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化学物質過敏症になりました その10「コロナ禍での消毒液」

コロナウイルスが猛威を振るうようになって、多くの場所でアルコールが主成分の消毒液が使われるようになりました。店や病院の入り口で、シュッと手にかけること自体は困らないのですが、その空間全体に恐ろしい香りが充満する事にとても困るようになりました。
銀行や郵便局のATMやスーパー、病院など、入った瞬間ウッとするニオイ。しばらくすると慣れるのですが、建物を出ると、マスクに吸着した独特のニオイで辛くなります。私はマスクの下に必ずガーゼを当てておいて、くさいと感じたら、すぐガーゼだけ取り換えるようにしています。家に帰れば、服も移香で臭くなっているし、スーパーだったら購入した多くの商品に独特の匂いが移っています。このことについては「化学物質過敏症になりました その4」でも書きました。

 私の近所に昔ながらの大きなA食料品店があります。バーコードも導入せず、壁も殆どない市場という感じのお店です。旬の時は、びっくりするくらい安く野菜や果物を購入できるので(小松菜3袋100円、レタス1個30円、洋ナシ1個80円とか)このお店を利用するようになってから野菜をよく食べるようになりました。このお店の野菜売り場に数年前エアコンが導入されて、野菜売り場の入り口に細いビニール製の、のれんが取り付けられました。風があれば揺れるのれんですが、やはり風通しは悪くなります。
 コロナウイルス対策のために、このお店もアルコール消毒を始めました。すると野菜売り場が、スーパーなどと同様の独特のニオイで充満するようになってきたのです。特に、冬場、風が強い時に店の西側のシャッターを降ろすと野菜売り場は風通しがとても悪くなり、居るのが辛いくらいになりました。また、大根などの野菜も移香で特有のにおいがして、服やかばんも臭くなりました。

私は、お店の店員さん数人に「実は化学物質過敏症になって消毒液の匂いが辛いんです。」という事を告げて何とか工夫できないか相談したり、店長さんには、「シャッターを降ろす時は、西側にある小さな扉だけでもいいから開けてもらえると助かります。無理なら仕方ないですけど。」とお願いしました。残念ながら私の扉を開けて欲しいという願いは叶いませんでした。

そのころ、「化学物質過敏症になりました その5」で紹介した、快適なスーパーに出会い、買物はこのスーパーと生協だけにしようかなと、思い始めていました。生協には、自分が化学物質過敏症であることを話して、担当者さんに、商品にニオイがつかないよう協力してもらっており助かっています。

ある日、近所のパン屋さんいった時、見慣れない消毒液がおいてありました。プロイオンのアルコール洗浄ハンドミストという商品でした。手にかけてみるとニオイも気にならなくて、これはいい!これを是非、A食料品店で使ってもらおう!と思いました。ちなみに快適なスーパーではブドウの抽出物を入れた消毒液を使っていると、店長さんに聞いていたのですが、ほのかなぶどうの香りが気になっていて、これを勧める気にはならなかったのです。

プロイオンのアルコール洗浄ハンドミストはネットで調べたら国内1500以上の病院、歯科医院、小中高校でも愛用されているとのことだったのでこれしかない!という気持ちでした。ただ、「心落ち着くアロエの香り」という事が商品案内に書かれていたのが、ちょっと引っ掛かりました。ちなみにこの商品の成分はエタノール(70%)、水、グリセリン、アロエベラ葉エキス、ヒアルロン酸ナトリウムでした。

私は、A食料品店では、きっと、アルコール以外に香料とか、塩化ベンザルコニウムみたいな抗菌剤が入った消毒液を使っているんだと思ってました。というのは、私は、70%程度のアルコール自体を吹きかけても特に不快でなかったからです。

ある日、お店に行って、よく話をする女性の店員さんに「消毒液を替えて欲しいって、店長さんにお願いしたいんだけど大丈夫でしょうか?」と聞いてみました。店員さんは、「話してみれば」と快い反応だったので、早速店長さんのところに行って、お願いしました。「私、この店で使っている消毒液が苦手なんです。これに替えてもらえませんか?」とプロイオン アルコール洗浄ハンドミストのチラシを見せました。「私、このお店が好きなので、ちゃんとした消毒液を使ってほしいんです。消毒液の臭いが野菜とか、包装のビニールについて困っています。今から、ちょうどホームセンターに行くので、野菜売り場だけでいいから試しに使っていただけないでしょうか?」店長さんは当惑した表情でしたが、私はその日すぐに消毒液を買ってきて店長さんに「差し上げますから使ってみてください。」と、渡しました。

