「予防の手」を覚えて勝率アップ
チェス用語でプロフィラキシスは「予防の手」と呼ばれている。
相手の狙いを事前に察知して、その手を防ぐ意味だ。
では、さっそく予防の手の具体例を私の実戦から紹介。現局面は白がb5にいたナイトをc3に戻したところ。
黒番の私はc8のビショップの展開が遅れているので、ビショップの活用中心に考えていた。しかし、どうも思わしくない。
そこで、相手の狙いを考えてみたところ白は「Nd5のナイトフォーク」を次に狙っていることに気づいた。
相手の狙いを察知して防ぐc6が地味ながら好手。d5の白マスをポーンが守ることで、ナイトの動きをけん制している。
これで黒は互角を維持。
自分が指したい手を考えると同時に、相手の狙いも考えてそれを防ぐ。この考え方は、FMの山田弘平先生の棋譜添削講座で自分の棋譜を見ていただいた時に学んだ。
チェスで勝ったりレートが上がることももちろん嬉しいが、学んだ練習の成果を試合で発揮できるのもとても嬉しい。
途中を飛ばして最後の場面。次の1手で勝ったと思ったのだが……
次の1手はRf4!
黒はRh4のチェックメイトを狙っている。単純な狙いだが、対局中は相手がどうやって受けるのだろう?と思っていたのだが、ほどなく投了。チェックメイトの狙いを防ぐ手段はなかったようだ。
ところが、だ。終わってから解析してみると、この局面の評価値はほぼ互角。不思議に思って考えてみたところ、あ!と気づいた。白には黒の狙いを防ぐぴったりの受けがあったのだ。
それはRa4!遠くh4までルークの利きが通って、黒のチェックメイトを阻止。
これなら白もがんばることができた。
ここで黒の追撃手段はe4。しかしd4と突いてビショップの利きを遮断すれば、g1にキングの逃げるスペースができて白には粘る余地が生まれる。
黒が勝ちきるには、まだまだ大変な局面だ。
盤面右下の戦いが長く続いたので、お互いルークを浮く手をうっかりしていたようだ。負けに見える局面でも、最後の最後まで何か助かる可能性があるかもしれない。
最初は相手の狙いを見破るのは難しい。しかし、地道に相手の狙いを考える癖をつけていくと、局面の急所が見えてくる可能性がある。
相手の狙いを防ぐ「予防の手」を身に着けて、ぜひ勝率アップにつなげてほしい。
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