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死因贈与と遺贈

お世話になった人に私の財産を相続させたい、という終活中の方がいるかもしれない。
その際に、一つ、死因贈与と遺贈の違いを知っておくことが有効かもしれない。
死因贈与は、贈与契約の一種。一方、遺贈は、遺贈。遺贈とは、遺言によるもの。
贈与契約と遺言とは実は大きな違いがある。贈与契約は、契約、とついているように、贈与する人と贈与を受ける人の2人で締結する。一方、遺贈は、贈与者の単独行為。2人でする行為と、1人でする行為だと性質が変わってくる。1人でするなら、もちろん、1人で取り消すことができる。2人でするなら、2人でなければ取り消すことができない。が原則。安定性が違うんだね。1人だと簡単に取り消せてしまうってこと。贈与する側からすると、いつでも取り消すことができる遺贈は、都合がよいね。けれど、贈与者にとって都合がよいってことがいつでも贈与者にとってよいかどうかは別の話なんだ。
例えば、あなたが、老後の世話をしてもらいたいと思っていて、その相手の方に対して、お世話になったお礼として遺贈したいと思ったとする。それを将来、ちょっと関係が悪くなったとかで取り消してしまってよいと思うかな。相手の方は残念だと思うだろう。贈与を前提としてお世話をしてもらうのであれば、あとあと取り消すことができないように、贈与契約を締結しておくべきなんだ。
これは、単にべき論、価値観の話だけではない。年をとると、誰だって次第に認知能力が落ちてきてしまう。そのときに、いつでも正しく動けるとは限らないんだ。もしかしたらあなたの財産を狙うだれかに、遺贈を取り消すようにそそのかされてしまうかもしれない。認知症の方が書いた遺言は無効になることもあるから、取り消しができないかもしれない。でも、いつでも証拠がしっかりと集まるわけではないし、争うことが嫌いな人は、泣き寝入りしてしまうかもしれない。そうなると、お世話に対して報いたかったあなたの気持ちは、誰かの悪意によって達成されないということもあるかもしれない。
だから、不安定な遺贈ではなくて、贈与契約によって、死因贈与という形で贈るのがよいと思うよ。

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