我ながらなんという図々しい&強引なことをしてしまった...と思いました。さすがにその晩はよく眠れませんでした。翌日、お店に行ってみると野菜売り場で早速使ってくれていました。女性の店員さんから、「店長さんから、これから野菜売り場ではこれを使うようにと言われました。でも、これ、アルコールがきつくて酔っぱらいそう。」と、店員さんが話していたのが気になりました。また、私も、今までとは野菜売り場の香りが変わり、微妙にアロエの香りがするのが気になりました。それから1週間、消毒液のことが気になり、ほぼ毎日お店に何か買物に行って香りをチェックしていました。店長さんは別にアロエの香りも気にならないし、特に問題ないとおっしゃってくれていました。私は、今までの消毒液を使ってた時よりは、ストレスが少ないのですが、どうも違和感がありました。

ちょうどその頃、ある発見がありました。近所で良く行く郵便局のATMコーナーは普段あまり匂いが不快でなかったのですが、2月ころとても匂いが気になった事があり、消毒液は何を使っているのか教えてもらいました。エタノス除菌スプレーという商品でした。成分はエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、(アルコール濃度は58%)精製水のみで、意外なことに無香料でした。イソプロパノールは私の職場で良く消毒に使っていたし、エタノールも問題ないのに(ノルマルプロピルアルコールは良く分かりませんが)あの匂いはなんだ?!とその時、初めて恐らくお客さんの柔軟剤などの洗濯臭とアルコールの相乗効果であの恐ろしい香りが誕生するのではないかという事に気が付きました。

ほぼ、1週間たったころ、A食料品店で大根を買いました。家に帰って匂いをかいでみると、ほのかにアロエの香りがします。ほのかなアロエの香りだからまあいいやと思って、廊下の段ボール箱に大根を入れました。その15分後くらいでしょうか。廊下に不快なアロエの香りが漂い始めました。これはまずいと思い、あわててベランダに大根を持って行きました。大根のアロエ臭は30分くらいで取れましたが、段ボール箱は半日くらいベランダで干してようやく臭いが取れました(ちなみに前の消毒液を使っていたときは、一晩中ベランダで風に当てないと、大根からいやなニオイが取れなかった事もあるのですが。でも、あの当時はもう少し気温が低かったからニオイ成分が揮発しずらくて取れるのに時間がかかったのかもしれません)。

やっぱり、この消毒液はだめだ!と確信して、快適なスーパーに行って、消毒液の商品名を教えてもらいました。

ユービコール ノロVという消毒液でした。エタノール濃度が50.1%しかありませんが、新型コロナウイルスの消毒にも使えるという商品でした。この商品は除菌、除ウイルスを目的としたエタノール製剤です。

 ユービコール ノロVの最大の特徴は、ブドウ種子の抽出物に含まれるポリフェノールがノロウイルスのカプシドたんぱく質(ウイルスゲノムを取り囲むたんぱく質)の構造に影響を与えることによって、ノロウイルスも殺すことができるという事です。

 新型コロナウイルスのように、脂質2重膜のエンベロープを持つウイルスは、アルコールで脂質2重膜を破壊することによって殺すことができますが、ノロウイルスのようにエンベロープを持たない場合は、アルコールで殺すことが、困難になります。そこで、工夫されたのがこの商品です。

ブドウ種子の抽出物がエンベロープを持つ新型コロナウイルスにどのような影響を与えるのかは、いろいろネットで検索してみましたが、分かりませんでした。ただ、こちらのサイトに新型コロナにも有効と詳しく載ってましたしhttps://www.orimine.co.jp/assets/img/content/135/69cad3f6917f5c03fe44d14b299ffcbb.pdf  快適なスーパーは私の住む地域ではたくさんチェーン店のある有名なスーパーだったので、ここで使っている消毒液なら大丈夫だろうと、早速ネットで600mlのボトルを購入しました。

前回の消毒薬と同様の失敗がないように、無香に近い我が家の台所で、シュッと2回位噴霧して匂いにストレスがないか確認しました。若干ブドウの香りがしますが、かなり快適です。これなら大丈夫と自分に言い聞かせました。

2週間くらいイマイチの消毒液をお店に置いてもらって、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。でも、本当に困っているので何とかしたい、という私の思いを理解して欲しかったので、「香害のパンフレット」と「コロナ禍での香害の体験談のまとめ」をユービコール ノロVと一緒に店員さんに渡しました(閉店時間後に行ったので店長さんは不在でした)。

香害パンフレット・・・「STOP!香害ー香りに苦しんでいる人がいます」NPO法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議  このパンフレットは今年の2月に刊行されたもので、1部100円です。香害のことが簡潔かつ分かりやすく載っているので、人に香害のお願いをするときに良く使っています。

