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『旧市町村日誌』 53 踏ん張りどころ 文・写真 仁科勝介(かつお)

9月18日(水)

 

個人的な感覚ですが、岐阜県の旧市町村をすべて巡ることができたことは、ぼくにとって大きいことでした。単純に、数が多いというのが理由のひとつです。

のべ75のまちを巡りましたが、数が多いし、山間部も多いだろうと予想していました。山間部が多いということは、カブにとっての負担も大きい。なので、カブのトラブルがなければと思うなかで、早いタイミングでカブのメンテナンスができたことも良かった点でした。

 実際に旅を進めると、軽々と峠越えが1000m前後のことも多かったし、残暑も続いていたし、夕立も頻発していたし、簡単ではなかったけれど、気持ちを切らさずに進められたことは、ほんとうに良かった。

 

今、岐阜県の旧市町村の地図を見ると、それぞれの地名が懐かしく感じられると同時に、もう同じことはできないな、と思います。同じことはできない、というのはこの旅そのものでもあり、日本全体でも同じことを思うし、だからこそ今を一生懸命にがんばりたい、という気持ちがループしています。

 特に、当日にはあたらなかったけれど、飛騨古川や郡上のまつりが印象的でした。このふたつは趣向がまったく違うというのも面白いし、郡上のなかでも白鳥町や八幡町で違いがあるし、そうやって細かく見れば見るほど、現れてくる世界があって、それを一度の人生で網羅することはむずかしい。むしろ、その土地にいることで知ることのできる深い世界が身近にあるならば、それはとても幸せなことだと感じます。

 

一昨日から福井県に入りましたが、やはり久しぶりに海を見たことが嬉しかったです。岐阜県はずっと内陸の旅だったので、海が見えたときに、違う場所に来たなあ、と体が実感しました。

 週末に予定があり、現在が水曜日の朝なので、水、木、金と、あと三日間進むことが、眼前の目標です。雨も近づいているけれど、無理をせず進みたい。

 

予定の間に、実家に立ち寄るかどうかも迷っています。すでに、週末から気温が下がることを見込んで、秋から冬にかけての服が欲しくて、母親と連絡も取っているのですが、やっぱり直接確認しないとわからないなあ、とも思います。

 気温や服装の感覚は、びっくりするぐらいあっという間に変化しますよね。これだけ暑いと言っても、まもなく、すっかりその暑さを忘れて、寒いとしか思わなくなる。夏に冬の寒さは思い出せず、冬に夏の暑さは思い出せない。

人はつくづく、環境に包まれている生き物だと思います。



仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。


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