失くした鍵の値段
これは、ある土木作業員さんのお話。
SDGsがだいぶ浸透してきた今日この頃。無駄なもの、環境への負荷を考えた取組みが求められている。建設現場とて、例外ではない。ゴミの細かな分別、歩留まりを考慮した資材発注などが挙げられる。
我らがリサイクル隊長・Oは、50代。環境の「か」の字も気にしていなかった当時から持続可能な生活を目指している。社員寮に帰っても、拾った廃品やネットオークションで落札したジャンク品で何かを生み出してきた。
そんな彼は愛車をも組み上げた。部品だけ取り、海外へ輸出するボロ車(部品取り車)を業者から譲り受け、パーツを補い再構築。総工費5万円で1台を手に入れた。格安武勇伝を語る彼は満足そうだ。
ところが、悲劇が彼を見舞う。現場にて通勤車両の鍵を紛失したようだ。必死の捜索もかなわず鍵は見つからない。仲間と寮へ帰るため、仕方なく鍵屋の出張を手配した。代金は5万円。緊急性や出張費などで料金が高くついた。
翌日、遺失物は見つかった。誰かが拾ったのか、親切にも蹴飛ばされないよう一段高いところに置いてあった。作業員Oは、新調した5万円の鍵と以前の鍵を左右の手のひらに乗せてうつむく。一呼吸おいて、古いほうを草むらにぶん投げた。
5万円の車と5万円の鍵。どちらに価値があるか、という話ではない。両方とも尊いのだ。車のDIYで浮いたお金が、今回のために充てられたと信じたい。さらにリサイクルという貯金を地球のためにしたことも忘れてはならない。
追伸、
最安を求めて中華オークションサイトをGoogle翻訳で泳ぐ彼には、費用対効果などという不粋な言葉は似合いません。
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