コロナ禍での香害の体験談はchange.orgのキャンペーン「 香害の解決を政府に求めます!洗剤のにおいだらけの世の中を変えたい!(代表 園山まり子さん)の経済産業大臣・厚生労働大臣・環境大臣あての要望書の中に「コロナ禍での香害」の体験談のまとめが載っていたのでこちらをプリントアウトしました。https://documentcloud.adobe.com/link/track?uri=urn%3Aaaid%3Ascds%3AUS%3A1cc35250-b004-468c-85a9-0b7cc0b537eb#pageNum=1

翌日お店に行ったら、 ユービコール ノロVを早速使ってくれていました。店長さんは笑顔でしたが、「この消毒液、うちでもともと使ってた消毒液と入っているものが一緒だよ」と言われました。この時、初めて、このお店で使っていた消毒液の成分を見せてもらいました。エタノール濃度が75%で、抗菌剤や香料は含まれていませんでした。あとの成分は、良く覚えていないのですが、ブドウの種子エキスが入っていない事以外は、きっとほぼ一緒だったのでしょう。ちなみに ユービコール ノロVの成分は、エタノール50.1%、グリセリン脂肪酸0.2%、ブドウ種子エキス0.03%、デキストリン0.01%、乳酸ナトリウム0.003%、乳酸0.001%、精製水49.65%  弱酸性 です。

以前私が言った「私、このお店が好きなので、ちゃんとした消毒液を使ってほしいんです。」という発言は非常に失礼でした。店長さんごめんなさい!

結局、店長さんは早速ユービコール ノロVを注文してくれて、お店で使ってくださることになりました。以前使っていた消毒液より、20Lで1000円くらいユービコール ノロVの方が高かったので、差額を私が払いましょうか?と聞きましたが、別に良いと言われ、ホッとしました。

ユービコール ノロVに変えてから、野菜売り場の空気はブドウのほのかな香りが気になることもありますが、嫌な香りがほとんどなくなり快適にお店に行けるようになりました。野菜や包装袋にいやな匂いが付くことは、ほぼ、なくなりましたし、消毒液の置いてあるレジ脇のビニール袋は若干ブドウの香りがすることもありますが、許容範囲です(でも、やっぱりブドウの匂いが気になってビニール袋を家に帰ってからベランダで干すこともあります)。

結局、アルコール濃度が低いということが良かったんだと思います。とても不思議ですが、空気中のアルコール濃度が低い方が、柔軟剤などに含まれるマイクロカプセルが物に付着しにくいという事でしょうか?または、アルコール自体がビニールに付着して、合成香料の香りを増幅するとか?

また、アルコール濃度が低い方が、空気中に揮発するアルコール量が減るので、当然ストレスは少なくなります。

お店でユービコール ノロVを使ってもらうようになったのが4月半ば。今はもう7月になりました。お店の野菜売り場はエアコンが稼働して、扇風機も回っていて、ビニールののれんも風で揺れて換気も良くとても快適です。

消毒液の交換以外にも、少し工夫をしてもらいました。買い物かごを以前は野菜売り場の中で消毒していたのを、外で消毒してから中に入れてもらうようにしてもらいました。お店の皆様に、いろいろお世話になり本当に感謝しています。

換気が夏場に比べて悪くなる冬場も快適に買い物できるといいなあ。と、思っています。

早く、新型コロナウイルス対策の消毒液が世の中からなくなってほしいなあ。あと、香り付き柔軟剤とマイクロカプセルもなくなってほしい・・・。


アルコール(エタノール)の濃度による抗ウイルス効果についてこらのサイト https://www.chinoshiosya.com/news/feature/alcohol-disinfection_effect-by-concentration/ に詳しく説明が載っています。WHOが規定している通り、抗ウイルス効果に対するエタノール濃度は60~80v/v%の範囲があれば十分とされます。一方、濃度50%以上のエタノールに、接触時間1分間で十分な新型コロナウイルス不活性化が可能であるとの報告が2020年4月17日に北里大学 大村智記念研究所 ウイルス感染制御学研究室Ⅰよりなされています。

週刊現代の2021年6月12・19日号で、「なつい キズとやけどのクリニック」院長で、著書に「傷はぜったい消毒するな」がある夏井睦氏のコメントが載っていました。「強い消毒液は人の皮膚細胞のたんぱく質を破壊し、病原菌を撃退する皮膚常在菌も殺してしまうのです」。強力な消毒液を使いすぎるのは危険だとも書いてありました。





 

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