違法は悪ではない
社会にとって合理的だと思われたものは、その社会の中で通念として捉えられる。
そしてそれは、制度にまで落ちてくる。
例えば、学校教育制度。
例えば、一夫一妻制度。
制度ということは、そこから逸脱すると罰を受けたり、裁かれたりする。
それは今の社会制度がそうなっているんだから、もちろんそうなる。
けどここで私が忘れたくないのは
違法であることと絶対的な悪は何も関係がない
ということ。
私は、合法と善は同じだとは思わない。
同時に、違法と悪も同じだとは思わない。
もちろん、違法行為をしたら裁かれる。罰せられる。なぜならそれは、違法行為だからだ。
でも、考えてみてほしい。
ネルソンマンデラも監獄の中にいた。
吉田松陰も捕まった。
ソクラテスも捕まった。
彼らは、悪人だったのだろうか?
レオナルドダヴィンチは、当時違法であるにも関わらず人間の解剖を行っていた。
つまりは犯罪者である。
当時の犯罪者が、今は天才、偉人扱いである。
マンデラも、松蔭も、ソクラテスも。
人間とは勝手である。本当に勝手に、コロコロと善悪を変える。
そんなものなのである。
私が言いたいのは、法律を破ってもいい、ということではない。
破ったら裁かれる。罰せられる。社会を機能させていく上でその事実を教育で子どもたちに教えていくことは確かに重要だ。
これは教育的行為だ。
しかし同時に、違法行為と絶対的な悪はなんら関係がないという事実に気づかせることも重要だと思う。
これは脱教育的行為だ。
反教育ではない。脱教育である。
違法性があることを学び、規律を学び、その上でそれが絶対的でないことも知り、自分の選択を自律的にできるようにしていく。
これは脱教育である。
しかし我々の社会はあまりに教育的なものに埋め尽くされている。
疑うことができない。自らの頭で考えることができない。
これは社会適用のための教育に埋め尽くされた負の側面とも言える。
善悪はその時代、その場所の社会によって作られる。善悪は作られたものである。
全知全能な神が、私たちの頭上から善悪を決めてくるわけではない。(そう信じている人もいるが)
けど、多くの人が、本当に多くの人が、合法を善だと信じ込み、違法を悪だと信じ込んでるように思う。
「あの人は善い人だ。あの人は悪い人だ。」
「私はこれをしてるから善い人だ。」
「私はこんなことをしてしまって悪い人だ。」
社会制度というものは、その内側にいる人を善とし、その外側にいる人を悪とする。
そうして私たちの心の内まで善悪感情は入り込んでくる。
親や学校からの教育を通して。
この善悪感情の再生産を機能させることで社会は成り立っているのである。
そんな社会と自分の関係性を俯瞰し、そして自分の意思で自らの行動を選択する徹見した態度を身につけなくてはならない。
そうしない限り、私たちは結局、社会の奴隷である。
もしそれが現代社会で違法性があろうとも、あなたにとっての善であるならば戦わなくてはならない時もあるのかもしれない。
実はそのあなたの行為が社会や人類のためでもある場合がある。
なぜなら、逸脱者がいない社会は変化を止め、滅びてしまうのだから。
社会の善悪を疑うところから社会は変革されていくのである。
スピノザはこう言う。
つまり善悪というのは、対象と受け手の組み合わせで決まるのである。
現代日本と、私たち。
その組み合わせの中で、たまたま善悪が決められている。
さて、こう述べたスピノザは善人なのか?悪人なのか?
教会の神が善悪を決める(ことになっていた)中世時代、こんなことを述べてしまったスピノザである。
彼は刺されて殺されかけたことがある。
著書であるエチカはスピノザが生きている間は身の危険から出版ができなかった。
スピノザの死後、知人たちがなんとか出版した。
そこにはスピノザの名前すらなかった。
そして結果、禁書扱いである。
つまり、スピノザは悪人とされていたのである。
スピノザは生きている間は社会に認められることもなく、レンズ磨き職人をしながら細々と暮らし、哲学に明け暮れていた。
今やどうだろう。
エチカは今でも読み継がれる名著である。
私たちは必死こいて、(当時は)悪人だったスピノザの本を読んで感銘を受けたり、それについての研究をしたりするのである。
善悪なんてそんなものである。
善悪は絶対的なものではないのである。
だから我々は、合法や違法、そういった社会規範と善悪を切り離して考えられる姿勢を持つべきだと思う。
もしそれができないのなら、私たちは何も変わっていない。
善悪を決めていた教会の神が、国家に変わり、段々とインターネットによるピアプレッシャーに変わってきているだけである。
それを頭を使わずに盲信するだけなら、私たち人類は何百年、何千年となんら変わってないことになる。
それが人間の本質なんだというなら仕方ないが...
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