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真のSamurai

Chess.comに登録してから、1ヶ月半が経過した。
実戦はもちろん、タクティクス(戦術、次の1手を考慮する)問題を解いたり、レッスン動画も見たりしながら毎日チェスを楽しんでいる。
2ヶ月前にはチェスに全く触れていなかったので、思いもよらなかったことである。人生とは不思議なものだ。


さらにYouTubeで、海外の方が対局する動画もよく見ている。
私は、握手をしてから対局するシーンが好きだ。
見ていてすがすがしい気持ちになる。
これで盤面も理解できるようになったら、もっと楽しいのではなかろうか。

最近は、チェスの夢もしばしば見るようになった。
対面対局は17年前に1度だけしか経験がないので、対面での対局への渇望からかもしれない。
チェスを2ヶ月前に再開してから、対面でのチェスの経験はまだないのだ。
残念ながら、県内にチェスサークルは見当たらなかった。


そうなると、チェスの環境や大会も多い東京への思いはつのるばかりである。
初心者でも、大会に出てみたい。実際に盤を挟んで対局してみたい。
東北地方在住の自分にとって、東京は特別な非日常空間だ。
最後に東京へ行ったのは4年前。近いようで遠い、対面チェスと東京。

そんなことを考えながら、Chess.comへログイン。
今日は、どこの国のどんな人と対局できるのだろうか。
世界中のいろいろな国の人と対局できるのが、Chess.comの魅力だ。
さっそくマッチアップ。
対局相手は、エジプト人だ。
いつもはアメリカ人の方と当たることが多いので、エジプト人と当たるのはかなり珍しい。
気合を入れて盤面に向かう。

ところが、対局開始直後に、いきなりチャットで話しかけられた。
対局終了間際にチャットが送られてくることはあるが、対局開始直後のチャットはまれな出来事だ。

向こうも日本人と当たることが珍しいのか、なんだか興奮気味である。
「Japanese!Sushi!」
どうやら、私のサムネイル画像に反応してくれたらしい。
日本と言えば寿司!と思い、サーモンの寿司をサムネイルに設定したのだ。

貴重なコミュニケーションである。
何と返そうか。しかし、ここでふと、気づいた。
英語が出てこない……
仕事で英語が必要だったので、大昔に勉強したはずなのだが全く思い出せない。英会話スクールへ通ったにもかかわらず、だ。こんな時にナンテコッタイ。

結局、局面を考えながら絞り出した英語が、

「Sushi is very nice!」
我ながら、目を覆いたくなる英語力である。本当に英会話スクールへ通ったのか。過去の自分に、思わず突っ込みを入れる。


ところが、エジプト人の反応は意外なものだった。なんだかとても嬉しそうな様子である。こちらも、とりあえず伝わったようで嬉しさがこみあげてきた。さらに、エジプト人は話しかけてきた。

「Sushi!Pokemon!Samurai!!!」

もしかして、日本が大好きなのだろうか?それにしても、エジプト人の日本のイメージがポケモンと侍とは……ピカチュウすげえ。
しかし、局面が私の手番で難しかったこともあり、英語での返しが思い浮かばない。でも、何か反応したい。

「( ̄ー ̄)」

ニヤリとした顔文字一つで表現。英語力は一体いずこへ。
ただ、またしても反応が嬉しかったらしく、エジプト人はテンションが上がっている。

しかし、対局が大詰めになっていき、彼の口数は減っていった。
スマホの画面から、「絶対に俺が勝つ!」という気迫を感じた。
だが、技術は未熟でも、こちらも気持ちで負けるわけにはいかない。
脳みそをフル回転させて、盤上に打ち込む。

終わりが見えない戦いが続いていたが、どうやらゴールが見えてきたようだ。その時だった。チャット欄にコメントが表示された。

「bye bye Samurai!」

そう爽やかに言い残すと、潔く投了して去っていった。
彼こそが、真の侍。
ますますチェスが、対局が好きになった瞬間である。

さて、今日は一体どんな対戦相手と出会えるのだろうか。
私のチェス熱は、ますます加速しそうだ。

関連リンク…チェス.com

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