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核融合ロケットの研究(7)/ 推進材の整形

図1 磁気スラストチャンバー 推力発生のメカニズム



図2 通常のダーゲットと整形ターゲット



 今一度確認ですが、レーザー核融合ロケットの推進システムとしての磁気ノズル/スラストチャンバーを研究してきました。(最初に、米国原子力学会誌に論文を投稿したときに、タイトルを磁気ノズルとしていたのですが、査読者から、これだと定常流れを皆は考えるから、我々のパルス的な場合は、スラストチャンバーにした方がいいのでは、と言われてこちらに修正した経緯があります。しかし、今は、両方適当に使用しています。)推進メカニズムを図1に示します。要は、磁場がバネの役割を果たし、プラズマを放出する。その反作用で、コイル・ロケット本体が推力を得ます。核融合燃料の周囲は、推進剤(Moderator)で囲まれています。図2左参照。核融合プラズマとの衝突で、推進剤もプラズマ化する。核融合プラズマは、高速ではあるが、質量は小さい。これを推進剤と衝突させ、遅くとも質量の大きなプラズマを作る。これにより、大きな推力が得られる。式で書くと、
T(thrust)=mdot x v
P(power)=o.5 mdot x v**2
T=(2P x mdot)**0.5
mdot: 推進材流量(kg/s), 速度(m/s)
核融合燃料は、せいぜい、40mgの質量。一方、推進剤は、2.4g~50gなので、推進剤を追加し、mdotを大きくし、推力Tを増加・調整する。 Pは、一般に一定。
先ほど、推進剤で核融合燃料を囲むと述べたが、その推進剤の形状を最適化(整形)して、推力・推進効率の向上はできないか。シミュレーションによれば、プラズマをコイル方向(磁場が強い方向)に噴出すれば、推進効率が向上することが示されている[1]。図2右図は整形ターゲトの1例。
コイル方向が薄くなっていて、そこからプラズマが噴出し、コイルにより有効に反射される。
球状ターゲットの場合の推進効率 η は 66 %,整形ターゲットの場合の推進効率は 78 % だった.

[1] N. Matsuda, et al,  Journal of  Physics: Conference Series 112,  042079 (2008)
http://art.aees.kyushu-u.ac.jp/research/LFR/lfr-publications.htm

興味がある人は、詳細は、以下の松田くんの修論を参考にしてください。
いろんな使い方があって、ーーー
ロケットの運用として、最初は目的地に向けて加速し、その後軌道の途中で、方向変換して、減速する必要がある。方向変換をするためには、推力ベクトルの制御が必要である。
推進剤の一部をカットすることで、プラズマ噴出が非対称となり、推力の向きを変えられます。推進剤の整形は、今は、3D printerがありますので、そう難しくはないのでは。
http://art.aees.kyushu-u.ac.jp/publications/2008/Mmatsuda.pdf p.29-33, p.38-39

方向転換用ターゲット cut-off model

これらのことは、アニメを見れば、分かりやすいので、
http://art.aees.kyushu-u.ac.jp/research/LFR/lfr-publications.htm
にあります「退官記念講演 」のファイルをご覧ください。
35枚目から44枚目くらいを見てください。
これは、核融合ロケット研究関連のスライドをまとめたものです。
全体の、例えばイオンエンジン、核融合炉設計などの仕事につきましては、私のReseachGateに入って検索ください。


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