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マイホームか賃貸かの論争に決着

橘 玲さんの記事を読んで、割と長年の疑問に結論が出たので、メモ書きとして残しておく。

「賃貸はお金を払い続けて何も残らないけど、マイホームは払ったお金が資産になる」は間違い

これが一番目からうろこだった。

マイホームを購入する場合は、「家賃を支払わなくてすんでいる」のではなく、「自分で自分に対して家賃を支払っている」ということなのだ。

どういうことかというと、例えばマイホーム購入と同じように不動産を購入したとして、それを他人に貸せば家賃収入が発生する。例えばここに5000万円の家があり、それを貸すと月20.8万円/年250万円の収入が得られるとしよう。しかしながら、そこに自分で住んでしまえば(当たり前だが)その収入は発生しない。これは、本来得られるはずだった利益と、自分がそこに住むという利益を相殺していることにほかならず、それはつまり「自分で自分に対して家賃を払っている」というふうに表現できるのだ。

別の言い方をすれば、「賃貸は確かにキャッシュアウトが存在するが、その代わりキャッシュインも存在する」ともいえる。したがって、賃貸とマイホームの両者に、本質的な差異は存在しない。

それどころか、「5000万円あるなら、年間利回り5%の不動産を購入するより、金融商品を買って運用した方が良いのでは?」という議論もありえるため、盲目的に不動産を購入してしまうのは相対的に見て損な選択になる可能性も大いにある。

ローンを組むことはレバレッジをかけるということ

さて、手元に5000万円の資金があればここまでで話は終わるのだが、(自分も例にもれず)世の中の大半の人はそんなキャッシュをポンと用意できないと思われるので、普通は頭金を入れて残金はローンで支払うことになる。これをどう解釈すれば良いのだろうか?

例えば1000万円を頭金に、4000万円を借り入れて5000万円の不動産を購入したとしよう。これを1000万円をそのまま運用する場合と比べると、どちらが有利なのだろうか?

その正解は「両者に優劣はなく、ただレバレッジをきかせているかどうかの差しかない」である。

5000万円の不動産を購入した場合、例えば不動産価値が1%上昇すれば50万円の利益を得られるが、1%下落すれば50万円失うことになる。これに対して1000万円をそのまま運用する場合、有価証券の価値が1%上昇すれば10万円の利益を得られるが、有価証券の価値が1%下落すれば10万円を失う。ようは、ハイリスク・ハイリターンか、ローリスク・ローリターンかという問題にすぎない。

つまり、家のローンを組むというのは、レバレッジをかけてハイリスク・ハイリターンの投資をしているということである。こうしてみると、最近よくある頭金なしでの不動産購入などは、レバレッジ率が無限大(最大リスクはローンの返済総額)という割とイカれた商品に見えてくる。

結論:自分はマイホームは購入しない

上記を前提として、改めてそのようなハイリスク・ハイリターンの投資を行うかということだが、自分はそれに対して(現時点では)ネガティブに考えている。

その理由としては、以下の3点である。

・不動産を購入して他者に貸す場合なら、不動産価値の上昇を賃金に反映させてキャッシュを増やすことが可能だが、自分が住んでいる場合は「より価値の高い不動産に住めている」という利益に過ぎず、これはほとんど実感レベルでは感じられないであろうこと(ずーっと同じところに住んでいるのに、「今年は5500万円のマンションですよ!」と言われても多分嬉しくない。不動産価値は不動産を手放すときになって初めて意味が出ることになる)。

・金利上昇リスク、人口減少リスク(都内は転入がしばらく増えるだろうが都内の物件は高くてさらにハイリスク)、災害リスク等が存在するため、リターンに対してリスクの方が大きく、見合わないと感じること。

・売ろうとしても簡単に現金化できない(=資産としての流動性が低い)デメリットがあること。

他方で、人生でこんなにレバレッジをかけられる瞬間はそうそうないので(例えば現金1000万円を担保に4000万円引っ張ってくるなんてことはほぼできない。定期預金担保貸付の上限は、だいたい200万~300万円なので、そう考えると住宅ローンはめちゃんこレバレッジをかけられる人生で唯一のチャンスといえるかもしれない)、①将来的に価値が上昇することが相当固い不動産で、②その時に売り切ることができる見込みがあるなら、ワンチャンやってみてもよいのかもしれない。

それってもはや不動産投資であってマイホーム購入じゃないよね、というツッコミはあるのだが……。







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