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核融合ロケットの研究(9)/ 推力ベクトルの制御

まず、何故推力ベクトルの制御が必要かですが、VIST’Aでもそうですが、宇宙航行の途中で、船体を加速から減速するときに、普通は、船体を1回転させます。通常は、船体に付属した補助の化学ロケットで行うのですが、これを磁気ノズルを工夫することにより、余計な化学ロケットなしで、行おうとしたら、という話です。そのために、磁気ノズルからのプラズマ噴出方向を少しずつ変えることになります。
 もちろん、これもいろんな方法が考えられます。それを検討した論文は、
Yoshihiro Kajimura, Ryo Kawabuchi, and Hideki Nakashima, "Control techniques of thrust vector for magnetic nozzle in laser fusion rocket ," Fusion Engineering and Design 81, 23-24 (2006)
http://art.aees.kyushu-u.ac.jp/research/LFR/lfr-publications.htm

前回にご紹介した、推進剤の一部をカットして、その方向にプラズマ噴出を行うのも一つです。
 ここで、ご紹介しますのは、小さな矩形コイルの組み合わせで、一周の大きなコイルを形成し、その小さなコイルに流す電流を調整することで、推力ベクトルの偏向を得るものです。
概念図は、以下のようです。

推力ベクトルの制御・矩形コイルの組み合わせ

論文は、

Y. Kajimura, R. Kawabuchi, N. Matsuda, and H. Nakashima, "Numerical simulation of fusion plasma behaviors in a magnetic nozzle ," Transactions of Fusion Science and Technology 51, 229-231 (2007)

これもアニメで見た方が理解しやすいかと思います。
「退官記念公演」の34枚目のスライドを参照ください。
このアイデアは、実験的にも確認しています。
Taichi Morita, Masafumi Edamoto, Satoshi Miura, Atsushi Sunahara, Naoya Saito, Yutaro Itadani, Tomihiko Kojima, Yoshitaka Mori, Tomoyuki Johzaki, Yoshihiro Kajimura, Shinsuke Fujioka, Akifumi Yogo, Hiroaki Nishimura, Hideki Nakashima, Naoji Yamamoto, "Control of unsteady laser-produced plasma-flow with a multiple-coil magnetic nozzle ," Scientific Reports 7, 8910 (2017)

 今後は、本当に、電流を調整することが可能か、また、その時にコイルに働く力はどうか(構造設計)を検討しなければなりません。
まだ、他にもたくさん方法はあるかと思います。論文を探して見つけられませんでしたが、確か三個の円環(solenoid)コイルを角度をずらして組み合わせるもので、三個のコイルに流す電流を調整することにより、生成する磁力線を非対称にするものでした。
皆様も考えてみてください。



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