春に殺されてしまう。ピッタリ閉じたはずの窓から春が流れ込んでくる、冬に縋りたくてダウンコートを着て外に出る、周りを歩いているのは暖かさに惚けているような顔、顔、顔。おまえらついこの間までマフラーに顔を埋めて、睨みつけながら歩いていたくせに。首を照らす生暖かい太陽が責め立ててくる。なにがピンクだ、なにが出会いと別れの季節だ、なにが生命の息吹だ、こんなに殺されそうになっているのに 春なんて来なくていい、もうほっといてくれ、どうせ蝶なんかにはなれないんだからサナギのままでいたかった ずっと冬のままうずくまっていたかった もう人の視線から守ってくれる防寒具はない、剥き出しの醜さを晒して、私はずっと芋虫のままだ

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