『もう一度旅に出る前に』40 出発計画 文・写真 仁科勝介(かつお)
旅のスタートの計画を立てた。もちろん変わってしまう可能性もあるけれど、ほぼ決定だ。
今回の計画は逆回り。前回は実家の倉敷を出て九州、四国・中国、それから東日本に向かって時計回りに進んだけれど、その逆である。まずは東日本を中心に進んで、それから西日本に進むイメージ。
スーパーカブは今も実家に置いている。そして最初に関東まで移動したいのだが、倉敷から東京までは、下道で770kmある。高速道路は乗れないし、前回の旅は順調なときに、1日200km前後を基本の走行距離にしていた。車なら序の口の距離だが、カブはこれぐらいで限界なのだ。お尻も痛いし。だから770kmを走ると、4日間の行程になる。
ただ、それは最初からちょっと飛ばしすぎである。前回初日に怪我をしたようなことは御免だ。最近も誰かが交通事故にあった話や、うっかり怪我をした話を聞くとずいぶん耳に残ってしまう。伏線に聞こえるのは、人間のあるあるだと思う。
というわけで、最初はフェリーに乗ることにした。岡山県宇野港から香川県の直島へ渡り、さらには高松まで行く。原付で香川へ渡るには、高速道路の瀬戸大橋は通れないし、今は一度船で島を経由しなければならない。そして、高松からは徳島港まで目指す。徳島港からはおよそ1日1便、東京の有明に長距離フェリーが出ているのだ。それに乗ろうと思う。
有明に着いたら、おそらく埼玉を目指す。埼玉、群馬、栃木、千葉、茨城と進んで、東北へ。もし予定通りに進むことができたら、関東と東北はそのとき何月だろうか。今まで訪れた季節と違う、あたらしい風景に出会うことができたら幸せだ。
なぜこのルートなのか、それは「直感のようなもの」である。とはいえ、「直感のようなもの」の中には、直感ではないことも含まれている。小さな考えのかけらの集積だから。まずは何より、その直感の強度が欲しかった。自分が納得できるまでにだいぶ時間がかかった。
だから同時に、ようやく旅で目指すものも、はっきり見えた。足場のコンクリートが乾いたような感覚である。この納得感に至るまでも、むずかしかった。旅を経た先の、半歩先の夢を持てることが、大きなモチベーションになる。
仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
HP|https://katsusukenishina.com
Twitter/Instagram @katsuo247
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