近代日本文学と聖書 (下) 太宰治―愛と死の深層/奥山実:1996/6/1【読書ノート】
はじめにいよいよ太宰治について書くことになった。「これは容易なことではない……」という偽らざる気持ちである。そしてどういうわけか四〇〇字詰の原稿用紙に向かいたくなった。
今までは半ペラを使っていたのである。これは個人的特別の事情で、やたら旅行が多く、漱石論も芥川論も、もっぱら列車の中や飛行機の中で書いたのである。資料も持ち歩くわけでカバンやスーツケースは本の山、……その重いこと。このようなとき、半ペラは使いやすい。しかしなぜか太宰には四〇〇字詰がふさわしいように思われた。「