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核融合ロケット研究(10)/ 設計ノート

設計はどうやるの?:

これは、ひたすら質量の計算です。超電導コイル(SCM)、遮蔽、始動用原子炉を含めて。ここで性能の指標となるのは、α:specific power 比出力(kw/kg)です。目標値は、α=1kw/kg。 我々の例では、α=0.4とかなり厳しいです。VISTA α=10程度です。以下の論文の3章の伊勢さんの記事(p.623)を参照ください。これをもとに、ミッション解析(火星まで何日で行けるとか、ロケットの推力をどう変化させるなど)を行うことになります。簡便な式もありますが、IHIさんなどは、ミッション解析の専門家がいて、軌道の最適化などが行えるようです。

小特集レーザー核融合ロケットの原理実証研究(プラズマ・核融合学会誌vol97 2021/11)(pdf)
http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2021_11/jspf2021_11-jp.pdf

肝心の質量の計算ですが、以下の論文にまとめています。ミスプリを修正して、かなり汚い原稿になっていますが。これは、Hydeの論文(1972年)を参考にしています。私の独断と思い込みが入っていますので、ただ感触を得るためにご覧ください。しかし、1972年に、Hydeがこれだけ詳細に議論しているのは驚きです。まだ、レーザー核融合の概念が出始めの頃です。彼は、まだMITの院生の時か。すごい。彼のは、磁気ノズルは、2個のコイルを使用しています。私のnote投稿の記事の(5),(7)の表紙を参照ください。参考文献3)にもあります。下にも入れておきました。
それから、彼らは、検討を重ねて、VISTAの1個のコイル・Conical shapeを提案しました。遮蔽体の後方に超電動コイルを置き、その後方の影の部分に、レーザー発生装置など、種々の構造物が置かれています。図3を参照。VISTAは、
VISTA-A Vehicle for Interplanetary Space Transport Applicationの頭文字をとったものです。ネットで検索すれば、このレポートを見ることができます。UCRL-TR-110500を入れれば確実か。この著者のOrthさんは、今はリタイアされて、PuFFのAdamsさんを私たちには紹介されました。

Hideki Nakashima, Hidetoshi Shoyama, and Yukinori Kanda, "Design Study of Laser Fusion Rocket ," Plasma Physics and Fusion Technology 66, 291-319 (1991)

http://art.aees.kyushu-u.ac.jp/research/LFR/lfr-publications.htm

R. Hyde, et al. Prospects for rocket propulsion with laser-induced fusion microexplosions, AIAA Paper No.72-1063,1972

図1レーザー核融合ロケット概念図/Hyde
図2VISTA/Orth
図3 VISTA 断面図

500人乗り:
VISTA crewは、6~10名のようです。これだと、VIPを運ぶにはいいかもしれませんが、本格的な火星移住計画が進展すれば、一度に運ぶ乗員数も、多くなくてはなりません。今の旅客機並みに、500名は、一度に運びたいものです。その時には、今のVISTA型(conical shape)には拘らずにーーーmulti-coil sytemをいくつか束ねてエンジンを構成し、核融合出力を大きくし、推力を増大させる必要がありそうです。船体は、前方によくある円筒形の客室を設ける、人工重力を発生させるなどか。

しかし、問題は、炉心ですよね。確かに、AdamsさんのPuFFのように、ターゲットに、Uなどの核分裂性物質を持ち込めば(hybrid target)、核融合点火が容易になったり、発生エネルギーも増大したりしますが、核分裂性物質が発生します。いっそのこと、原爆・水爆は、実用化していますから、このエネルギーを利用することも米国では、今でも考えられています。この場合は、出力が大きすぎて、磁気ノズルの設計が困難になります。臨界質量は、密度の2乗に逆比例しますから、いかに効率よく圧縮して、臨界質量を小さくし、発生エネルギーを抑えるかがポイントになります。我々も、hybrid targetを検討してもいいのですが、先に書きましたが、放射性物質を放出するのでは、普通のfusion/cleanが達成された時には、誰もhybrid/dirtyを見向きもしなくなると思われます。だから、やっても無駄になると思われます。
大阪大学レーザー科学研究所では、高速点火方式、最近では、それを一段工夫して磁場を組み合わせたものなど、着実に研究が進展しているようで、それを期待したと思います。また、ベンチャー企業Ex-fusionなど、若い人の斬新なアイデアで核融合実用化のスピードアップを願います。


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