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家にあるものでそこそこ良い物撮りをする方法

※この記事は、京都芸術大学(旧名称:京都造形芸術大学)クロステックデザインコースで担当している1年生向けの授業「造形技術演習」の内容をベースにしたものです。

物撮りの必要性

ここ最近…というか大分前から、「きれいな写真を撮る」ということは分野を問わず大事なスキルになっています。Instagramを始めとしたSNSでフォロワーを増やすために重要なのはもちろんのこと、メルカリやSTORES、BASEなどのECサービスで自作グッズを販売するときにも、スカッときれいな写真が並んでいると購買意欲がそそられるのではないでしょうか。

ものの魅力を伝えるには、そのものの形や色がイメージ通りに写真に写されていることが必要です。いわばレベル1の技術ですね。写真の魅力でものの世界観を伝え、いっそう魅力を引き出すレベル2の技術も身につけるにこしたことはないですが、この記事では「ものの形と色をイメージ通りに伝える」ということを目標にしたいと思います。

プロダクトデザインを仕事にしていると「物撮り」(ブツどり:ものを綺麗に撮影すること)の機会があるのですが、毎回カメラマンさんにお願いすることもできないので、自分で撮影をすることが度々あります。
大学のころにスタジオ写真の基礎を学ぶ授業があったこともあり、コストをかけずにそこそこきれいな写真を撮ることにはわりと自信があります。その方法をもっとかんたんにしたノウハウを学生に紹介したところ、いい感じに手応えがあったのでnoteにも書いてみることにしました。

以前の記事でメイン画像にしたこの写真ですが、実は自分が管理する共同アトリエでDIY的に撮影したものです。撮影風景はこんな感じ↓

機材は1万円もしない三脚と型落ちのa7R、ヤフオクで落とした安いオールドレンズを使っていますが、そこそこ綺麗に撮れているんじゃないかと思います。
一眼を使わずスマホ撮影でも、工夫によってそこそこのクオリティを出すことができます(最近のスマホカメラの性能はすごいですよね)。以下の段落では、NG写真をいかに改善するかということを通して、撮影のコツを解説します。

NGな写真はどこがまずいのか

この写真は、自分のスマホPixel3で、オールドmacをモチーフにしたロボット型フィギュアを「何も考えずに撮影した」ものです。…なんだか気持ち悪いですね。どこに違和感があるか、少し考えただけでこれだけ挙げることができます。

1. 全体的に暗く見える
2. 余計なものが置いてある
3. 余計な場所に影が落ちている
4. 余計な背景が見えている上に、机のラインが傾いている
5. パースがつきすぎている(赤い補助線で、平行であるはずの辺が後ろに向かって強くすぼまっている)ため、前につんのめって見える

ちなみに、このときの撮影状況はこんな感じです。スマホから向かって左側に窓があり、そこから自然光が入る環境なので、撮影には向いているはずなのですが、アウトプットはいまいちですね。まず机を片付けろ!と思いますが、特に意識せずに撮るとこうなりがちだったりするんじゃないでしょうか。

問題点を改善する

さて、これら1〜5の問題点を直してあげるとどうなるでしょうか。

なかなか良くなったんじゃないでしょうか!
同じ場所、同じスマホで撮影していますが、アウトプットは劇的に変わりました。ここで行ったことは、

1. 撮影時に露出(明るさ)を調整して、暗く見えないようにした
2. 机を片付けて、A4の紙をつなぎ合わせた背景を机に置いた
3. 水平垂直をスマホカメラのグリッド(撮影時に表示できる枠線)を使って合わせた
4. スマホのズーム機能を使って、パースを弱めて形のゆがみを減らした
5. レタッチソフト(Photoshop)を使って、背景の紙の継ぎ目を消した

ということです。5に関してはやや専門的な技術なのでズルといえますが、大きな紙を使えば省略することができます。

このときの撮影環境はこんな感じ。三脚がない場合、手持ちでも十分撮影可能だと思います。(写真に詳しい方からすると、もうちょい気の利いた撮影はできないのかと思われるかもしれませんが、最初に比べると大分よいということで、お目こぼしいただけると嬉しいです)

光源はとっても大事

実は、NG写真のときにも実はすでにクリアしていたポイントがあります。それは「自然光の入る窓のそばで撮影する」ということ。

写真家の鈴木心さんが運営されているYoutubeチャンネルに、光の環境を整えることについてものすごく参考になる動画が上がっています。これを見れば正直この記事で書いている以上のことがすべてわかるのですが、
・自然光を窓から取り入れ、
・レースのカーテンなどによって光をやわらかくし、
・室内の明かりを消して撮影する

ことで、鈴木心さんがやっていることをさらに簡単にしたような、柔らかい光の環境が得られます。

一眼はやっぱり違う

ここまで、スマホでそこそこいい写真を撮る方法を解説しましたが、そうはいっても一眼レフやミラーレス一眼の写りはやっぱり違います。

ここまで来ると「今すぐできる」の域を若干超えていますが、やはり時間をかけて仕上げた写真には、それ相応の魅力がありますね。

まとめ

特別な機材がなくても、窓のそばにある机を片付けて、背景に紙を敷くなどのひと手間によって、そこそこきれいな写真を撮ることができる!と思っていただけたでしょうか。自分の好きなものを撮るとか、いろんなものを撮り比べてみるなどすると、テンションが上がってさらに良いんじゃないかと思います!

最後に僕の大好きな撮影ノウハウ記事を紹介します。

webライターの松本圭司さんによる2012年の記事なのですが、今見てもたくさん発見があります!何より、カップ麺や松屋などの食事をカフェっぽく変換していく手腕が鮮やかでめちゃくちゃおもしろいです。

それでは、よき物撮りライフを!

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