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「まとも」なおじさんに惹かれる主人公の無垢さが痛い【わたしたちは無痛恋愛がしたい】

「まとも」なだけの相手に恋愛感情を持つ若い女性のことを 笑えるわけがない

コミックDAYS わたしたちは無痛恋愛がしたい 〜鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん〜


ひさびさにきっっっつい作品を読んだなという感じ……
この作品の、人の世に漂ってる「人のダメさ」の解像度、なんだこれ?
この台詞はまともに生きることが当然であるという善良な大人を体現したおじさんなんだけど、私もやはり、主人公のダメさを笑うことも、糾弾することもできない。

いるのだ、たしかに。クズさを承知でクズ男を好きになる女というのは。私の周りにもいるし、今よりもっと若い頃、私の内側にもいた。
もっとも、好きだと言われれば誰でも良いわけではない。条件はひとつ、不快じゃないこと。
ここさえクリアした相手なら、もうそれだけでいい。月収が5万だろうが、暴力を振るおうが、二股をしようが、自分の女の部分を全部ささげてしまう。(この漫画の主人公の場合、不快じゃないこと以外にも惹かれる面がたくさんあるから、そりゃ相手の男は星のようにきらきらしく見えることだろう)
私を含めたこれらの女は、異性と築く最上級の理想的関係が「恋愛」しかないのだ。そしてもうひとつ、恋人がいると得られる、あの「自分は、まともである」という自信に包まれた状態に抗えない。だから付き合いが進んでクズのクズさ加減にうんざりしてきても、愚痴を言うことはあっても手放せない。そいつを手放すことは、自分の自信をひとつ失うことと同じだからだ。

だからこの作品を読んだとき、主人公はこのおじさんに惹かれてしまうのだろうなという危惧というか予想がなんとなくあった。そして、この作品はどっちにいくのかな、と。
おじさんがまともさの蓮座から降りて下界に落ちてくる話になるのか、それともおじさんは動かず、ただ主人公を「まとも」さの光で照らす存在になるのか。
私は、後者がいいなと思っていた。たとえほんとの終着点で主人公とおじさんが恋愛的にくっつくのだとしても、異性への好意感情が恋しかない主人公が変わるところを見てみたい。

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