。

この時、監督のシトがピッチに送り込んでいたのは、⑧藤井 健太、⑦中島 孝、⑩岩本 昌樹(ゴレイロ役)、⑰稲葉 洸太郎、⑳稲田 祐介の5人。

藤井が語り出すー。

「まず大前提として、残り45秒で同点ゴールを決められて、チームとしてどうするのか。同点のままでも良いのか?ゴールを決めに行くのか?そこの意思統一がでてきるか?・・・は大事なポイントだった」

※『ゴールが生まれる3つのポイント』の『チームとしての意思統一』の部分だ。

「パワープレーに出たのは『ゴールを取りに行け』という(監督からの)メッセージだし、シトが信頼を寄せていたメンバーをピッチに送り込んでいたことも、(それを裏付ける)強いメッセージだったと思う」

「パワープレーに関しては、シトから、普段も、落ち着いて回して、20~30秒の中で、1本、シュートを打てば良いと言われていた。だから、この時も、残り時間(35秒)の中で、1本、ゴールを決めれば良いと考えていた」

キックオフのボールを⑦中島が、左後方の⑧藤井に預ける。この時の⑧藤井の第一選択肢は、上記の前提を踏まえると、まずは右隣りの(キーパー役の)⑩岩本に預けて、"攻撃を組み立てる"ことだった。

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状況は刻一刻と変わる。"ファーストプラン"が崩れた時の対応は?

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