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理論物理学と実験物理学、あなたはどちらが向いている?ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㉖
今回は研究&大学院エッセイです🖋 あらゆる科学は、観測事実をもとに仮説を立てて、それを実証ないしは反証することで進歩してきました。リンゴを含め、あらゆるものは手から離すと地面に落ちることから、質量を持つ物体同士は引力を持つという仮説を立て、それが極微な中性子でも巨大な天体でも成り立つことを観測しました。黒体放射のエネルギー分布の長波長側の振る舞いを説明するためには、原子や分子の取り得るエネルギーが飛び飛びである必要がある、という仮説から、光電効果がミリカンにより実証され、量
すべての物事は数式で表せるというけれど<後編>ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」⑲
前編はこちらから (少しだけおさらい) ”なぜ”をひたすら続けると 数学でも物理でも、「なぜ」という問いをひたすら続けていくと、どこかの段階で堂々巡りに陥り、どう考えても答えの出ない問いまで行きつきます。そのとき、理論の連鎖の源流に当たる命題を、「原理」や「公理」という名のもとに「正しい」、と仮定するほかに方法がありません。これは科学の限界であるとともに、美しさでもあります。つまり、いくつかの「原理」や「公理」だけを仮定すれば、個々の事象は自然な演繹で導かれるという、い