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アオキさんと陰謀説


このところ便秘気味で硬くてコロコロとしたのが少し出るだけだった。
だから少しでも出そうな気配があると便座に座り、頑張っていきんでいた。

仕事を半日で終え帰宅すると、大急ぎでおにぎりを頬張り、歯を磨きマウスピースをつける。
少し気配があったのでトイレへ駆け込み、力を込めて押し出す。
少し出た。良かった。時間も間に合う。

電車に乗って街へ出る。今日は久しぶりに美容院に行く。
美容院まではドアtoドアで1時間。ちょっと遠い。家の近くに美容院がないわけではない。山ほどある。
(時間がない時はその辺の美容院で済ますこともある。)

美容院は都会の雑居ビルの3階にある1室。50年前に建てられたそのビルは変わった作りで、入り組んでいる。初めて行った時はエレベーターの場所も分からずプチ迷子になった。

予定の時間より10分くらい早く着いた。お店のガラス戸を引き、中へ入るとアオキさんはまだ片付けの最中だった。
「こんにちはー。」
「あっ、こんにちは。まだ片付いてなくて。ちょっとここに座ってお待ちください。」
「早く着いたんで、ゆっくり片付けてくださいね。」
「いやぁ、むくみさんが来るまで時間あるからお昼ご飯食べようと思ってたら、飛び込みのお客さんが来て。」
「えっ、飛び込み?この場所よく見つけましたね。」
「スペイン人の2人組やったんですけど。」
「スペイン人?!」
「どうやって見つけたんですか?誰かの紹介とか?」
「ネットらしいです。大阪で〇〇(聞き取れなかった)が上手いお店はここって、載ってるらしいです。」
「えっー凄いですね。」

アオキさんは渡米していた事もあり、英語がペラペラ。いろんな国のお客さんがやってくる。
金髪の超ロングヘアーを最近はずっとおさげにしている。大きめの黒縁眼鏡に口髭、半袖の下から伸びる2本の腕はタトゥーでびっしり埋め尽くされている。

片付けをするアオキさん


アオキさんに出会ったのは約2年前。親友トミーの彼氏が主催するイベントで、トミーに紹介されたのだ。

「むくみ、アオキさん。私の髪の毛してもらってる美容師さん。」
「初めまして。」
「初めまして。」

当時はお下げにはしてなかったけど、金髪のロングヘアーに髭と眼鏡。カラフルな両腕に圧倒されていた。何を話そうかもじもじしていたらトミーが
「アオキさんも岡本太郎好きやねんで。」
と。

もじもじが吹き飛び、一気にテンションが上がった。
「岡本太郎好きなんですか?私も好きなんです!」
と勢いよく宣言した。
「そうなんすね。」
私とは裏腹に落ち着いているアオキさん。
だが
「僕、好き過ぎて岡本太郎の作品入れてるんですよ。」
と突然左腕を差し出した。
暗がりの中、目を凝らして見ると太陽の塔と明日の神話が。
「えーっ!!凄い!写真撮っても良いですか?」
テンションマックスの私。
「いいっすよ。」

初対面にも関わらず、私はアオキさんの左腕をカシャカシャと撮影した。

初対面の日に撮った写真


アオキさん。
あなた最高ですよ。岡本太郎先生の作品を体に刻むなんて。しかも明日の神話。
この作品に込められているメッセージをアオキさんはしかと受け止め自らの腕に刻んでいるのだ。


小さな雑居ビルのこじんまりとした空間で、1対1でアオキさんと色んな話をする時間が楽しい。


和洋折衷 いつも綺麗に掃除されている

岡本太郎の事、本の話、音楽の話、政治の話、平和について。
そしてアオキさんが何故か私に子育て相談をする事が多い(アオキさんの長男と私の子供の頃が少し似ている)。
アオキさんは子育てにトコトン真剣だ。真っ直ぐ過ぎて一生懸命過ぎるところがある。
子供と真正面から向き合う姿勢、何事も納得できるまでじっくり説明する。素敵なお父さんだ。

アオキさんはDJもする

2時間半、話題は尽きる事がない。いつも足りないくらいだ。

今日1番盛り上がったのは陰謀説。
アオキさんは言う。
「ホームレスの人って禿げてる人あんまりいなくないですか?」
「あっほんまや。見た事ないかも。」
「僕、前も言ったんですけど、シャンプーするの4日に1回くらいなんですよね。でも絶対それから髪の毛増えてて。」
※夏場はちゃんと毎日お湯でしっかり頭皮と髪の汚れは落としてトリートメントはする。シャンプーを使わないということ。念のため。

「うん。」
「日本はいつからか毎日シャンプーしないといけないみたいになってるんですけど、その結果禿げてる人が増えて、で、今1番儲かってるのってAGAの治療でしょ。AGAの治療で儲かるのって製薬会社でしょ。だからこれ製薬会社を儲けさせるための陰謀なんとちゃうかなって。」
「ほんまや。ありえる。何でも裏でやってるもんな。」

※あくまで個人的な意見です。

そんなこんなで、アオキさんとの楽しい時間は今日もあっという間に終わってしまった。

薄毛に悩んでる人、一度シャンプーの回数を減らしてみてほしい。


帰りの地下鉄の中で、なんだかお尻がモゾモゾしてきた。硬いものが下の方まで来てるのかもしれない。何だかちょっと痛い気がする。
でも便意とも違う気がする。
お尻にグッと力を入れると、それは幾分やわらいだ。

家に着いてトイレで座ってみるも気配はない。
何だろうと思いながら夕食を済ませ、お風呂へ。

お尻を触ると、ん?ん?何かポコっと出てる。
えっ。今まで何にも無かったのに。
うそっ。そんなはずないよな。
もう一度触る。やっぱりある。

これはいぼ痔?
お風呂から上がるとすぐにLINE。
これはいぼ痔の先輩、もっさりに報告せねば。

「いぼ痔になったっぽい」
「大変ですな、アンタも。押し込んだら戻るタイプのヤツかいな?」

さすが。なんか詳しい。

「お風呂で触ったらポコっと出てて、さっき、もっさりからもらった薬入れてん。今触ったら無くなってる。勝手に入ったんか…?」
「俺と同じパターンや。薬要るか?すぐ治ったぜ、俺は。」
「もっさりにもらった薬が2週間弱くらいあるから、大丈夫や。」

前に少し切れた事があり、もっさりからお裾分けしてもらった痔の薬。使う日が来るなんて。
でも置いといて良かった。

なんだかんだ言いながら、製薬会社にお世話にならない訳には行かない。


なんのはなしですか

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