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ゆるっと、ほっこり読み物

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温かい気持ちになりたい時、優しさに包まれたい時におすすめです。
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2022年4月の記事一覧

入浴剤の魔力

嫌なことがあると 私はお風呂に入浴剤を入れる 買い置きの何種類かの入浴剤を その日の気分によって一つ選ぶ 透明なお湯に黄緑色が広がってゆく 今日は柚子の香り 入浴剤の色と香りに包まれながら ゆっくり深呼吸を何度かする 気が付かないうちにガチガチになっていた 体中の力がゆっくりと溶けてゆく 枯れかけた心の花が 次々と色鮮やかに開き始める 「今日もお疲れさま。頑張ったね」と 自分に言ってあげる 涙をながしてしまう時もあるけど 張り詰めた気持ちが一気に和らぐ 柔らかくて心地い

石鹸の香りがすると思い出す

私が十九歳の時、コンビニでバイトをしていると同じバイトの二つ年上の男の人が時々私に声をかけてくれた。 私は人見知りが激しかったので、仲のいい同じ年の女の子と一つ年下の生意気な男の子としか喋らず、話しかけてくれる彼には「はい」とか「そうですね」くらいしか話すことはなかった。 彼は私がバイトを終える15分前になると店にやって来た。 お客さんがいない時、彼はいつも楽しそうにバイト仲間たちと話している。 ある日、私が帰る準備をしていると彼が私の近くに来て冗談を言った。 私は思わず吹き