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核融合ロケット研究(11)/設計ノート2

他にアイデアは?
磁気ノズル:

図1axial nozzle/ Jason

今まで、single(典型的にはVISTA)、2 coils, multi coilsなど円形(solenoid)コイルの組み合わせを紹介してきましたが、もちろんこれ以外にもまだまだいろいろ考えられると思います。最近、Univ. AlabamaのJasonさんと議論しているのですが、彼の推奨の磁気ノズルを、図1に示します。axial nozzleというもので、たくさんのコイルの組み合わせで、右下の図の赤い点にプラズマを置くようにするものです。右上図にありますように、磁場は、円周方向の成分がほとんどです。イマイチ私には、利点がわかりませんが、興味がある人は、彼の論文を参照してください。多分、プラズマ膨張によるr方向電流Jrと円周方向磁場Bθによるローレンツ力JrxBθ=z方向の力が推力か。
我々の場合(VISTA type, single solenoid coil)は、確かにプラズマはr方向に最初は膨張しますが、磁場(主にz方向)がかかっているので、それを排除するために、周方向に運動し、その方向の電流(反磁性電流)が流れます。この電流により、主にz方向の磁場が生じますが、コイル付近では、r方向の磁場(Br)が生じます。コイルに流れる周方向電流(Jθ)とこのBrのローレンツ力Jθx Brによりz方向の力がコイルに生じ、これが推力となります。もちろん、推力を磁場によるプラズマの運動量変化(=力積)によっても評価できます。この2つの量が同じであることは確かめてあります。
10月から、こちらにAlabamaから実験に来ますので、もっと詳細に議論できると思います。

Pulsed Magnetic Nozzle for fusion propulsion, Jason Cassibry, et al.

推進材の整形:

図2 推進材の整形/ Sahin 概念図
図3 推進材の整形/Sahin 例示

以下の論文/Sahinにあるのは、我々の提案とは反対に、コイル方向に推進材を全部集めるというものです。図2、3参照。我々のは、コイル方向の推進材を薄くし、その方向にプラズマを噴出し、推進効率を増大させるものでしたが。Sahinさんの方法では、厚くなった推進材で、コイル方向の高速中性子の減速の増大が図れます。しかし、我々のシミュレーション(Yamamura)では、推進材がほとんどプラズマ化しませんでした。なので、磁場と相互作用せずに飛散し、結局は、相互作用する質量を小さくし、推力が減ることになるのではと予想されます。

Şahin, S., Şahin, M. H., “Evaluation of the Neutron and Gamma-Ray Heating in the Radiation Shielding and Magnet Coils of the VISTA Spacecraft,” Fusion Science and Technology, Vol. 33, Issue 4, 1998, pp. 418-434.
Toru Yamamura, Masafumi Edamoto, Tomihiko Kojima, Taichi Morita, Naoji Yamamoto, Atsushi Sunahara, Tomoyuki Johzaki, Hideki Nakashima , "Numerical analysis on a conical shaped target for laser fusion rocket" , High Energy Density Physics 37 , 100894 (2020). https://doi.org/10.1016/j.hedp.2020.100894

MHD(電磁流体)コードを使用したい:
私たちは、今までhybrid codeを用いてきましたが、現在は、このコードの妥当性を確かめるために、実験データとの比較を行っているところです。
一方、今は、いろんなMHDコードが公開されて、自由に使用できます。ただ、磁気ノズルのプラズマ挙動解析に用いる時には、プラズマー真空境界を取り扱えるものをお使いください。真空境界が取り扱えず背景ガスを入れるタイプですと、背景ガスの中に擬似衝撃波が立ったり、プラズマが膨張し、希薄となり、背景ガスと区別できなくなります。そうすると何をやっているのかわからなくなりますので。



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